ジャパンカップは大器晩成、タップダンスシチーの9馬身差、歴史的な逃げ切り勝ちに終わった。

 

ザッツザプレンティも、シンボリクリスエスも、ネオユニヴァースも、なす術なしだった。

 

 

父はアメリカで引退時の5歳にG1・2勝というプレザントタップ、母もアメリカで走り24戦1勝というオールダンス。

 

アメリカで生まれ日本にやってきた、無名の外国産馬タップダンスシチー。

 

競走馬にとって晩年といわれる6歳11月で初のG1勝ち。それは、タップダンスシチー伝説の始まりだった。

 

 

ジャパンカップを制したタップダンスシチーは有馬記念へと向かった。

 

 

 

 

『古馬最強』をめざしたシンボリクリスエス。

 

天皇賞秋は制したが、ジャパンカップでは1番人気も再びの3着。

 

引退、ラストランとなった有馬記念。

 

 

誰もが認める最強馬。それでも勝てないのが競馬、か。

 

いや、最強馬は勝たなくてはいけない。

 

 

ラストラン、無事に走りきればよい。新しい馬生、種牡馬としての指名が待っている。

 

だが、

 

シンボリクリスエスの胸には、最強馬としての誇り高い思いしかなかった。

 

 

 

 

若さあふれる3歳馬の心意気。

 

ラストランを迎えるシンボリクリスエスへの、いましかない挑戦。

 

開花したベテラン、タップダンスシチーへの挑戦。

 

 

 

菊花賞馬ザッツザプレンティ。

 

ジャパンカップはタップダンスシチーに大きく離されたが、2着は死守した。

 

『2冠馬』ネオユニヴァースが有馬記念を回避し、残された『冠』馬として挑むしかない。

 

 

 

ダービー2着、菊花賞4着、ゼンノロブロイ。

 

藤沢和雄厩舎。厩舎の先輩はラストランを迎えるシンボリクリスエス。

 

後継者となるべき逸材。

 

認められる走りを・・・・・・、意識は誰よりも強かった。

 

 

 

菊花賞2着、リンカーン。

 

『サンデーの大物』といわれながら、ようやく残せた実績が菊花賞。

 

それでも2着。

 

 

悔しさを晴らすために、相手に不足はない。

 

野望の塊り、それがリンカーン。

 

クラシック前以来、再び武豊が鞍上に戻り、狙うはG1制覇のみ。

 

 

 

 

宝塚記念、2年連続2着。天皇賞秋2着。

 

5歳、ツルマルボーイにも『栄冠』の夢は駆け巡り続けた。

 

 

届かなくても、届かなくても、末脚に賭ける後方一直線。

 

『不器用』一筋。

 

 

父はダンスインザダーク。その凄さは、我が脚にある、はず。

 

 

 

 

国内芝G1・3勝、ダートG1・1勝、地方G1・1勝、海外G1・1勝。

 

鞍上・四位洋文から『ワンダーホース』といわれたアグネスデジタル。

 

国内・海外、芝・ダート、どんな設定でも強さを見せ、反面、惨敗ぶりも数々見せた。

 

つかみどころのない名馬。まさに、ワンダー。

 

6歳暮れ、ここがラストラン、か?

 

 

 

12月28日、有馬記念。

 

1.ツルマルボーイ

2.ゼンノロブロイ

3.リンカーン

4.ダービーレグノ

5.ウインブレイズ

6.タップダンスシチー

7.チャクラ

8.ザッツザプレンティ

9.ファストタテヤマ

10.アクティブバイオ

11.アグネスデジタル

12.シンボリクリスエス

 

 

1番人気シンボリクリスエス、2番人気タップダンスシチー、3番人気ゼンノロブロイ。

 

4番人気リンカーン、5番人気ザッツザプレンティ。

 

 

スタートすぐに先頭に立ったのはタップダンスシチーだった。

 

ジャパンカップ同様、ハナ切って行くか?

 

思われた1周、正面スタンド前。

 

タップダンスシチーを追い抜いて行った、ザッツザプレンティ、アクティブバイオ。

 

3番手に下げたタップダンスシチー。

 

その後ろにつけたリンカーン、ゼンノロブロイ。

 

6番手、中団につけたのがシンボリクリスエスだ。

 

 

200m11秒台が続くハイラップ。

 

 

 

2コーナーを回り、向こう正面では、もうバラバラの隊列となった。

 

 

先頭を行くザッツザプレンティ。1馬身後にアクティブバイオ。

 

6馬身離れたタップダンスシチー。

 

 

さらに、7馬身あとにリンカーン、ゼンノロブロイ。

 

続くウインブレイズ、シンボリクリスエス。

 

 

5馬身離れて後続、アグネスデジタル。

 

ダービーレグノ、チャクラ。

 

その後ろにファストタテヤマ。

 

 

さらに4馬身離れて、最後方ツルマルボーイだ。

 

 

 

速い流れが、さらに速くなった。

 

 

3コーナー手前、動いたのはリンカーン・武豊だ!

 

前との差をグングン詰めた。

 

 

呼応したのは、1番人気シンボリクリスエスだ。

 

ジャパンカップでは前をとらえられなかったオリビエ・ペリエ。

 

ラストラン、悔いは残さない!

 

外から行った。

 

 

リンカーン、続くシンボリクリスエスの捲り。

 

先行馬は砕け散った。

 

 

 

4コーナー、先頭に立って回ったのは、リンカーンだ!

 

すぐ後ろに迫るシンボリクリスエス。

 

 

タップダンスシチーがかろうじて3番手を守り、直線に入った。

 

 

先頭に立つリンカーン!

 

並びかけるシンボリクリスエス!

 

 

内を割って伸びてきたのはゼンノロブロイだ!

 

ウインブレイズもやってくる!

 

最後方から、横山典弘がムチを振るう、ツルマルボーイが伸びる!

 

 

 

先頭争いは、一瞬だった。

 

 

リンカーンを抜き去り、

 

伸びるシンボリクリスエス。

 

 

見せるゾッ、古馬最強馬。

 

ラストラン。シンボリクリスエスが、真一文字に伸びた。

 

 

リンカーンの脚が、衰えたわけではないッ。

 

 

上回る脚。凄さが爆発した。

 

 

2馬身、3馬身、4馬身・・・・・・。

 

 

ゼンノロブロイも、一気に伸びるツルマルボーイも、2着争いでしかなかった。

 

 

伝説再び。

 

 

ゴールへ、突き抜けたシンボリクリスエス。

 

 

 

リンカーンに、9馬身の差をつけていた。

 

 

1着シンボリクリスエス

9馬身

2着リンカーン

4分の3馬身

3着ゼンノロブロイ

半馬身

4着ツルマルボーイ

クビ

5着ウインブレイズ

 

 

(つづく)