my  favorite....KEBARI, guitar and so on-マスター英文法


英語を読む上で、理解していなければならない事項は数多くあります。「分詞構文」は大学受験英語もそうですが、CNN on web、英字新聞などを読んでいると「よく使われてる」どころか、普通に、たっぷりと使われています。
今回は、分詞構文の「意味上の主語」の話。

「分詞が接続詞と動詞の働きを兼ね副詞句を作る場合を分詞構文と呼ぶ」

「分詞構文の意味上の主語文の主語一致する。一致しない場合は意味上の主語を明示した形(=独立分詞構文)にしなければならない」

「分詞構文の意味上の主語は文の主語と一致しなければならないが、そうでない分詞構文は懸垂分詞または遊離分詞とされ、(1)主語を一致させる、(2)独立分詞構文にする、(3)接続詞を用いた節の形式にするか、などの方法によって訂正することができる」

「分詞構文は文脈によりいろいろな意味関係を表わすが、大別すれば、時・理由・付帯状況・譲歩・条件などを表わし、文意に応じて適当な接続詞を用いて節の形式に書き換えられる場合が多い」
(新マスター英文法・全面改訂版・中原道喜著より引用)
    

どの英文法書にも、だいたい以上のような記述があります。ただ、上記「懸垂分詞」(遊離分詞)は、「英文法解説(江川泰一郎著:金子書房)」や「ロイヤル英文法(旺文社)」では「文法的には誤りとされる」旨の記述があり、正用法とは認められていない旨が書いてあります。(上記「英文法解説」では「ずっこけ分詞」と命名されて「(実際には時おり使われるが)文法的には誤り」との記述があります。)

例文:英文法解説(江川泰一郎著:金子書房)より引用

The typhoon hit the city, causing(=and caused) great damage.
台風が市を襲い、大被害を与えた(付帯状況)

Her aunt having left the room, he declared his passionate love for Helen.
叔母さんが部屋を出たので、彼はヘレンへの熱烈な恋を打ち明けた。(独立分詞構文)

Looking out of the window, the mountains were beautiful.
窓から外を眺めると、山は美しかった。(ずっこけ分詞)
(= I saw the mountains were beautiful)

Being not yet fully grown, his trousers were too long.
まだすっかり体ができていないので、ズボンが長すぎた。(ずっこけ分詞) (=As he was not yet fully grown)

では、次の英文をみていきましょう。

BEIJING (Reuters)

Chinese President Hu Jintao has warned his country's competitiveness and trade strength were being threatened by a sustained global economic downturn, testing the grip of the ruling Communist Party.


ロイター電の記事の抜粋です。太字部分が分詞構文です。実はこの英文は翻訳トライアルの英文です。力試しに訳してみました。
(試訳)
胡錦濤 中国国家主席は、中国の競争力と貿易の優位性が継続する世界的な不況の脅威にさらされていると警告を発して中国共産党の統制力を検証した。


分詞構文の原則どおり、文の主語(胡錦濤 中国国家主席)と意味上の主語を一致させて、付帯状況的に訳しました。模範訳例は次です。

(訳例)
中国共産党の胡錦濤総書記(国家主席)は、世界経済の減速が続く中、中国の国際市場での競争力と貿易の優位性が弱まってきており党の執政能力が問われているとの厳しい認識を示した。


訳例が、意味上の主語にしていると考えられるのは
「a sustained global economic downturn」(継続している世界経済の減速)
か、又は、「it」(漠然とした状況)です。
(a sustained global economic downturn tests the grip of the ruling Communist Party.又は、it tests the grip of the ruling Communist Party.)

仮に「a sustained global economic downturn(継続している世界経済の減速)」を意味上の主語だとすると、②「分詞構文の意味上の主語文の主語一致する」という原則に反します。
このセンテンスでの文の主語は、Chinese President Hu Jintao、又は、従属節中のhis country's competitiveness and trade strengthです。
(従属節が受動態をとっていることから、能動態 a sustained global economic downturn were threatening his country's competitiveness and trade strength.とし
a sustained global economic downturn(継続している世界経済の減速)を文の主語として②の原則に反していないと考えることもできますが、このような英文法上のルールはおそらくありません。
ここでの上記問題点は、次のパラグラフでも同様に表れています。

He issued the warning at a Saturday meeting of the Politburo, the party's 25-member inner coucil, which dwelt on the challenges China faces as export demand drop, forcing companies to shed workers, the official Xinhua News Agency reported late that day.

ここでも、forcing以下の分詞構文の意味上の主語に悩み、関係代名詞whichの先行詞(主語)を意味上の主語とし、次のように訳してみました。
(試訳)
この発言は、25人のメンバーからなる党内部委員会、すなわち中国共産党中央政治局委員の土曜日の集会でなされたもので、この集会では中国が直面している輸出需要の低下のような難問を議論し、企業の余剰人員の解雇を正面から見据えた、と中国国営新華社はその日の最新のニュースで伝えた。


A Saturday meeting of the Politburo dwelt on the challenges China faces as export demand drop and forced companies to shed workers.

このように解釈したわけです。dwell on, forceともに、このような訳は可能なのですが、forceはこの文からは、SVOC(SVO to do)型で訳す方が一般的だと思いましたが、意味上の主語(a Saturday meeting of the Politburo)にこだわるあまり、押しつける→正面から向き合う、という意訳をしました。
さて、模範訳例を見てみましょう。

(訳例)
胡氏は党政治局(25名の委員で構成される党中央指導部)の勉強会の場で、中央経済を支えてきた輸出の鈍化により、国内企業が人員削減せざるを得ない状況にあるなど、中国が直面している課題について詳しく述べた。


関係代名詞whichの先行詞をthe warningにして、それがdewlt on(詳しく述べた)したものであるという解釈から意訳しています。これは、この文が胡氏の発言に焦点をあてるという趣旨からすれば全くそのとおりだと考えます。

分詞構文の意味上の主語は、訳例からはexport demand dropのように伺えます。しかし、上記パラグラフでも述べたように②の原則に反しています。

仮に、これらのパラグラフから「,」がなく、それぞれ
(1) by a sustained global economic downturn testing the grip of the ruling Communist Party.
(2) export demand drop forcing companies to shed workers,
であるならば、現在分詞の用法として理解できます。
しかし、句読法についても調べましたが、「,」がある以上分詞構文と解する他にはないようです。

さて、ここまで考えてみると、いずれのパラグラフについても「分詞構文の意味上の主語はないのではないか、又は英文上明記されていない一般的な状況」という結論に至ります。日本語の訳例にも明確には出ていません。受験生の長男にも意見を求めると、いずれのパラグラフも「状況のitの省略ではないか?」という考えです。

実は、私(訳者の側)には大前提があります。それは、

(ア)ロイター社のジャーナリストが、文法的な誤り(「ずっこけ分詞」)を犯すはずがない。

(イ)英文法書の記述は絶対である。


以下のことは、一般的に言われていることです。

英語を母国語とする人は、文法に厳格です。また英語及び欧米の英語学者も文法(ルール)に厳格です。日本語で書かれた英文法書、日本人の英語学者も当然、同様に厳格です。
したがって、欧米英語学者は新語、新表現、又は、今まで正用法とは認められていない表現がメディアで多用されても、短期間のうちに正しいものとして、文法書、辞書に掲載されることはまれ(正用法と認められるまでに年月をかけ、辞書や文法書に掲載するほど成熟したかを検証する)です。
そのため、日本の英和辞典や英文法書が改訂される際には、欧米有名大学の設置する(オックスフォード、ケンブリッジ大学など)言語コーパスや最新版OALDなどの英英辞典、欧米の文法書などで検証した上で改訂版が作成されるそうです。
このような状況下では、現在一般に使用され、英語圏メディアで認知されてる言語状況と、辞書や文法書編纂上のタイムラグが生じます。

今回の分詞構文の問題がそのことを反映したものだとは断定できませんが、「遠からず」と言えるのではないのでしょうか?
江川先生の「英文法解説」には以下の記述があります。

『(ずっこけ分詞は)米英の語法関係の本には必ず取り上げられていて、使用を慎むようにとの注意が出ている。またその一方では、意味に誤解を生じない限り頭から誤用と決めつけない文法家もいる(Evans,Usage,p.354)
いわゆる慣用句でなくても、分詞の意味上の主語が「一般の人々」と考えられる場合には、さして抵抗が感じられない。例えば、次のような例である。

This kind of work cannot be done sitting down.

この種の仕事は座ったままではできません。
Facing north, there is a large mountain on the right.
北を向くと、右手に大きな山が見あります。


皆さんはどう考えますか?
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最後のパラグラフと私の試訳を掲載しておきます。ここでの解釈では、模範訳例との齟齬(そご)はありませんでした。

His blunt wards suggested China sees no quick end to worsening conditions, which last week led a state think tank to forecast annual growth would slow to 8 percent this quarter from 9 percent in the third quarter, skidding close to the minimum 7 percent officials see as safe for maintaining social stability.

(試訳)
胡錦濤主席の率直な発言は、悪化する経済状態はすぐに終わるものではないと中国政府が考えていることを示唆しており、この経済状態を受けて、先週中国の政府系シンクタンクは、年間成長率が第3四半期の9パーセントから今期第4四半期には8パーセントに低下し、社会の安定を維持するのに当局が安全値とみている最低限の7パーセントに急激に近づいていると予測した。