桜花賞1番人気サイコーキララの夢やぶれ、女王となったのはサンデーサイレンス産駒チアズグレイスだった。

一生一度しかないクラシック。勝つことの難しさを思い知らされたサイコーキララ。


チアズグレイスは父サンデーサイレンスの血の偉大さに感謝した。

一度ならず二度、完敗したサイコーキララに大一番で勝てた。その底力の確かさは、父サンデーサイレンスの血に他ならない。

 


牝馬クラシック第1弾・桜花賞が終わり、牡馬たちが色めき立つ皐月賞の時がやってきた。


皐月賞、サンデーサイレンスの血に賭けるのがエアシャカールだった。

母はアイドリームアドリーム=I Dreamed a Dream (夢やぶれて)。

父ノーザンテーストの半姉エアデジャヴーは桜花賞3着、オークス2着、秋華賞3着。ついにクラシック制覇はならなかった。

母も姉も夢やぶれた。

父サンデーサイレンスとなったエアシャカール。母の願いは夢は、半姉を超えること。

すなわちクラシック制覇。サンデーサイレンスの血なれば・・・・・・。


3歳時、4戦2勝、2着1回。

4歳、皐月賞トライアル・弥生賞から始動。フサイチゼノンに敗れたが、2着。

皐月賞出走を確実にした。

 



弥生賞を勝ったフサイチゼノンもサンデーサイレンス産駒。一躍、皐月賞最有力候補となったが、突然の皐月賞回避会見を調教師・田原成貴が行った。会見後、右腕節炎が判明。結果論として回避は正しかったが、馬主・関口房朗と衝突。田原は後ろ盾を失った。


騎手時代から天才といわれながら、歯に衣着せない性格で衝突を繰り返してきた田原成貴。調教師となっても変わらぬ気質。上手くコミュニケーションをとれない。調教師として、立場を失っていくことにジレンマを感じたか?

徐々に心の闇が広がり、2001年、銃刀法違反、覚せい剤取締法違反で逮捕され、調教師免許剥奪、競馬会を去ることとなる。


フサイチゼノンは森秀行厩舎に転厩される。1年後に復帰2戦するも復活の兆しは見せぬまま、関口の希望でアメリカに渡り2走。アローワンス競走2着、マンノウォーS4着をもって引退。

アメリカで種牡馬となった。わずかな種付け頭数だが、それでもがんばっている。活躍馬は、まだない。

フサイチゼノン、人の思惑の狭間で捻じ曲げられた運命。そう、思えてならない。

 



伯父にマイルチャンピオンシップを2勝したダイタクヘリオスをもつダイタクリーヴァ。

父はサンデーサイレンス初年度産駒フジキセキ。4戦4勝、無敗のまま皐月賞を前に屈腱炎で引退。初年度産駒に活躍馬は出なかったが、2年度産駒にダイタクリーヴァが現れた。


3歳時、3戦2勝、2着1回。

4歳、シンザン記念で初重賞勝利。

皐月賞トライアル・スプリングSを1番人気で制覇。


父フジキセキが直前に引退、出走を果たせなかった皐月賞。

最有力候補として出走する。

 



ラガーレグルス。3歳トレーニングセールで693万円で買われた馬。

大きな期待は、なかった。


父はサクラチトセオー。故障、故障に苦しみながら、6歳で天皇賞秋を制した。不屈の馬。


3歳。新馬戦、野路菊S(オープン)を連勝。デイリー杯3歳S2着。

あふれる自信で臨んだ朝日杯3歳Sは、落鉄が響いた。7着惨敗。

中1週でラジオたんぱ杯3歳Sに出走。道中落馬寸前の不利にあった。火がついた、猛然と追い込み、1着。初重賞制覇。


4歳。共同通信杯4歳S、無念のゲート膠着。飛び出したのは2秒後。

追い込んだものの、7着が精一杯だった。


トライアル・弥生賞に挑戦。フサイチゼノン、エアシャカールに1馬身4分の1、クビ差遅れて3着。


何かがある。試練の数々に見舞われながら、ようやくたどり着いたクラシック。

名もない馬の反骨魂・・・・・・見せつけたい!

 



祖母はエリザベス女王杯を勝ったリワードウイング。切れ味自慢は毎日杯2着、リワードフォコン。


東京スポーツ杯3歳S覇者ジョウテンブレーヴ。弥生賞4着から浮上するか?


2着、2着のあと3連勝。『関西の秘密兵器』アタラクシア。

スプリングS2着パープルエビス、きさらぎ賞2着エリモブライアン。


クラシックを狙う馬たち、多士済々。




4月16日、皐月賞。

1.ラガーレグルス
2.ジョウテンブレーヴ
3.ダイタクリーヴァ
4.ピサノガルボ
5.パープルエビス
6.タイムリートピック
7.リワードフォコン
8.マイネルチャージ
9.カネツフルーヴ
10.エリモブライアン
11.トップコマンダー
12.ニシノアラウンド
13.アタラクシア
14.チタニックオー
15.ヤマニンリスペクト
16.エアシャカール
17.クリノキングオー
18.マイネルコンドル


1番人気ダイタクリーヴァ、2番人気エアシャカール、3番人気ラガーレグルス。

4番人気アタラクシア、5番人気リワードフォコン。



ゲートが開いた途端に波乱は起こった。

1番枠ラガーレグルスがゲート内で立ち上がった時にスタートが切られ、鞍上・佐藤哲三は振り落され、ラガーレグルスは立ち上がった姿勢から尻もちをつき、ゲートに絡まった。

係り員数人がかけより、暴れるラガーレグルスを正常に戻すように懸命ななか、ゲートを飛び出した馬たちはレースへと入って行った。


ラガーレグルスの皐月賞挑戦は、ゲートを出ることなく終わってしまった。


先手を取ったのはパープルエビス。

大外から切れ込んで、マイネルコンドルが2番手。タイムリートピックが3番手。

4番手、内にダイタクリーヴァ、外にアタラクシアがつけた。


ジョウテンブレーヴ、トップコマンダーが好位。

ピサノガルボ、ニシノアラウンドが中団。

後方につけたリワードフォコン、エリモブライアン。

後方3頭目から行くのが、武豊鞍上のエアシャカールだ。

最後方、チタニックオー。


弥生賞から行けなくなったエアシャカール。どこから押し上げるのか?

武豊の手綱さばきに注目が集まった。



1000m60秒2、ペースは速くない。


4番手内につけた1番人気ダイタクリーヴァ。

鞍上は福永祐一と同期の若手、高橋亮。


上手く内で溜められている。このまま、このまま・・・・・・。



3馬身離して逃げるパープルエビス。

2番手マイネルコンドルからさらに4馬身離れた3番手グループの内。

ダイタクリーヴァには絶好位。


手綱から伝わる感触に、さらに高橋亮の自信は深まった。



3コーナー、動き出したエアシャカール・武豊。

大外を通って進出を開始した。


グングンと追い上げた。



マイネルコンドルが逃げるパープルエビスに追いつき、タイムリートピック、アタラクシアも外から迫った。

先団が固まるなか、内々最短を通るダイタクリーヴァは、高橋亮が手綱をもったままでパープルエビスのすぐ後ろに付けた。


直線、4,5頭が横一線。

そのすぐ後、大外にまでエアシャカールが取りついた。


内からは、


パープルエビスの外に出したダイタクリーヴァが、鋭く突き抜けた。


この時を待った。 一瞬の切れ!


完全に抜け出したダイタクリーヴァ。


決まったか?



その時だった。


エシャカールが、一旦止まりかけた伸び脚から、2弾ロケットを発射した。



余力を持って抜け出したダイタクリーヴァが、一瞬止まった。


それほどの鋭さでエアシャカールが、迫ったッ!



しぶとく伸びるジョウテンブレーヴ、後方から差し込むチタニックオー、ヤマニンリスペクト、エリモブライアン・・・・・・。


それらの脚が霞む。


ゴール前、


ダイタクリーヴァに迫るエアシャカール!


釘付けになった、観衆の目。



内ダイタクリーヴァ!


クビ差、


外エアシャカール!


差し切ったッ!



サンデーサイレンスの爆発力が、


エアシャカール、母アイムドアドリームの夢を叶えた!


1着エアシャカール

2着ダイタクリーヴァ

3着チタニックオー

4着ジョウテンブレーヴ

5着ヤマニンリスペクト


(つづく)