私はヘドロの中から美しい花を咲かせる「蓮」が大好きです。それは私が以前に体験した蓮の湖の思い出もありますが、やはりインド哲学(仏教)などで例えとして使われる「蓮」の意味が好きだからです。
ヘドロは人間の住む不浄でめちゃくちゃな世界のこと。そこから咲く蓮の花は悟りを得て開眼した菩薩や仏の姿を象徴しています。性格には菩薩はまだ勉強中の段階、仏が完全なる存在とされています。
反対に、そのような混沌とした世界からこそ綺麗な花(真実、悟り)は生まれるのです。ヘドロは美しい花を咲かせるための肥やしでもあるのです。まあ、私の人生はこうでも考えない限りやり切れないとも言えます
。ですから、私は仕事に関するシンボルマークとしても「蓮」をよく使いますし、蓮に関連した物には無意識に反応してしまうのです。そして、最近もその出会いがありました。

蓮の花に乗る発想も素晴らしいですし、童の表情も可愛らしい。このような絵を描ける人はそれなりの心を持っているはずだと感じました。
調べると蓮がテーマの絵は他にもあります。

そして、描く技法が特殊であることに気づきました。立体的で、光沢があるのです。最近の3D樹脂加工のようにも見えます。それもそのはず、焼き物なのです。何度も焼き入れを行いながら色付けをするという、独特な方法なのでした。
運良く、ご本人の展覧会が巡回して来るということで、心待ちにしていました。

前後に予定が詰まっていたために、その合間を縫って見に行きました。普段は人気があまりない場所ですが、会場では外の看板前で撮影をしている人もいました。代表的な大作から、販売が可能な作品までが展示されていました。

画像では色や輝きが伝わりませんが、実際には貝の殻のように虹色に輝いています。この輝きは何度も焼くことによって偶然に出来上がるものであり、同じものはないそうです。

このような仏教やアジア思想に基づいた壁画や装飾は東洋の神社仏閣などで見られます。中国や台湾の故宮博物館にも優れた工芸品は色々ありますが、何かが違うのです。例えば仏教などの知識がなくても、思わず引き込まれる力があるように感じます。

そこに何か精神性を感じるところが作者の力量なのでしょう。
以前に仏師とお話しする機会がありましたが、その時には「私は芸術家ではありませんから、作品を彫る際には潔斎をして仏が宿るように仕事をしています」とおっしゃっていました。

そのような精神性について作者の草場先生ともお話をしたかったのですが、時間切れでした。

これはお釈迦様の次に仏陀になることが約束されている弥勒菩薩像だそうです。慈愛の菩薩とも言われ、お釈迦様の死後56億7千万年後の未来にこの世界に現われ悟りを開き、多くの人々を救済するとされています。

殺伐とした現代社会に慈愛の心はとても大切だと思います。
作者や展示に関する詳細は
草場さんのアトリエ公式サイトをご覧ください。