2001年、初ダート・武蔵野S(1600m)でいきなり1分33秒3、JRAレコード(1秒2更新)でイーグルカフェを9馬身ちぎったクロフネ。
さらにジャパンカップダートでフェブラリーS、ジャパンカップダートを勝っているウイングアローに7馬身の差をつけ、2分5秒9、またもJRAレコード(1秒3更新)を樹立した。
芝でNHKマイルカップを制した外国産馬、アメリカからやってきたクロフネ。まさに『クロフネ襲来』。
ダービーは5着に沈み、起死回生を狙った天皇賞秋は賞金順位で出走すらできず・・・・・・走ったのがダート・武蔵野Sだった。
ダートで怪物ぶりを見せたクロフネ。まだ、3歳。どれほどの大記録を打ち立てるのか?真の『クロフネ襲来』はダート界にあった。
だが、屈腱炎発症、引退。クロフネの野望は終わった。
2002年最初のG1、フェブラリーS。怪物の姿はなく、10頭のG1馬が集結する大混戦となった。
2001年、直前に出走を決め、クロフネの天皇賞秋挑戦を阻んだ・・・・・・といわれたアグネスデジタル。
テイエムオペラオー、メイショウドトウを打ち破り、天皇賞秋制覇。『クロフネを邪魔した』心ない声を黙らせた。
マイルチャンピオンシップに続き、芝G1・2勝目。
暮れは香港に飛んで香港カップ(芝2000m・G1)を勝ち、日本テレビ盃(地方・ダートG3)・マイルチャンピオンシップ南部杯(地方・ダートG1)・天皇走秋(中央・芝G1)・香港カップ(香港・芝G1)、4連勝を果たした。
芝でも走りダートでも走り、芝でも惨敗ダートでも惨敗、『強いのか、弱いのか?』といわれたアグネスデジタル。
4連勝、とりわけ芝・ダートのG1・3連勝はアグネスデジタルにとって充実期以外の何ものでもなかった。
『強いアグネスデジタル』で中央ダートG1、初勝利を狙う。
前年、フェブラリーSの覇者ノボトゥルー。
マイルチャンピオンシップ南部杯3着、JBCクラシック4着、ジャパンカップダート4着、東京大賞典9着。フェブラリーSの覇者として、ぬぐえない物足りなさ。
1月、根岸S(ダート1400m)、59㌔を背負ってサウスヴィグラスの2着。
マイルに望みをつないで、再び『覇』を狙う。
エリザベス女王杯を勝ち、念願のG1馬となったトゥザヴィクトリー。
有馬記念では見せ場たっぷりの3着。メイショウドトウ、テイエムオペラオーに競り勝った。
ダートは前年のフェブラリーS3着、ドバイワールドカップ2着。決して臆することのない実績。
6歳牝馬、残り少ない競走生活。トゥザヴィクトリーらしく、走るのみ。
中央ダートG1、フェブラリーSもジャパンカップダートも制したウイングアロー。
クロフネには完敗した2勝目を狙ったジャパンカップダート2着。
ラストランとなるフェブラリーS。すべての思いを込めて走る。
地方からの挑戦者トーシンブリザード。
地方・船橋でデビュー。無傷の8連勝でジャパンダートダービー(地方G1)を制覇。
8連勝の中には『南関東3冠』、羽田盃・東京王冠賞・東京ダービーの勝利もあり、久々に飛び出した地方の『怪物』として南関東の競馬ファンから絶大な期待が寄せられた。
ジャパンカップダート後、骨折が判明。
年末、東京大賞典で復帰。+20㌔の馬体重でトーホウエンペラーの3着となった。
古馬となり、復帰2走目でフェブラリーSに挑戦。
『怪物』復活あるのか?
東京大賞典(地方・G1)を制覇した地方馬トーホウエンペラー。
NHKマイルカップを制したイーグルカフェ。
JBCスプリント(地方・G1)勝ちのノボジャック。
川崎記念(地方・G1)制覇、リージェントブラフ。
2年前、フェブラリーS2着、マイルチャンピオンシップ南部杯(地方・G1)でウイングアローを4馬身突き放したゴールドティアラ。
G1、輝きを得た馬たちが、それぞれに新たな眩さを求めてゲートに向かう。
2月17日、フェブラリーS。
1.イシヤクマッハ
2.ノボトゥルー
3.トゥザヴィクトリー
4.ゲイリーイグリット
5.サウスヴィグラス
6.イーグルカフェ
7.ウイングアロー
8.トーホウエンペラー
9.アグネスデジタル
10.スノーエンデバー
11.ゴールドティアラ
12.トーシンブリザード
13.ワシントンカラー
14.リージェントブラフ
15.プリエミネンス
16.ノボジャック
1番人気アグネスデジタル、2番人気ノボトゥルー、3番人気トゥザヴィクトリー。
4番人気トーシンブリザード、5番人気ウイングアロー。
大外ノボジャックが強引に出て行った先行争い。
ダッシュよく2番手につけたアグネスデジタルは、徐々に下げた。
代わって2番手に上がって行ったのはトゥザヴィクトリーだ。
サウスヴィグラス、ノボトゥルー、トーホウエンペラーが次々と上がって行った。
6番手に納まったアグネスデジタル。
鞍上・四位洋文は好位に下げ、じっと前を見つめた。
強いか、弱いか、走ってみなければわからなかったアグネスデジタル。
ひとつ言えることは、信じることだ。
いつも思ってる・・・・・・おまえは、強い!
アグネスデジタルの後ろにつけたのはトーシンブリザード。
末脚で中央の『冠』を狙う。
ゴールドティアラ、スノーエンデバーが続き、
後方4頭目に並んだウイングアロー、リージェントブラフ。
その後ろに、イーグルカフェがつけた。
速いペースで逃げるノボジャック。
3,4馬身引き離されたトゥザヴィクトリー。
サウスヴィグラスが外から2番手に並びかけるが、落ち着いている。
ムキにもならず、鞍上・武豊の手はピクリとも動かない。
3,4コーナー。
サウスヴィグラスとともに、じんわりとノボジャックとの差を詰めたトゥザヴィクトリー。
外を回って、アグネスデジタル先団をめざす。
同時に、追いかけるように上りを見せるトーシンブリザード。
直線に入った。
懸命に鞍上・蛯名正義の手が動くノボジャック。
まったく武豊の手が動かないトゥザヴィクトリー。
持ったままで先頭に立った!
追い上げてくるのはアグネスデジタルだ!
トーシンブリザードだ!
内から伸びてきたのは、ノボトゥルー!
強烈に追い上げる牡馬の強者(つわもの)たち。
牝馬トゥザヴィクトリーはひたすら逃げた。
ゴールまで、あとちょっとだ!あと、少し。
炸裂した!
アグネスデジタルの末脚。
強い、強い、アグネスデジタルが、外から一気にトゥザヴィクトリーを抜き去った!
地方の『怪物』、トーシンブリザードがアグネスデジタルに続いた、迫った!
内から来るノボトゥルー。前年の覇者、意地の走りか!
芝であろうが、ダートであろうが、強いアグネスデジタルには関係ない。
1着で突き抜けるだけッ!
栄光のゴールを四位とともに駆け抜けた。
1着アグネスデジタル
2着トーシンブリザード
3着ノボトゥルー
4着トゥザヴィクトリー
5着トーホウエンペラー。
(つづく)
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