オグリキャップのいない『平成3強』の2強対決。

天皇賞春はスーパークリークがイナリワンを半馬身、抑えた。


有馬記念で初の惨敗。休養に入ったオグリキャップ。

2月には栗東に戻ったオグリキャップ。どこも悪くない、だが、調子は一向に上がってこなかった。

レースに出せる状態でない。


オグリキャップがオグリキャップとして復活するには、多くの時間が必要だった。

3月、4月、5月・・・・・・もっと、もっと。


だが、オグリキャップが登場したのは5月半ば、安田記念だった。

馬主が変わって、2年契約・5億円。2年目、もう5月、待ったなしだったか?


なんとか体調アップしたオグリキャップ。走れる状態となった。




皐月賞馬ヤエノムテキ。重賞2,1,1,2,1着。その強さとは裏腹にG1では4,10,7,4,6着。

いま一度、めざすは『冠』。何としてでも、勝つまでは終われない。

1月、日経新春杯2着。2月、マイラーズカップ3着。4月、産経大阪杯3着。

勝てなくなった重賞。でも、気持ちに衰えはない。




明け5歳、金杯、中京記念、重賞を連勝。産経大阪杯でスーパークリークの2着。

天皇賞春を使わず安田記念に狙いを定めてきたオサイチジョージ。

父は長距離系ミルジョージにもかかわらず、菊花賞で痛い目を見た12着惨敗。

神戸新聞杯1着、京都新聞杯2着、トライアルで見せた力が通用しなかった。


3歳秋、2,2,1着で初勝利を上げた途端に脚部不安を発症、4歳春まで休まざるを得なかったオサイチジョージ。復帰後、裏街道1,1,3,1着で表舞台の神戸新聞杯で全国区デビュー。

紆余曲折の末、つかんだ檜舞台はホロ苦すぎた。

古馬となって、G1獲りに出た安田記念。オグリキャップがいた。

最大の難敵。

若さで、ぶつかるだけだ!




前年の覇者バンブーメモリー。秋のマイルG1・マイルチャンピオンシップは、オグリキャップにハナ差敗れた2着。

マイルで生きる道をつかんだ。

スペシャリストの誇り。リベンジあるのみ。




7歳となったホクトヘリオス。スペシャリストの思いは同じ。

安田記念4着、4着。マイルチャンピオンシップ2着、3着。

後方から、自慢の差し脚を繰り出すだけ。届けッ、『てっぺん』!




5月13日、安田記念。

1.リンドホシ
2.スカーレットリボン
3.ウイニングスマイル
4.ホクトヘリオス
5.ジュネーブシンボリ
6.コガネターボ
7.ケープポイント
8.メジロモニカ
9.オグリキャップ
10.イズミサンシャイン
11.バンブーメモリー
12.ヤエノムテキ
13.アドバンスモア
14.オサイチジョージ
15.シンウインド
16.ピュウターオール


1番人気オグリキャップ、2番人気オサイチジョージ、3番人気バンブーメモリー。

4番人気ヤエノムテキ、5番人気ホクトヘリオス。


有馬記念後、ようやく顔を見せたオグリキャップ。

秋6走の過酷なローテーション。そして、あの惨敗。痛みは癒えたのか?

心配顔のファンは、その姿を見ただけで喜び、すべてを忘れて応援。アイドルホースはファンの前ではカリスマであらねばならなかった。

鞍上は南井克巳から武豊に替わった。それが、ますますオグリキャップの信頼を高めてしまった。単勝1.4倍、負けられないオッズ。


ケープポイントが飛び出し、ハナを奪い、レースは始まった。

外からピュウターオール、その後に付けたのが、オグリキャップだ。

シンウインドが外から並びかける。


オグリキャップの直後、完全にマークするのはヤエノムテキ。

鞍上が、西浦勝一から名手・岡部幸雄に替わった。何かを変えねば・・・・・・厩舎は名手に託した。


中団にオサイチジョージ、バンブーメモリー。


最後方に、ホクトヘリオスだ。



ケープポイント1頭が、2,3馬身離して逃げる。

後の集団。動きがない。


オグリキャップ、鞍上・武豊は動かない。

手綱は抑えたまま。

オグリキャップ、ピュウターオール、シンウインド、3頭が2番手集団を形成。


そのまま、直線に入った。



ケープポイントが脱落。

オグリキャップが先頭に立った。


もつのか? オグリキャップ。


満を持していた、ヤエノムテキが迫ってきた!

ここが勝負ッ! 追う岡部。


勢いは後ろにあった。


さらに、外からオサイチジョージが伸びてきた!



迫られたオグリキャップ。


ここから、


伸びたッ! 迫られたヤエノムテキを、引き離した。



ファンの思い・・・厩舎の思い・・・馬主の思い・・・すべてを飲み込んで、オグリキャップは走った。


生まれてすぐに立てなかったオグリキャップ。牧場の人が抱えて初乳を飲ませてくれた。

右前脚外向、幼い頃から抱えたハンデ。稲葉場長が丹念に直してくれた。


人なつっこいオグリキャップ。人が好きだった。


負けるわけには、いかないッ!



伸び返したオグリキャップは、

ヤエノムテキに2馬身の差をつけてゴールした。



1着オグリキャップ

2着ヤエノムテキ

3着オサイチジョージ

4着シンウインド

5着ホクトヘリオス


(つづく)