私は子供の頃の自宅の半分が純和風建築でしたので思い出があります。夕食が終わると祖父母が和室の四隅に紐を吊り始め、蚊帳を設営するシーンを楽しみにしていました。
つりあがると四角い空間が出来上がるのですが、そこの中が秘密基地のように感じたのです。最近はホームセンターなどでもテントが安く買えますから、野外のバーベキューなどで目にしますが、昔の一般家庭ではテントを使う機会もほとんどありませんでした。なので、テントみたいな空間が楽しかったのです。
ずっと中で遊んでいると祖父母は寝られませんから、さぞかし迷惑だったことでしょう。

歴史は古く、エジプトのクレオパトラも使用していたそうです。日本へは中国経由で奈良時代に入って来たそうです。当初は絹などを使用した高価な設備でしたが、後に麻を使用するようになり庶民にも普及したそうです。
蚊などの吸血害虫は不快なだけではなく、伝染病も運ぶので危険です。ですからジャングルや熱帯地方では身を守るためにも蚊帳が必需品です。
とは言うものの、蚊帳を使っている家庭は少なかったような気がします。値段のことよりも設営などの手間暇が嫌われたのでしょう。しかし、そうすると「寝ている時の蚊の襲来をどうやって防いでいたのだろう?」と思いました。最近の家であればエアコンもありますから空間を密閉することが可能ですが、昔はそのような設備はありません。

自分が住んでいた日本家屋を思い出すと、開けっぴろげの空間でした。蚊や野良猫も出入り自由だった記憶があります。
もしも襖や障子を締め切ってしまうと、風を通しませんから、暑苦しくて寝られないはずです。簾もありましたが、あれは虫よけと言うより、単なる目隠し的な役割です。

子供の頃を思い出すと、やはり仕方がないので手のひらでパチパチと蚊を殺しながら寝ていた気がします。寝る前にできるだけ蚊を排除しておいてから、網戸にして扇風機を回して寝ていたのだと記憶しています。
しかし、網戸も扇風機も無い時代はどうだったのか?考えただけで嫌になります。夜中に耳元で聞こえるプーンという音は本当に腹が立ちます。それが一晩中聞こえて来ることを考えると
気が狂いそうです。しかも電気や懐中電灯も無い時代であれば、夜中に蚊を殺すことだって大変です。そうすると蚊に刺されることを諦めていたか、暑さを我慢して締め切って寝ていたとしか考えられません。昔の気温は現代より低かったそうですが、今からは想像もできません。どうしていたのでしょうか?

昭和には蚊取り線香がありました。「蚊取り」と言いますが、実際には殺虫効果はなく、蚊が匂いを嫌がって寄り付かないだけです。しかし、こいつは効果はありますが、身体にも衣類にも匂いが付着してしまうのが不愉快でした。今でも普及していますが、その結果は同じです。進歩もあまりしないのに長寿の商品ですね

それと同時に化学薬品による殺虫剤も出回りました。しかし、本能的に匂いに危険を感じます。これはプロパンガスなどと同様に警告の為にわざと嫌な臭いをつけているそうです
。もしも、良い香りだと
大変なことですよ。
そして、当時発明された画期的な殺虫マシーンが電気の熱により殺虫成分を蒸発させるタイプでした。これはかなりいい香りなので安眠できます。初期型は殺虫成分をしみこませた青色のマットを電熱器の上に載せる方法でした。

一晩中熱を発しているため、取り扱いを間違えると火傷をします。
それが、最近はお洒落なものに進化しています。一見すると、小型のスピーカーみたいにも見えます。確かに香りも良い割に蚊もしっかり殺せるのですが、蚊が死ぬような成分を一晩中吸っていることにも違和感を感じます。説明では特定の生物にしか有毒とならない成分を使用しているとのことですが、そんなに都合がいい毒物が存在するのかという事もいまだに
半信半疑です。原子力発電にせよ、後から問題化するものは、大体が最初は「安全」だと言うものです


そうするとやはりアナログ的な方法が一番安全なのかとも思います。寝る前に蚊を駆除して、網戸やエアコンを使用し、安眠できる環境を作って寝ればよいのです。
網戸は昔の蚊帳と同じ状態を作ってくれますので、風通しをよくすれば、都市部以外はエアコンなしでも十分快適です。
それでも、たまに蚊が侵入することがあります。そういう場合はやはり手のひらで叩きます。しかし、この方法では捕獲する確率が非常に悪い

特に寝ている時などは、プーンという音を聞いてやみくもに叩いても、ほとんど捕まりません。そればかりか、自分の身体を叩いているうちに腹が立って来て完全に目が覚めてしまいます

これが本当に頭に来ます

一番効率が良く、化学物質を使用しないアナログの方法を色々考えた末、掃除機で吸い取ってしまう方法を思いつきました
。念のために、後から室外で殺虫剤も吸わせると完璧に抹殺できます。何箇所も刺した憎い奴の場合には、掃除機で吸わせた後にトイレなどの隠れる場所が無い狭い空間でフィルター部分を開けて、フラフラと飛び出してきたところを手のひらで仕留めると気が晴れます

途上国にいる時は、高い天井にとまっている蚊を殺すのに苦労しました。靴下を丸めて下から投げていましたが、なかなか当たりません。ヤモリに食べてもらおうと思って、外からヤモリを十匹くらい捕まえて部屋に放して寝たこともありましたが、朝には全部いなくなってしまいますから、毎日同じ事をするのは大変でした。
こういうアホなことを色々とやっていましたが、ある時から秘密兵器を使うようになりました。それが蚊取りラケットです。友だちから教わったのがきっかけでした。

テニスやバトミントンのラケットと見た目は変わりませんが、網が鉄線になっており、スイッチを入れると高圧電流
が流れます。うっかり触ってしまったことがありますが、かなり痛いです。屋外に施設などで軒下に紫色の照明がぶら下がっていることがあります。バチバチをいう火花が散っているはずです。紫色に反応する虫が近寄ると、明かりの周囲に張り巡らされた金属製の網に高圧電流が流れて撃退するシステムです。あれが本格的な電撃殺虫機ですが、これを小型化したものが蚊取りラケットなのです。

これを蚊に向かって振ると、ラケットにぶつかった蚊の身体に電流が流れて殺せるのです。手のひらに比べれば表面積が大きいので捕獲率も格段にアップします。外などで、身体の周囲に集まった蚊を一斉に駆除したい時にも抜群の効果を発揮するのでした

どうして、ここまで蚊を嫌うのかと言えば、どこに行っても真っ先に一番多く刺されるからです

子供は刺されるとよく言いますが、いい年のはずなのに、今でも子供といても変わりなく刺されます。体温が高いとか汗をかきやすいとか思いつく原因はありますが、そんなもの今から治せません

殺生を禁じる高僧などは「なんという心の狭いお人じゃのう」などとおっしゃるかもしれませんが、あの痒さと不快さには我慢ができませんね。
例えば、私が映画に登場するような拷問を受けた場合、「蚊の拷問」があれば、あっと言う間にギブアップすると思います。1000匹位の蚊がいる部屋に放り込んだら終わりです。痛みにはかなり耐えますが、痒いのはダメです
想像しただけで痒くなって来ます。