4戦全勝、圧倒的1番人気アグネスフローラが、試練を乗り越え桜花賞を獲った。

稀に見るハイペース、度重なるアクシデント、ケリーバッグとの死闘。

簡単ではなかった『サクラの女王』。重い重い勝利。


牝馬に転じて牡馬、皐月賞は混沌としていた。



朝日杯3歳S(G1)を制した東のチャンプ、アイネスフウジン。

2月、共同通信杯4歳Sを勝ち、万全かと思われた。

3月、トライアル・弥生賞。不良馬場を逃げて潰れた。メジロライアン、ツルマルミマタオー、ホワイトストーンに差されて4着と敗退。



半姉に目黒記念(G2)、日経賞(G2)を制したメジロフルマーをもつ『メジロ』の期待馬メジロライアン。

3歳時は4戦目に初勝利。6戦2勝にとどまり、父アンバーシャダイからも奥手と思われた。

4年目の若手横山典弘を主戦と決められて、横山ノリとともにグングン成長していった。3歳最後のひいらぎ賞からジュニアカップ、弥生賞と3連勝。

皐月賞の有力候補にのし上がった。



弥生賞2着となったのは、小倉新馬デビューの関西馬ツルマルミマタオー。

父はテンポイント・トウショウボーイとともに『TTG3強』を形成したグリーングラス。

どちらかといえば低く見られる小倉デビュー馬にあって3歳戦は5戦3勝、3着1回。阪神3歳S(G1)で1番人気3着。

始動戦弥生賞で2着、大いに希望が膨らんだ皐月賞だ。



同じ小倉デビュー、ハクタイセイ。デビュー戦を飾ったツルマルミマタオーと違い勝利できず、初勝利(京都)まで5戦かかった。

そこから一気に5連勝。5連勝目を2月のきさらぎ賞(G3)で決めた。阪神3歳Sの覇者コガネタイフウを2着に退けたことから、一躍、東へ名が轟いた。

父ハイセイコーの芦毛馬。牝馬ケリーバッグとともに『白いハイセイコー』と呼ばれ、旋風を巻き起こす、か?



トライアル・スプリングSを制したのはアズマイースト。

ダートで4戦2勝のあと芝・水仙賞(500万下)2着のあと、スプリングSで金星。

アズマイースト=東東、文字通り『東の秘密兵器』となった。



新馬戦9馬身差勝ち、2戦目ヒヤシンスS2馬身半圧勝。スプリングS1番人気で6着に敗れたものの大物感を漂わせていたストロングクラウン。

3戦目未勝利勝ちから4連勝、ペガサスS・毎日杯の重賞連勝を含めた快進撃を見せるキーミノブ。父は有馬記念勝ちのカネミノブ。

西のチャンプ、阪神3歳Sの覇者コガネタイフウ。きさらぎ賞2着、ペガサスSは競走中止。復権あるのみ。

弥生賞3着、1勝馬ホワイトストーン。父は『白い稲妻』シービークロス。タマモクロスと同じ芦毛。『白い稲妻』の血を引き継ぐか?



個性派が揃った皐月賞。

ゴールをぶち抜くのは?



4月15日、皐月賞。

1.ワイルドファイアー
2.アイネスフウジン
3.ホワイトストーン
4.コガネタイフウ
5.アズマイースト
6.プルミエール
7.キーミノブ
8.ストロングクラウン
9.シュバリエ
10.フタバアサカゼ
11.サクラアサヒオー
12.ツルマルミマタオー
13.メジロライアン
14.バンダイロード
15.ハクタイセイ
16.ダイカツリュウセイ
17.ナリタハヤブサ
18.ニチドウサンダー


1番人気アイネスフウジン、2番人気メジロライアン、3番人気ハクタイセイ。

4番人気ツルマルミマタオー、5番人気アズマイースト。


1番人気アイネスフウジンが単勝4.1倍。5番人気アズマイーストまで単勝一桁台。

数字が混戦模様を表していた。



フタバアサカゼが逃げる2番手にピッタリとつけたアイネスフウジン。

弥生賞で逃げて潰れたアイネスフウジン。鞍上・中野栄治は逃げにこだわらずアイネスフウジンのペースを守った。


キーミノブ、アズマイーストが好位マーク。外からニチドウサンダーもつけた。

『白いハイセイコー』、ハクタイセイがそのあと。

ストロングクラウン、カガネタイフウ。


後方集団にツルマルミマタオー、ホワイトストーン。

さらに後方から・・・・・・メジロライアンだ。



遅くもなく、速くもなく、完全な自分のペースに持ち込んだのは、2番手、1番人気アイネスフウジンだ。

3コーナーから外を追い上げるメジロライアン。

好位陣も前をめがけて、騎手の手が激しく動いた。


微動だにしない中野栄治の手綱。

アイネスフウジンはただ1頭、余裕で先頭に立ち、直線に向いた。


アイネスフウジンをめざして、内から外、横に大きく開いた馬群。

ニチドウサンダー、ストロングクラウン。キーミノブも脚を伸ばす。


17頭を引き連れて、アイネスフウジンが『栄冠』ヘのスパートをかけた。

縮まりかけた差が開いた。


勝てるッ!

中野栄治が確信した。その時、


馬群の中から抜け出してきたハクタイセイ。

一気に差を詰めた。


内から馬群を縫って、メジロライアンもやってきた!

だが、ライアンは遅すぎた。


届かないッ!



気がついた中野栄治。ハクタイセイの白い影。


懸命に、懸命に、逃げ込みを図った。


捕えるッ!

襲いかかったハクタイセイ、鞍上・南井克巳の唸るムチ。



馬体が合わさった。


わずかに、


わずかに、


白い影が前に出た、かに見えた・・・・・・。



そこがゴールだった。



皐月賞の栄冠は、『白いハイセイコー』ハクタイセイに輝いた。


クビ差、栄光を分けた。


1着ハクタイセイ

2着アイネスフウジン

3着メジロライアン

4着コガネタイフウ

5着ニチドウサンダー


(つづく)