昭和45年 夏


大阪・松屋町(まっちゃまち)筋。問屋街に花火を買いに行くオレ達。タナカ、イマニシ、オレの3人。ほぼ卸し値段で安く売ってくれるので、大量買いなら絶対ここだ。

「おお、あるあるロケット花火、うあー、種類いっぱい!」

はしゃぎまくるオレ達。ガキだぜ。


ダンボール箱いっぱい!

手あたり次第に放り込んだオレ、イマニシ。

「これいらん、いらん」と言っては排除するタナカ。サスガ、会計。


それでも、飽きずに放り込むオレ、イマニシ。いたちごっこ。


結局、ダンボール2箱。買いも買ったり3万円分の花火。


どうする、金。心配無用、軍師タナカの腕の冴え。花火、飲み物代で一人1000円、40人も集まりゃペーできる。食い物欲しけりゃ、各自持って来い方式。ユキには悪いが事情を親に話して前借りしたタナカ、無視できる親はいねぇ。


重い、想い、重いダンボール箱。花火、危険物、地下鉄乗せられない。そんなイイコじゃねぇよ、オレ達。こけてブチ撒かない限り、バレねぇ。そのために持って行ったんだ、『紀州みかん』の空ダンボール。



イトウ、ニシダは電話掛けまくりの参加者募集。考えすぎニシダの電話件数にやや不安。ゼッタイ集めよ! 最低40人。タナカの至上命令。



無事、花火購入運搬、オレの使命遂行。夕方、家にたどり着く。

電話、電話、電話…………、朝、出かける前から考えていたこと、思っていたこと。電話、


かけてみよう。


彼女も同窓生。



勇気だ、オレ。


ジーコ、ジーコ、ジーコ………。

クソッ、たまんねぇ、緊張感。何、ドキドキしてんだよ。

「はい、ミネです」 おっ、彼女だ!

「あ、オレ、タカスギ」

「あっ、タカスギ君、お久しぶりぃ、元気だった?」



よかったぁ、いつもの彼女。しかも、家には彼女だけ。気兼ねなく、いつものオレでしゃべれた。例のオカダクンの耳鳴りはしない。考えないことにした。

ユキのことがあったから、

いまの自分を正直に生きようと思う。

オカダが誰であれ、どうでもいい。



そう思った。



彼女にはユキのことはふせておいた。さすがに、知る辛さはオレ達だけでいいような気がした。快く参加を承諾してくれた彼女。「花火が楽しみ」って言ってくれた。「会うのが楽しみ」とも。


早く、来い来い、花火大会。