ジャパンカップと並ぶダートの国際競走として設立されたジャパンカップダート。

 

現実は世界のダート強豪馬の参戦は少なく、次第に国際競走の意味合いは薄くなった。もっぱら、2月のフェブラリーSと並ぶ中央のダートG1競走として、日本の『ダート王決定戦』といえた。

 

 

この年のフェブラリーSの覇者アグネスデジタルはドバイワールドカップ6着、クイーンエリザベスカップ2着、海外遠征連戦の疲れで長い休養に入り不参加。

 

注目されたのは3歳、若いダートの新星2頭だった。

 

 

アドマイヤドン。父ティンバーカントリー、母ベガ。桜花賞・オークス『2冠馬』を母に持ち、半兄はダービー馬アドマイヤベガという良血。

 

2歳時に朝日杯フューチュリティSを制覇したが、皐月賞7着、ダービー6着、菊花賞4着。決して悪い成績ではなかったが、母が、兄が、良績すぎた。

 

地方・盛岡で行われたダート統一G1競走、JBCクラシック・ダート2000mに菊花賞から中1週で出走。2着馬プリエミネンスに7馬身の差をつけて圧勝した。

 

思わぬ特性を見い出した良血馬アドマイヤドン。

 

『ダート王』の道に良血の在り処を求めた。

 

 

 

 

芝6戦1勝、2着1回、3着1回。ダート2戦2勝して賞金的にダービー出走を決めたゴールドアリュール。

 

サンデーサイレンス産駒。クラシック挑戦を諦めるわけはない。

 

3番手から抜け出し、懸命にがんばったが、5着。

 

 

ダービー後、再びダートへ。

 

地方・大井のG1・ジャパンダートダービーは7馬身差1着。

 

地方・盛岡G1、ダービーグランプリは10馬身差圧勝。

 

 

同じダービーを戦ったアドマイヤドンとの『ダート王』争い。

 

芝からダートへ。戦う場を変えて・・・・・・輝くために。

 

 

 

 

体質が弱く、競走馬としてなかなか完成せずJRAの登録を抹消されたトーホウエンペラー。

 

地方・岩手でデビューしたのは1999年、4歳(現表記3歳)大晦日だった。

 

デビュー9連勝。競走馬として危ぶまれた馬が『地方の星』として輝き始めた。

 

東京大賞典(大井・G1』を獲り、フェブラリーS5着、マイルチャンピオンシップ南部杯(盛岡・G1)を制し、中央G1獲りに・・・・・・。

 

32戦20勝、2着5回、3着2回。6歳古豪、『地方の星』トーホウエンペラー。

 

再び中央G1へ挑戦。

 

 

 

 

NHKマイルカップを制して20戦、2年以上勝ち星なしのイーグルカフェ。

 

21戦ぶりにつかんだ七夕賞(G3)勝利。苦しさの中でつかんだ何か。

 

札幌記念8着のあと、凱旋門賞出走のマンハッタンカフェに帯同してフランスに渡った。ドラール賞3着。

 

 

帰国後、選ばれたレースがジャパンカップダートだった。

 

30戦中、ダート7戦0勝、2着2回、3着1回。得意とも思えないダート。

 

アメリカ生まれの外国馬イーグルカフェ。その血は、本場アメリカのダートの血。

 

信じるは、わが胸に流れる。

 

 

 

 

ダート中央重賞3勝、築き上げた実績。6歳、熟練の脚で勝負するハギノハイグレイド。

 

地方重賞・中央重賞5勝、強豪牝馬プリエミネンス。

 

帝王賞(大井・G1)を制した逃げ馬カネツフルーヴ。

 

 

3歳2頭の思い通りにはさせない! 燃える古馬たち。

 

 

リーバズゴールド、アブリーズ、レッドサン、パプウス、4頭の外国馬が参戦してきた。

 

 

 

11月23日、ジャパンカップダート。

 

1.プリエミネンス

2.アドマイヤドン

3.リージェントブラフ

4.トーホウエンペラー

5.カネツフルーヴ

6.レッドサン

7.リーバズゴールド

8.ゴールドアリュール

9.イーグルカフェ

10.ダブルハピネス

11.アブリーズ

12.アルアラン

13.パプウス

14.ハギノハイグレイド

15.スマートボーイ

16.ビーマイナカヤマ

 

 

1番人気アドマイヤドン、2番人気ゴールドアリュール、3番人気トーホウエンペラー。

 

4番人気ハギノハイグレイド、5番人気イーグルカフェ。

 

 

逃げたのは、アルアランだった。

 

競りかけるように上がっていく外国馬アブリーズ。

 

カネツフルーヴは逃げられず3番手。

 

 

4番手、ゴールドアリュール。武豊が跨った。

 

その後ろ、ぴったりマークするのがアドマイヤドン・藤田伸二だ。

 

 

中団につけたハギノハイグレイド、プリエミネンス。

 

 

内々をついて上がっていくイーグルカフェ。後方一気のイーグルカフェが上がる。

 

鞍上は、ジャパンカップのファルブラヴ騎乗のために来日していた世界の名手・デットーリ。

 

 

後方に控えたトーホウエンペラー、リージェントブラフ、ダブルハピネス。

 

最後方がスマートボーイだ。

 

 

 

速い流れを、さらに速くした。

 

ゴールドアリュールが向こう正面から動いた。

 

 

3コーナーでは、早くも下がり始めたアルアランを尻目に先頭に立つ外国馬アブリーズを、

 

煽るように並ぶゴールドアリュール。

 

 

その後ろを、離れまいと追走するアドマイヤドン。

 

 

 

4コーナーを先頭で回るゴールドアリュール。

 

外から襲いかかるアドマイヤドン。

 

 

直線、完全な2頭の一騎打ちか?

 

 

 

その時だった。

 

 

内を猛然と突いてきた。

 

 

鞍上・デットーリ、

 

イーグルカフェだッ!

 

 

 

まるで別馬を見るような・・・・・・いや、2年前のイーグルカフェが甦った、かのような。

 

NHKマイルカップ、あの切れ味が、ダートで・・・・・・。

 

 

一気にゴールドアリュールを、アドマイヤドンを差し切った。

 

 

信じられない切れ味。後方から追い込んだ13番人気リージェントブラフも、見せた。

 

先に伸びが止まったゴールドアリュールを交わし、ゴール寸前、

 

アドマイヤドンをもとらえた。

 

 

その目前に、

 

ゴールを駆け抜けるイーグルカフェがいた。

 

 

芝で獲った栄冠から2年半ぶりに、ダートで獲った最高の栄冠。

 

忘れえぬゴールだった。

 

 

1着イーグルカフェ

 

2着リージェントブラフ

 

3着アドマイヤドン

 

4着プリエミネンス

 

5着ゴールドアリュール

 

 

(つづく)