脚部不安にさいなまれ、出世の遅かったデュランダル。
 
その名は中世、フランスの叙事詩『ローランの歌』の主人公ローランが持つ『聖剣』デュランダル。
 
父サンデーサイレンス、母サワヤカプリンセス。期待された血が開花したのは、前年10月、4歳秋だった。
 
 
スプリンターズS、15頭立て4コーナー14番手、直線だけで13頭をゴボウ抜き。好位から抜け出したスプリントG1連覇中のビリーヴを差し切り勝利。
 
マイルチャンピオンシップでは、18頭立て15番手から末脚一閃、武豊に『怪物や』と言わしめたファインモーションまでもナデ斬った。
 
魅せた『聖剣』の切れ味。
 
 
スピード自慢の多い短距離戦。とても届かない・・・・・・そこから飛んで来る。
 
前の馬が止まって見えた。
 
デュランダルの切れ味に、酔いしれた大観衆。
 
 
そんなデュランダルの弱点は、脚もとにあった。冬場、裂蹄を発症。
 
なかなか治り切らず、ステップレースなしでぶっつけ高松宮記念出走となった。
 
魅せられるか?『聖剣』デュランダル。
 
 
 
 
サラブレッドの中で希少なマッチェム系ウォーニングを父に持つサニングデール、異端の血。
 
スプリントに特化した血でもあったのか?20戦6勝、勝ったのはすべて1200m戦。
 
3歳時、ファルコンS、函館スプリントSを勝ち、スプリンターズSに挑戦、ビリーヴの8着。CBC賞勝利。
 
4歳時、高松宮記念をビリーヴの2着。
 
G1制覇へ近づいたサニングデールではあったが、7,6,12,11着。突然の不調。
 
 
5歳となって、甦った。
 
ガーネットS(ダートG3)7着のあと、シルクロードS・3着、阪急杯で勝利。
 
 
2000年に父ウォーニングが亡くなり、より希少となった血。後世につなぐため、種牡馬となるためにも何としてでも欲しい『冠』。
 
異端の血は全力でつなぐ。
 
 
 
 
牝馬クラシックはスティルインラブ、アドマイヤグルーヴの陰に隠れたが、桜花賞2着と気を吐いたシーイズトウショウ。
 
父サクラバクシンオーからもスプリントでこその馬だった。
 
 
オークスを12着と敗れて短距離路線にシフト。暮れにCBC賞を勝ち、重賞初制覇。
 
古馬となって、京都牝馬S4着、阪急杯をサニングデールの2着。
 
 
伯母に桜花賞馬シスタートウショウ。母系は長く続く『トウショウ』の良血。
 
スプリントに生かすか?『トウショウ』の血。
 
 
 
 
逃げまくるスピード馬ギャラントアロー。
 
セール価格378万円だった馬。
 
父は朝日杯でマルゼンスキーのレコードを更新したリンドシェーバー。
 
安く見られた血。父からもらったスピードでアッと言わせたい。
 
 
3歳、逃げてつかんだファルコンS、スワンS勝利。
 
マイルチャンピオンシップではデュランダルの3着に逃げ粘った。
 
古馬となって、淀短距離Sを逃げ切り勝ちも、阪急杯は1番人気を背負ってサニングデールの8着、逃げて潰れた。
 
大目標、高松宮記念。小細工はしない。ひたすらに、逃げあるのみ。
 
 
 
 
ラストランを迎える6歳牝馬テンシノキセキ。
 
1200mを中心に短距離を走り続けて24戦9勝。
 
新馬戦から3連勝目を上げたフェアリーS・・・・・・。
 
5歳、ビリーヴを破ったセントウルS・・・・・・。
 
思い出背負ったラストランなんかじゃない。
 
 
6歳となって、2月、阪急杯。サニングデールの3着。
 
隙あらば・・・・・・『てっぺん』狙う。テンシノキセキ、ラストランの意気込み。
 
 
 
 
3月28日、高松宮記念。
 
1.ホーマンアピール
2.ギャラントアロー
3.サニングデール
4.シルキーラグーン
5.アタゴタイショウ
6.サクラタイリン
7.シーイズトウショウ
8.デュランダル
9.ワンダフルデイズ
10.カフェボストニアン
11.モンパルナス
12.ウインクリューガー
13.フルブラスト
14.フィールドスパート
15.テンシノキセキ
16.リキアイタイカン
17.サーガノヴェル
18.キーンランドスワン
 
 
1番人気デュランダル、2番人気サニングデール、3番人気シーイズトウショウ。
 
4番人気ギャラントアロー、5番人気テンシノキセキ。
 
 
スタート、4,5頭が飛び出した。凄まじい先行争い。
 
先頭に立ったのは、やはりギャラントアローだ!
 
 
アタゴタイショウ、カフェボストニアン、モンパルナス、外からテンシノキセキ。
 
ギャラントアローを追いかける2番手グループが固まった。
 
 
ホーマンアピール、シーイズトウショウ、好位勢。
 
中団にひしめくサクラタイリン、シルキーラグーン。
 
中団後方から行くのが、サニングデール、キーンランドスワン。
 
 
後方2頭目、ファンの視線が集中する、デュランダルだ。
 
鞍上・池添謙一。馬体重は+6㌔、多少重い。だが、おまえの力を信じてる!
 
直線、ごぼう抜き、しか考えていなかった。
 
 
 
前半3ハロン、32秒9。ハイペース。
 
飛ばすギャラントアロー・幸英明。
 
直線に入っても、衰えない。
 
 
簡単には抜かせない!抜かれてたまるかッ。
 
 
逃げるギャラントアローを追って、ズラーッと横に広がった馬群。
 
 
内から伸びてきたのは、シーイズトウショウだ!
 
アタゴタイショウも懸命に粘る。
 
 
外から伸びるのはサニングデール・福永祐一!
 
キーンランドスワン・四位洋文!
 
 
だが、多くのファンの目は、大外にあった。
 
デュランダルだ。
 
 
大外に持ち出した、ほぼ最後方のデュランダル。
 
そこから伸びるのかッ!不安と期待の目。
 
 
鞍上・池添のムチがうなったぁーッ。
 
弾かれたように伸びるデュランダル。
 
 
来た来た来た来た、来たァァアアアーッ!
 
『聖剣』デュランダルの切れ味だ!
 
 
直線半ば、時間がが止まった。
 
 
一気に駆け上がるデュランダル。
 
 
その時、もう1頭、動いた。
 
 
 
デュランダルは必ず来る・・・・・・。
 
その時を待った、福永祐一。
 
 
サニングデールだ!
 
 
 
サニングデール、デュランダル、火花が散った叩き合い。
 
前にいた馬たちを蹴散らして、ゴールまで続いた。
 
 
待っていたサニングデール、半歩早く出た勝負。
 
ゴールまで守り抜いた。
 
 
異端の血サニングデール、一生一度の大勝負。
 
『聖剣』を砕いた。
 
 
1着サニングデール
クビ
2着デュランダル
1馬身4分の1
3着キーンランドスワン
ハナ
4着ギャラントアロー
ハナ
5着シーイズトウショウ
 
 
(つづく)