1970年のクラシックを戦ったライバル、タニノムーティエとアローエクスプレス。

一年早く種牡馬となったタニノムーティエは、75年にタニノサイアスを出し桜花賞4着、オークス6着。

アローエクスプレス初年度産駒はこの年。その代表産駒となったのがテイタニヤだ。



母ダイニトモコが子育てを拒否。代理母もうまく見つからず、人の手によって育ったというテイタニヤ。

母乳を飲まないと免疫がつかない。大きなハンデをもったが、牧場の人の愛情に支えられて、すくすくと育った。


「これからはスピードの時代が来る」、アローエクスプレスの馬主・伊達秀和氏がこだわったスピード血統の血。アローエクスプレス自身は、スピードの裏にある短距離の血に泣いた。タニノムーティエの力強さに、自慢のスピードは打ち砕かれた。


だが、時代は明らかにスピード競馬に向かっていた。

キタノカチドキ、テスコガビーを代表とするテスコボーイ産駒がスピードで他を圧倒。ヴェンチアのスピードを受け継いだイットーの活躍。そのスピードは『華麗なる一族』として、子孫に大きく花開くこととなる。


アローエクスプレスは内国産種牡馬不遇の時代のなかで、種牡馬として外国産種牡馬と伍して戦うこととなる。伊達氏の先見の賜物、スピードを武器として。



テイタニヤは3歳(現表記2歳)夏デビュー、7戦4勝。

4歳初戦こそ7着と敗れたが、クイーンカップを勝利して桜花賞へ向かって西下した。



桜花賞の前哨戦・阪神4歳牝馬特別を制したのは、テイタニヤと同じ関東馬スカッシュソロン。

新馬戦3着のあと4連勝。4年連続オークス馬を送り出したパーソロン産駒。



クイーンカップ2着、西下したのはベロナスポート。5戦2勝、2着3回。


関西で迎え打つのはクインリマンド。3連勝で紅梅賞を勝ち、きさらぎ賞を7戦6勝の外国産馬スピリットスワプスの2着。2歳下の全妹が、アグネスフライト、アグネスタキオンへと繋がる名牝アグネスレディーだ。




4月11日、桜花賞。

1.スズカオーヒメ
2.メイジガルボ
3.カミノロウゼン
4.スカッシュソロン
5.テイタニヤ
6.テンザンラブ
7.クモハタチェリー
8.ジョータカバル
9.ホクエイフブキ
10.キミノダービー
11.ヤマカツクイン
12.クインリマンド
13.ホクザンラッキー
14.メイショウグリーン
15.ピンクスター
16.ツキセツ
17.サンイチバン
18.ベロナスポート
19.タイシオリ
20.ファインリボー
21.セントモーリス
22.アイアンポーラ


1番人気スカッシュソロン、2番人気テイタニヤ、3番人気クインリマンド。

4番人気ベロナスポート、5番人気ツキセツ。



22頭立て、流れに乗れないと勝てない桜花賞。

痛恨の出遅れをしたのは、テイタニヤだった。



ホクザンラッキーが先手を奪った。アイアンポーラが外から強引に2番手。

キミノダービー、ベロナスポート。

クインリマンド、スカッシュソロン、好位につけた有力馬。


テイタニヤは上がって行くが、後方から5,6番手。

オークス3連覇、『牝馬の嶋田』といわれた鞍上・嶋田功、腹をくくるしかなかった。

急いで上がれば自滅しかない。後方で耐えた。



ホクザンラッキーがつくった流れは速かった。



3,4コーナー中間。

早くもバテた馬が下がってきた。


流れが変わる。

横にいたタイシオリが上がると同時に、嶋田功はテイタニヤの手綱を動かした。


ゴーサインだッ!


タイシオリを先導に、上がって行くテイタニヤ。



先頭はベロナスポートに代わり、直線に入る。

最内を狙うクインリマンド。


キミノダービーが真ん中、外にタイシオリ、テイタニヤ。


スカッシュソロンが馬群に巻き込まれて、喘いでいる。


横並びの5頭の競馬だ。




ここしかないッ! 内いっぱいからクインリマンドが渾身の伸び。


突き抜けた、か?



ジワリッ、迫るキミノダービー。


大外から、スピードアップしたテイタニヤ。



最後のギヤチェンジ。


クインリマンドに並び、差し切った。



父アローエクスプレスの自慢のスピード。

テイタニヤの血が騒いだ。




『夏の夜の夢』の妖精の女王=テイタニヤ。


春霞の夢の宴を、斬り裂いた。



1着テイタニヤ

2着クインリマンド

3着キミノダービー

4着タイシオリ

5着ベロナスポート



(つづく)