ノーザンファームをはじめ、非サンデー系良血牝馬をすべてお相手にするかのような勢いの種牡馬ディープインパクト。

初年度産駒からはマルセリーナ(桜花賞)、リアルインパクト(安田記念)、2頭の3歳G1馬を出した。


2年目。

牝馬クラシック・桜花賞でワンツー(1着ジェンティルドンナ、2着ヴィルシーナ)を決めたディープ産駒。


皐月賞。

ワールドエース(きさらぎ賞)、アダムスピーク(ラジオNIKKEI杯)、ディープブリランテ(東京スポーツ2歳S)、アーデント(弥生賞3着)、ベールドインパクト(きさらぎ賞3着)、ジョングルール(抽選待ち)、6頭の布陣で臨むディープ産駒。



ディープ何するものゾ! 皐月載冠、すなわち打倒ディープをめざす強者。

スプリングSを制したグランデッツァ(アグネスタキオン産駒)、共同通信杯を制したゴールドシップ(ステイゴールド産駒)、道悪弥生賞であっといわせたコスモオオゾラ(ロージズインメイ産駒)・・・・・・。


牙を磨き、爪を研ぐ。



勝つのではなく、勝たないといけない逸材。

栗東・矢作芳人師が惚れ込んだのが、ディープブリランテだ。

父ディープインパクト、母ラヴアンドバブルス。母の父Loup Sauvage。


2009年5月8日、遅生まれだったが、均整のとれた馬体と動きのしなやかさは評判を取った。

ディープ産駒ではあるが、新冠町のパカパカファーム産。当歳のセレクトセールでノーザンファームに3100万円で落札された。

元を正せば非社台の馬。社台のエリート馬とは違った。


激しい気性をもつディープブリランテだが、そこには「成り上がり」精神も含まれていた。


近親にバブルガムフェロー(天皇賞馬)、ザッツザプレンティ(菊花賞馬)、ショウナンパントル(阪神JF)とG1馬をもつ母系。

さらに超える良血をもつ社台のエリートたち。混じって育成された。


負けるものかッ!

エリート集団に、突然に組み入れられた転入生。


それが、ディープブリランテだった。



ディープ=深い、ブリランテ=輝き。




2011年、10月。新馬デビュー、単勝1.2倍。2着エボニーナイトを5馬身ちぎった。

11月。東京スポーツ杯2歳S。雨中決戦、2着フジマサエンペラーを3馬身突き放した。



煌めき輝いた。

「怪物」評価も受けた。


だが、気性の激しさが表面化。




2012年。

2月。共同通信杯。東京芝1800m。

スタートから引っかかり、抑えきれぬ鞍上・岩田康誠はハナを切った。


直線、懸命に逃げ込みを図るが、3番手でブリランテ1頭をマークしていたゴールドシップに差し切られた。完敗2着。



3月。スプリングS。中山芝1800m。

前日までの雨で重馬場。柔らかい馬場は脚元をとられる。気を使うことが、かかる要素を取り去ってしまう。

はずだった。

だが、ブリランテはそれでも引っかかった。ムリやりになんとか岩田は抑え込んだ。やっと落ち着いたのは向こう正面。


外から上り、直線抜け出したブリランテ。

影のようにマークしていた馬がいた。


グランデッツァ。


しばらく並んで、叩き合ったが、ブリランテには余力がなかった。

前半の引っかかりが堪えた。


ゴール前で一気に突き放された。完敗2着。




ゴールドシップに、グランデッツァに完敗したディープブリランテ。


引っかかり、前半に脚を溜められないブリランテ。


皐月賞は、もっと厳しいか?



激しい気性が消えぬ限り、勝つことは叶わぬか?



否、否否否。



激しすぎる中にある、荒ぶる心。


競走馬として、頂点を立つために必要な心。荒ぶる魂。



故郷の牧場を後にして、やってきたノーザンファーム。


右も左もエリート揃いのなかで、培った負けじ魂、荒ぶる心。



あればこそ、ゴールドシップに負けても、グランデッツァに差されても、2着に凌いだ。



丸い、つぶらな瞳が鋭くなり、


奥にある輝きが増したとき、




ディープブリランテの荒ぶる心が、全身を包む。




ディープブリランテ。




深き輝きは、




耐えて、耐えて、輝く。




荒ぶる心を、解き放て!