母ゴールデンサッシュはサッカーボーイの全妹。

9馬身差、10馬身差、8馬身差(阪神3歳S)、半馬身差(2着は皐月賞馬ヤエノムテキ)、5馬身差、4馬身差(マイルチャンピオンシップ)・・・・・・勝つときは圧勝したスーパースター・サッカーボーイ。

底知れぬ良血を持ちながらも負け続けたステイゴールド。

全50戦7勝。未勝利脱出は6戦目、負けることから始まったステイゴールド。


ステイゴールド=輝きそのままに。

夢がいっぱい詰まった幼き心を失うことがなかった。


競走馬として、最後の最後に叶えた夢。

種牡馬として、心を仔に伝えた。


ドリームジャーニー、朝日杯フューチュリティS・有馬記念・宝塚記念。

ナカヤマフェスタ、宝塚記念。

オルフェーヴル、3冠・有馬記念2勝・宝塚記念。

ゴールドシップ、皐月賞・菊花賞・有馬記念・宝塚記念2勝。

フェノーメノ、天皇賞春2勝。

レッドリヴェール、阪神ジュベナイルフィリーズ。



2015年、2月5日。初種付けの後、急変。搬送先の社台ホースクリニックで息を引き取った。

大動脈破裂、21歳だった。

まだまだ、惜しまれる若さ。



種牡馬としての活躍を誰が予想できただろうか?


馬は血で走る。ともに、血の中に受け継がれた心で走る。

と、私は思う。


ステイゴールドの血と心を受け継いだ息子たち、娘たち。

きっと、きっと、その仔たちに繋げていってくれるだろう。



ステイゴールド=輝きそのままに。


大丈夫だよ。君の心は、ずっと、ずっと、守ってくれる。

安心して・・・・・・。


もっと、もっと長生きして、のんびり過ごしてほしかったけど・・・・・・。


ただ、冥福を祈るばかり。



ここに、君の心を伝えたい。

・・・・・・・・・・・・・・・『愛しき馬伝説107 ステイゴールド』より。・・・・・・・・・・・・・・・・


競走馬として、てっぺんめざす!


サラブレッドにとって走ることは命、本能。

ならば頂点めざす。オレは、G1馬になる!


幼い頃、母の乳をむさぼり、野を駆け回った。

幼い仲間とやんちゃもした。

現実を知らずに、夢を見た。夢を語り合った、あの頃。


まだ、無垢だった幼駒たち。その姿は輝いていた。



父サンデーサイレンス、母ゴールデンサッシュ。母の父ディクタス。

母の全兄にサッカーボーイ。

良血と呼べるその血からも期待は大きく、ステイゴールドと名付けられた。


スティーヴィー・ワンダーの『Stay Gold』から取られたその名。

「輝きそのままに」、または、歌詞内容から判断すると「幼い頃の純粋・無垢な心をいつまでも」という意味でもある、らしい。



420㌔前後、牝馬より小さなステイゴールド。

現実の競走馬の世界は甘くはなかった。


1996年12月。新馬戦、芝2000m、3着ホロ苦デビュー。

初勝利は翌年5月、6戦目。

サニーブライアン、シルクジャスティス、メジロブライト、エリモダンディー、エアガッツ、ランニングゲイル、マチカネフクキタル、トキオエクセレント、サイレンススズカ、同期たちがダービーで凌ぎを削った翌週、やっとステイゴールドは2勝目を上げた。

3勝を上げて準オープンの身で菊花賞に挑むも、マチカネフクキタルの8着。

それでも善戦といわれた。


てっぺんをめざす。オレはG1馬になる!

あの時のオレは、どこ行った。


走りに走った。懸命に走った。

2着、2着、2着、2着、ダイヤモンドSの2着で、勝つこともなくオープンに上がったステイゴールド。

天皇賞春、メジロブライトの2着。目黒記念3着。

宝塚記念、サイレンススザカの2着。京都大賞典4着。

天皇賞秋、オフサイドトラップの2着。

ジャパンカップ、エルコンドルパサーの10着。

有馬記念、グラスワンダーの3着。京都記念7着。日経賞3着。

天皇賞春、スペシャルウィークの5着。金鯱賞3着。鳴尾記念3着。

宝塚記念、グラスワンダーの3着。京都大賞典6着。

天皇賞秋、スペシャルウィークの2着。

ジャパンカップ、スペシャルウィークの6着。

有馬記念、グラスワンダーの10着。アメリカジョッキーC2着。京都記念3着。日経賞2着。

天皇賞春、テイエムオペラオーの4着。目黒記念1着。

宝塚記念、テイエムオペラオーの4着。産経賞オールカマー5着。

天皇賞秋、テイエムオペラオーの7着。

ジャパンカップ、テイエムオペラオーの8着。

有馬記念、テイエムオペラオーの7着。日経新春杯1着。ドバイシーマクラシック1着。

宝塚記念、メイショウドトウの4着。京都記念1着入線失格。

天皇賞秋、アグネスデジタルの7着。

ジャパンカップ、ジャングルポケットの4着。


気が遠くなるほど、走った。

何度となく、てっぺんに手が届きかかった。

力尽き、力尽き、心折れたこともあった。

それでも、走った。


めざすは、てっぺん。オレはG1馬になる!

幼き頃の、無垢な夢。


とうとう、やってきた引退レース。

2001年、12月16日。香港ヴァーズ・G1。

ステイゴールド、7歳、50戦目。海外の地、香港・沙田競馬場。鞍上は武豊。


左にもたれるクセのあるステイゴールドは、左ブリンカーをつけた。

道中を6番手で進んだステイゴールド。

直線で素早く馬群を抜けて2番手に上がった。


だが、目の前にあったのは、絶望、の2文字だった。

はるかまだ、5馬身先に逃げるエクラールがいた。


ステイゴールドは内によれてしまった!

とらえきれない。ああ、また2着か! 鞍上・武豊は半ば観念した。

その時だ! ステイゴールドは信じられない加速を見せた。


「背中に羽が生えた」

のちに武に言わしめた脅威の末脚で、ステイゴールドはエクラールに迫った。

まさに、ゴール寸前、ステイゴールドはとらえた。タイム差なしの勝利だった。



2002年、1月20日。京都競馬場で引退式が行われた。

日本調教馬、海外初のG1制覇という勲章を胸に、ファンにラストランを見せたステイゴールド。

場内にはスティーヴィー・ワンダーの『Stay Gold』が流された。



『Stay Gold』

(以下は、いろんな訳詞があり著作権の問題もあるので、私なりに解釈したものです。決して歌詞そのものではありません)

生きてきたよなぁ、オレたち。

ガキの頃は、何も知らず、無垢だった。

楽しかった。なんでも真剣だった。

そして、いま気づく。

いつの瞬間も、どの場所も、オレたちは輝いていたことを。


輝いている時は、永遠に続くと思っていた。

でも、晴れた日ばかりじゃない。天気が変わるように、

人生も変わっちまう。いろんなことがある。


でも、忘れないよ。

オレにとって素敵だった時間。

みんなで過ごした時間。

心の中で、小さくても、いつも、いつも、輝いてるんだ。


人生、喜び、悲しみ、たくさんのことがあふれてる。

辛いことも、現実だ。

苦しいことも、現実だ。

そのなかで、オレたちは生きているんだ。

そうしているうちに、オレたちは年をとる。


忘れちゃいけない。


輝きそのままに。