天皇賞秋で牡馬相手に『最強牝馬』として熾烈な戦いを演じたウオッカとダイワスカーレット。

 

ウオッカはジャパンカップに出走し、3着。2009年へ向けて休養に入った。

 

一方のダイワスカーレット、2008年最後のレースとして選んだのが有馬記念だった。

 

 

この年3戦目、『馬優先』を第一に体調を重視する藤沢師。

 

万全の状態でダイワスカーレット送り込んできた。

 

 

前年はマツリダゴッホの大駆けにあった2着。

 

少女時代から大人になった古馬ダイワスカーレット。

 

有馬記念でグランプリ馬となるか!

 

 

 

 

天皇賞秋1着・ジャパンカップ3着のウオッカ、天皇賞秋3着・ジャパンカップ2着のディープスカイ、ジャパンカップ5着の菊花賞馬オウケンブルースリ。

 

ダイワスカーレットの強敵は回避したが、新たなヒーロー、ジャパンカップを制したスクリーンヒーローが参戦を決めた。

 

 

父グラスワンダー、母父サンデーサイレンス、祖母は『女優』ダイナアクトレスという血の良さを、ようやく発揮できたジャパンカップ。

 

1998・1999年、有馬記念を連覇した父グラスワンダー。その仔として、やはり勝ちたい有馬記念。

 

夏8月から6戦目、1000万下条件からG1への急激なステップアップ。

 

スクリーンヒーローにある不安。それは目に見えない疲れだった。

 

 

 

 

前年の覇者マツリダゴッホ。

 

サンデーサイレンス・ラストクロップとして、父の偉業の一端を担った。

 

 

9番人気で勝ち取った有馬記念。天皇賞秋15着からの変身にフロック視された、が、中山マイスターのマツリダゴッホ。

 

アメリカジョッキークラブカップ、日経賞、オールカマー2勝、重賞4勝すべてが中山コース。その強さを見せるのは中山限定か?

 

東京コースのジャパンカップ、強豪相手に見せた0.2秒差4着。

 

その充実ぶりから、有馬記念の連覇が期待されたのも当然か?

 

 

 

 

有馬記念がラストランとなるメイショウサムソン。

 

天皇賞春2着、宝塚記念2着、凱旋門賞10着、ジャパンカップ6着。

 

2008年は無冠のまま、ラストランとなった。

 

 

悔しさの2着続き、春G1。屈辱の凱旋門賞10着。

 

帰国後初戦のジャパンカップも見せ場なく6着。

 

『現役王者』のままに引退したい・・・・・・メイショウサムソン、ラスト・ドリームだった。

 

 

 

 

菊花賞馬アサクサキングス。菊花賞2着馬アルナスライン。

 

 

オークス・秋華賞『2冠牝馬』カワカミプリンセス。

 

 

朝日杯フューチュリティS覇者、『2歳チャンプ』ドリームジャーニー。

 

 

最多タイ、5年連続挑戦となる地方・ホッカイドウ競馬所属コスモバルク。

 

 

7歳にして安田記念4着、宝塚記念7着、天皇賞秋5着。まだ満足できない良血エアシェイディ。母はエアデジャヴー、半妹は秋華賞馬エアメサイア。甥にあたるのが、エアスピネルだ。

 

 

28戦目の初G1・天皇賞春14着、9着、6着。天皇賞秋12着、ジャパンカップ12着。歯が立たなくても走り続けるアドマイヤモナーク、7歳。人気は最低人気。

 

 

すべての馬が思いを込めるドリームレース。

 

それが、有馬記念だ。

 

 

 

12月28日、有馬記念。

 

1.カワカミプリンセス

2.ベンチャーナイン

3.コスモバルク

4.エアジパング

5.フローテーション

6.エアシェイディ

7.アルナスライン

8.スクリーンヒーロー

9.メイショウサムソン

10.マツリダゴッホ

11.ドリームジャーニー

12.アサクサキングス

13.ダイワスカーレット

14.アドマイヤモナーク

 

 

1番人気ダイワスカーレット、2番人気マツリダゴッホ、3番人気スクリーンヒーロー。

 

4番人気メイショウサムソン、5番人気アルナスライン。

 

 

ゲートが開いた瞬間、外枠ピンク帽ダイワスカーレットが飛び出した。

 

いつもながらの抜群のスタート。

 

 

安定感抜群のダイワスカーレット。

 

スムーズに先頭に立った。

 

 

内から2番手に上がったのはカワカミプリンセス。

 

メイショウサムソン、アサクサキングスが並んで上がって行った。

 

 

何としてでも・・・・・・復活をかけるG1馬たちが、意気込みを見せるか?

 

果敢な先行策でダイワスカーレットを追った。

 

 

その後ろにエアジパング、コスモバルク、フローテーション。

 

スクリーンヒーロー、エアシェイディが中団につけた。

 

 

後方にマツリダゴッホ、アルナスライン、ドリームジャーニー。

 

そこから4馬身離れたポツンと最後方が、アドマイヤモナークだ。

 

 

 

1000m通過59秒6。速めの平均ペース。

 

 

2番手に3馬身差、快調に飛ばすダイワスカーレット。

 

鞍上・安藤勝己が、グッと手綱を押えた。

 

 

付いてくる馬は、なし崩しに脚を使わせてやるッ。

 

 

 

3コーナー、外から動いたのはフローテーション・ルメールだ!

 

前に、前に、脚を伸ばし、後続も動いた。

 

一団になった馬群。

 

 

スクリーンヒーロー・デムーロが、捲った!

 

後方からマツリダゴッホ・蛯名正義も先団をとらえた、4コーナー。

 

 

直線入り口、ダイワスカーレットめがけて、

 

ズラリ横に並んだ馬群。

 

 

メイショウサムソン、アサクサキングス、フローテーション、スクリーンヒーロー、マツリダゴッホ。

 

 

 

直線、再び引き離すダイワスカーレット。

 

これが、ダイワスカーレットの真骨頂だ!

 

 

追いかけるメイショウサムソン。

 

落馬骨折から戻った鞍上・武豊。

 

 

ダイワスカーレットの術中にハマったか?

 

脚が重くなった。

 

アサクサキングスもズルズルと下がり始めた。

 

 

追っかけたのは、スクリーンヒーローだ!

 

2番手に上がった。

 

 

 

直線半ば。

 

差が縮まらない!

 

むしろ、差を開いたダイワスカーレット!

 

 

大外から一気に差を詰めたのは、

 

最後方から飛んできたアドマイヤモナークだ!

 

14番人気、川田将雅が懸命のムチを入れた。

 

 

馬群を割って、伸びた!

 

エアシェイディ・後藤浩輝、ドリームジャーニー・池添謙一!

 

 

己に徹した馬たちが、伸びたゴール前。

 

 

だが、

 

 

男たちの夢を断ち切るように、

 

 

ダイワスカーレットは容赦ない伸び脚で後続を振り切った。

 

 

逃げて伸びる完全勝利。

 

 

それが、ダイワスカーレットだ!

 

 

1着ダイワスカーレット

1馬身4分の3

2着アドマイヤモナーク

4分の3馬身

3着エアシェイディ

ハナ

4着ドリームジャーニー

クビ

5着スクリーンヒーロー

 

 

ダイワスカーレットは2009年2月、浅屈腱炎を発症、引退となった。

 

12戦8勝、2着4回。12戦連続連対、JRA所属牝馬として最多記録を残し、母となった。(最多記録は19戦のシンザン)

 

2009年は、ウオッカ1頭が孤高の牡馬との戦いを続けることとなる。

 

 

(つづく)