次のような例文を見つけました。

The final report of the investgation is expected to absolve the campany of any wrongdoing in the stock scandal.
捜査の最終報告では、株の不祥事におけるその会社の不正行為は、無罪となると予想されている。』

ここで、absolveは他動詞として、~に無罪を宣告する、という訳語が充てられています。
英文法的には何ら間違いはありませんし、訳語も日本語の語法として間違いはありません。

でも、司法制度という観点からは、おかしいですよね。
およそ国家の体裁を有しているなら、有罪、無罪となるのは、捜査の段階ではなく、司法判断です。
つまり、法廷が判決を下すものです。

absolveという単語は、あまりメジャーな単語ではなく、
社会人、大学教養課程以上のランクに位置付けられている単語です。

プログレッシブ英和(4版)、ウィズダム英和(2版)、ランダムハウス(2版)、研究社英和大辞典(5版)OALD(7th)にも掲載されています。
「無罪を言い渡す」の訳語はウィズダム英和を除き、掲載されていますが、
「形式的、法律用語」の表記があります。

したがって、

『捜査の最終報告では、株の不祥事におけるその会社の不正行為は、潔白(シロ)と予想されている。』

という意味で、「無罪となる」と表現した(翻訳した)としても、このような、法律用語というフォーマルな言葉を「シロ」又は「潔白」という、ややくだけた、又は一般的な意味として捉えるのは無理があると思います。

この例文と訳語は、某出版社の上級英語の資格試験の必須単語の例文として掲載されているものです。
absolveを例文とともに示すならば、端的に、

The court absolved her of all charges.
裁判所は、彼女に関する容疑すべてに無罪を言い渡した。
~ランダムハウス英和大辞典(第2版)~

とする方が適切だと思います。

この本の例文チェックは、W大の英語関連会社?のスタッフが実施している旨が掲載されています。
基本的な法制度に疎いか、見落としかのどちらかでしょう。

ちなみに、法律英語でも、「有罪」「無罪」の表現は、

plead not guilty to a crime
無罪を申し立てる

というように、
guiltyを使って表現する方が普通です。

例文