4歳牝馬クラシック。混沌としていた。


3歳の牝馬G1である阪神3歳牝馬Sは1番人気シンコウノビー5着、2番人気サラトガビューティ4着、3番人気ダイワリプルス6着。

勝ったのは7番人気アインブライド、2着キュンティア6番人気、3着ダンツシリウス8番人気だった。


桜花賞トライアル2戦。

チューリップ賞を勝ったのはダンツシリウス。2着ロッチラヴウインク、3着アインブライド。単勝2.1倍1番人気のファレノプシス4着。

阪神4歳牝馬特別はマックスキャンドゥが勝利。2着メイショウアヤメ、3着バプティスタ。単勝1.3倍1番人気ロンドンブリッジは4着。


絶対女王候補不在のなかで、華やかな乙女の祭典は近づいていた。




チューリップ賞を勝ったダンツシリウスは3歳9戦目、阪神3歳牝馬Sに出走。1勝のみで挑戦し3着となった。

実戦を重ねるごとに強さを身につけた。

明け4歳になりシンザン記念で、不良馬場を生かしたとはいえアグネスワールド以下を5馬身ぶっちぎり勝利。

チューリップ賞で堂々の重賞連覇。

父タマモクロスの名を上げるべく女王候補として桜花賞に臨む。

札幌3歳S、14番人気14着。無名馬の成り上がり・・・・・・冷ややかに見る目もあった。




父はメジロマックイーン(菊花賞・宝塚記念・天皇賞春2回)、母は重賞3勝ユキノサンライズ。

エイダイクインは3連勝でクイーンカップを制し、6戦4勝、2着1回。


種牡馬としてメジロライアンに遅れを取るメジロマックイーン、孝行娘の出現に期待が持たれた。




新馬戦から3連勝でファンタジーS・重賞制覇。ロンドンブリッジは絶対女王候補の可能性を秘めていた。

休養し、1.3倍の断然人気で臨んだ桜花賞トライアル・4歳牝馬特別。

無念の4着。

女王をめざす誇りと意地、失っていなかった。




優雅に咲く胡蝶蘭。その名をとったファレノプシス。

父ブライアンズタイム、母キャットクイル。母キャットクイルの半姉は、ビワハヤヒデ、ナリタブライアンの母パシフィカス。

良血である。10歳離れた半弟として2010年に生まれるのがキズナ。


新馬戦・さざんか賞・エルフィンS、3連勝。桜花賞トライアル・チューリップ賞を1番人気で4着。

ロンドンブリッジと同じような道を歩むファレノプシス。


鞍上が石山繁から武豊に替った。女王の座を、武豊に委ねた。




未勝利戦・飛梅賞、ダート連勝後、トライアル・4歳牝馬特別を勝ったマックスキャンドゥ。

突然現れたシンデレラか?




阪神3歳牝馬S、7番人気で勝ったアインブライド。3歳のシンデレラ。

4歳になって、きさらぎ賞9着、チューリップ賞3着。

まだまだ、夢は諦めない。




4月12日、桜花賞。

1.ラティール
2.オータムリーフ
3.ラヴラヴラヴ
4.エイダイクイン
5.メイショウアヤメ
6.クリノオードリー
7.オルカインパルス
8.ダンツシリウス
9.ファレノプシス
10.エアデジャヴー
11.アインブライド
12.サイキョウザクラ
13.バプティスタ
14.マックスキャンドゥ
15.ロンドンブリッジ
16.ロッチラヴウインク
17.テイエムオーロラ
18.アマートベン


1番人気ダンツシリウス、2番人気エイダイクイン、3番人気ファレノプシス。

4番人気ロンドンブリッジ、5番人気マックスキャンドゥ。



ダンツシリウス、エイダイクイン、マックスキャンドゥ、ロッチラヴウインク、勢いよく飛び出した。

先行争い。

外から、一気に先頭を奪ったのはロンドンブリッジだった。松永幹夫が強引に先手を取った。


ひしめく2番手グループを見やりながら好位につけたのは、ファレノプシス。

石山繁で出遅れたチューリップ賞。素晴らしく切れる馬ではない。

武豊にとって、ファレノプシスを勝たせるには好位置取りは必須だった。


その後ろに付けたメイショウアヤメ。差しに転じてトライアル2着、末脚には自信があった。

-12㌔、412㌔までに減った馬体で乗り切れるか? 11番人気、伏兵の中の伏兵といわれた馬。

将来、この馬の孫となるのがメイショウマンボだ。


後方に位置したのがアインブライド、そして、横山典弘が乗るエアデジャヴー。

5戦1勝、2着3回、クイーンカップ2着。9番人気伏兵中の伏兵はここにもいた。

エアデジャヴーの仔として生まれるのがエアメサイア。その仔がエアスピネルだ。



離すこともなく17頭を引き連れて逃げるロンドンブリッジ。

勝ちを意識する2番手グループ。動かず脚を溜める。


淡々と流れる馬群。


直線、追いだすマックスキャンドゥ、ロッチラヴウインク、エイダイクイン。

引き離したのは、ロンドンブリッジだ!


溜め逃げ、脚を残していた。

勝負はこれからだ!


懸命に押す松永幹夫。

外から、唯一迫った。


ファレノプシス!


武豊が追い詰めた。



胡蝶蘭=『幸せが飛んでくる』

女王誕生に向かって、ファレノプシスが飛んだ。



ロンドンブリッジに並んで、差して、ゴールを突き抜けた!

1馬身4分の1差。


混戦を抜けた女王、ファレノプシス。



後方から、矢のように飛んできたエアデジャヴー。


わずかに、ロンドンブリッジに届かなかった。



1着ファレノプシス

2着ロンドンブリッジ

3着エアデジャヴー

4着ロッチラヴウインク

5着マックスキャンドゥ


(つづく)