桜花賞、『桜の女王』をめざすテイエムオーシャン。

トライアル・チューリップ賞を勝ち、万全の態勢。


しかし、『勝利の女神』は気まぐれ。

どんな波乱が待っているか? 誰も知らない。



春爛漫、牝馬の祭典『桜花賞』。

集う牝馬たち、それぞれに『女王』の座を狙う心に嘘はない。



阪神3歳牝馬Sはテイエムオーシャンに負けた、2着ダイワルージュ。

3月、アネモネSを勝ち、4戦3勝2着1回。『打倒! テイエムオーシャン』、西下してきた関東の強姫。

父サンデーサイレンス、母はスカーレットブーケ。重賞4勝、桜花賞4着、オークス5着、エリザベス女王杯3着。

クラシック善戦止まりに終わってしまった母の無念を・・・・・・父サンデーサイレンスの血を受けて、晴らしてみせる。


スカーレットブーケの5番仔だったダイワルージュ。のちに7番仔ダイワメジャー(父サンデーサイレンス)、10番仔ダイワスカーレット(父アグネスタキオン)が世に出ることとなる。

21世紀、欠かすことのできない牝系のひとつ。




サンデーサイレンス牝馬、美浦の名門・藤沢和雄厩舎が送り込んできたのはハッピーパスだ。

半姉にマイルチャンピオンシップの覇者、重賞6勝のシンコウラブリイがいる良血。

5戦1勝だが、クイーンカップ2着、桜花賞トライアル・フィリーズレビュー(この年より改称)2着。

最強の1勝馬として挑戦。


ハッピーパスが、のちに母となり産むのがコディーノであり、チェッキーノだ。




サンデーサイレンス産駒の菊花賞馬ダンスインザダークが種牡馬となり、初年度の牝馬産駒がムーンライトタンゴだ。

3戦目に未勝利勝ちのあと500万下条件と連勝。

父ダンスインザダーク同様、後方からの切れ味でブッコ抜くか?




ナリタトップロードの半妹はフローラルグリーン。

新馬戦・エルフィンS連勝。2戦2勝、負け知らずで挑む。


フローラルグリーンは、のちにマイルで活躍するダノンヨーヨーの母となる。



テイエムオーシャンをめぐる『良血牝馬包囲網』。華やかな刺客たち。




4月8日、桜花賞。

1.オイスターチケット
2.タケイチイチホース
3.マイネカプリース
4.フィールドサンデー
5.リワードアンセル
6.リキセレナード
7.テンザンデザート
8.テイエムオーシャン
9.ネームヴァリュー
10.タシロスプリング
11.フローラルグリーン
12.ダイワルージュ
13.ムーンライトタンゴ
14.ポイントフラッグ
15.サクセスストレイン
16.ハッピーパス
17.ツァリーヌ
18.ビッグエリザベス


1番人気テイエムオーシャン、2番人気ダイワルージュ、3番人気ハッピーパス。

4番人気ムーンライトサンゴ、5番人気フローラルグリーン。



真っ先に飛び出したテンザンデザート。

フローラルグリーン、オイスターチケットと好スタートを切ったが、

タシロスプリングが一気に上がり、テンザンデザートをも交わし先頭に立った。


かかり気味に上がっていったテイエムオーシャンが、テンザンデザートと並び2番手。

先行力のあるテイエムオーシャン。


先行争いに巻き込まれることだけが、危惧されていた。


早いのか?

余裕の先行なのか?


鞍上・本田優に命運は任された。



フローラルグリーン、マイネカプリースが続き、その後ろから岡部幸雄が手綱を取るハッピーパスが続いた。


中団後方から、前を見つめるのはダイワルージュ・北村宏司。

後方3頭目、じっくり溜めたムーンライトタンゴ・四位洋文。


狙うのはただ1頭、テイエムオーシャン。



背中に突き刺さる、騎手たちの目線。

分かりすぎるほど分かっていた、テイエムオーシャン鞍上・本田優。


おとなしく華奢なシンデレラ娘、テイエムオーシャン。

デビューして瞬く間にもてはやされ、桜の大舞踏会で光り輝く存在となった。


だが、驕ることのないテイエムオーシャン。

ひたむきなまでに前を見つめる。


ベテラン・本田優は誓った。

どの馬も、お前の前を走らせはしないッ!



4コーナーを回って先頭に躍り出たテイエムオーシャン。

粘るタシロスプリングを、テンザンデザートを突き放した。



マイネカプリースが、オイスターチケットが、ハッピーパスが、

馬群から抜け出し、テイエムオーシャンを追った!


大外から飛んできた。

末脚にかけた、


ダイワルージュだ!


ムーンライトタンゴだッ!



クビ、ハナ、クビ、クビ・・・・・・ゴール前、横一線となった。


3馬身前方、


テイエムオーシャンはゴールした。


桜舞うなか、真一文字に突き切った。


1着テイエムオーシャン

2着ムーンライトタンゴ

3着ダイワルージュ

4着ハッピーパス

5着マイネカプリース