(やばい、やばい)

僕、警備員室の横にある部屋に連れて行かれた。

なんか、取り調べのよう。

この前の騒ぎを起こしたのが僕であることをバレたような、僕。

だって、今回の騒ぎの相手のおばあさんと孫はホールでさよなら、僕だけがここにいる。

警備員室に繋がるドアの前で、年輩の警備員が若い警備員とヒソヒソ、若い警備員が出て行った。誰かを呼びに行ったか? 

おもむろに席に着く年輩の警備員、最上司のよう。迫力ある。

僕、ビビりっぱなし。でも、何もできない。だって、僕の中に悪魔女。

平然と、部屋中眺めまわす余裕。

天さん、どこ行った?


「失礼ですが、きょうはどなたかお知り合いの披露宴でご来場ですか?」

丁寧だが、完全に詰問。

「・・・・・・・・。」

無言、僕、いや、僕の中の悪魔女。

「お客様、ここは警察じゃないんで、別に咎めようとかそういうんじゃないんですよ」

「だったら、こんなとこ連れてくるなよ」

「事情をお聞きするだけですから。早くお答えいただければ、すぐにでも」


そこへ天さん、入ってきた。もちろん、半透明。他の誰にも見えない。

〈あかん、この前の時のボーイ呼びに行ってるわ。早よ、逃げよ〉

〈わかった〉

僕の中の悪魔女、気をうかがった。

天さん、外に通じるドアの前、いつでも開ける準備。壁抜けは悪魔女、僕を置いてけぼりにする危険があるから。


僕の無言に、警備員、ちょい下を向いた瞬間とらえて悪魔女ダッシュ! 天さんドア開ける。

連携プレー。だが、警備員、横をすり抜ける悪魔女、僕に飛びついた。左手がかろうじて僕の胸のあたりをおさえた。

「いやぁーん!」

悪魔女の悲鳴?ともなんともつかぬ声。

僕もびっくり、警備員、もっとビックリ!

ダッシュの速さでわずかに数㎝、悪魔女、僕から飛び出しかけていた。

警備員、思いっ切り悪魔女の胸つかんだようだ。


ただ、ア然と自分の手のひら見つめる警備員。

悪魔女、気を取り直して、ダッシュ、すばやくドアの向こう、そのまま走り去る。


ダメだよー、悪魔女。



僕、置いてけぼり。



頭かかえるのは、ドアを開けて待っていた天さん。


(つづく)