2010年、12月4日。阪神競馬場。

2歳新馬戦、芝1400m。



衝撃が走った。



単勝1.9倍。圧倒的な1番人気ではあったが、まだ走る前の期待値でしかなかったノーブルジュエリー。


父は米2冠馬スマーティジョーンズ。ゴーンウエストからミスタープロスペクターに辿るサイアーライン。

母ノーブルステラは米重賞を4勝。その父モンズーンは欧州ドイツを代表する名種牡馬。

アメリカ血統に欧州の重厚な血統の配合。


良血ではあるが日本の馬場では成功例が少ない血統配合も、素軽い動きで人気を集めた。



スタートしてほどなく先頭に立ったノーブルジュエリーは、名手ルメールに導かれて直線も持ったまま先頭。


あと、200m。


ルメールが手綱をしごくと一気に後続を突き離した。


ぐんぐん差は開いて、ゴールでは2着シャイニンオーラに9馬身の差をつけた。



1分21秒3。2歳コースレコードに0.2秒差。



2歳牝馬№1レーヴディソールに強敵現る!


もてはやされた。





2011年、2月5日。エルフィンS。


3歳となって、クラシック桜花賞への始動。


1番人気。


母は女傑エアグルーヴ、父はディープインパクト、超良血グルヴェイグを3着に切って捨てたが、マルセリーナ(桜花賞馬となる)に負けて、2着。



2月26日、アーリントンC。

牡馬相手に唯一の牝馬も、1番人気。

新馬戦の衝撃に揺るぎがなかった。



痛恨の出遅れ。



4コーナー12番手から、直線追い上げるもノーザンリバーの7着。


桜花賞を諦めるとともに、休養に入った。





秋は500万下条件戦を2着、1着、1000万下を1着。


格の違いを見せつけた。




2012年。

1月、新春S(1600万下)7着。


3月、うずしおS(1600万下)2着。


4月オーストラリアS(1600万下)9着。




いつか、あの衝撃のデビュー戦は幻のように消えた。

こんなはずじゃぁ・・・、なかった、のに。



マルセリーナが、ホエールキャプチャが、エリンコートが、アヴェンチュラが牝馬戦線を賑わした2011年。


片隅で、見ていた。



レーヴディソールが引退し、グルヴェイグが、アヴェンチュラが・・・目標とするはずだった良血馬がターフを去った、いま2012年。



くすんでいる場合じゃない。


荒んでいる場合じゃない。




気品高き輝きを取り戻さねば。



誰よりも、



誰よりも、



歯痒さを持っているのは、




私自身、




ノーブルジュエリーだ。