伊豆紀行2・伊豆の踊子 | 雲水・ISAのブログ

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日本は神の国
仁術師

ここ数日の強風は凄いです。夜の高速道路は全線強風で、私の400㎏を超える重量級バイクでもふらふらしますし、ヘルメットのシールド(前面の透明プラスチック部分)が取れそうになりました。もちろんバタつき防止のストラップを付けていたのですが、それも外れてしまうほどの振動で、何度も路肩に緊急停車していました。ストラップの脱落対策を考えないとダメですね。

深夜の時間帯なので車は少ないのが幸いでしたが、あまりしたくない経験です。

昨日は雨交じりですが、傘など役に立ちませんね。外に出たくないので、先日のブログの続きでも書くことにしました。

先日、伊豆のからくり人形美術館を参観して来ましたが、今公開中の「ヒューゴの不思議な発明」という映画にもからくり人形が登場します。前回のブログでご紹介した動画でも文字や絵を描いていましたが、この映画の中では、人形が描いた絵がストーリーの大事な役目を果たしています。



しかし、この映画は私の予想とは異なり、明るく楽しめるファンタジーではなく、とてもしんみりとした内容でした。アカデミー賞を獲れるほどの深みは無かった気がします。

伊豆は富士山から近いこともあり、温泉がたくさんあります。温暖な気候で、山と海の両方が楽しめるので、渋滞さえなければ理想的な場所です。この休火山は火口を利用してアーチェリーができるようになっています。夏は緑色の綺麗な円錐形が美しく、恐ろしい火山であることを忘れてしまいます。

$雲水・ISAのブログ-大室山

しかし、温泉が火山活動とも関係があり、その理由が地下の移動するプレートと深く関わっていることを思い出すと、箱根や伊豆地方は地質学的にとても危険な場所だとも言えますね。実際に熱海の地震直後は誰も近寄らなくなり、そのせいで倒産した観光関連企業が多数ありました。

そもそも日本列島そのものが地震や火山活動の巣みたいなものとも言えるそうです。自然は人間に恵みをもたらす一方で、残酷な一面もあります。

高い山や河川、滝などは大地が激しく動いた結果です。それらができた過程には地震や火山の噴火などもあったのでしょうが、観光しながらそこまで考える人はなかなかいないでしょう。私自身、震災の衝撃を受けるまでは、普通に楽しんでいたのだと思います。しかし、最近は自然を単に楽しむだけではなく、畏敬の念もはらうようになりました。それは震災による教訓と言うか、お蔭様だという感じがします。

伊豆の滝と言えば石川さゆりさんの演歌「天城越え」に出て来る浄蓮の滝がよく知られています。伊豆半島を縦断して、修善寺から下田に抜ける天城峠に至る街道では最大らしいです。元々は秘境で、人が立ち入ることは難しかったそうですが、明治末期に湯ヶ島の旅館店主らの私費で観光開発したそうです。

雲水・ISAのブログ-浄蓮の滝

水量が多いので、滝つぼに落ちる音に迫力があります。
ちなみに天城山も火山で、その寄生火山である鉢窪山の溶岩によってできた滝だそうです。
昔は上中下の三滝ありましたが、中滝は地震で無くなってしまったそうです。
下滝の近くに浄蓮寺があったので、「浄蓮の滝」と呼ぶようになったそうでした。

水が澄んでいて冷たいため、ワサビの栽培が盛んです。ワサビせんべい、ワサビ蕎麦、ワサビビールなど色々なお土産がありました。

雲水・ISAのブログ-ワサビ田

川端康成の名作「伊豆の踊子」の舞台もこの地が舞台になっています。

雲水・ISAのブログ-伊豆の踊子と書生

昭和元年に発表され、その後、田中絹代さん、美空ひばりさん、鰐淵春子さん、吉永小百合さん、内藤洋子さん、山口百恵さんなど、当時の人気女優さんたちを主演に迎えて何本も映画化されています。動画で予告編が見られるのは、この山口百恵さん主演作品だけのようです。



そのお蔭もあり、伊豆は本作品発表後に注目されるようになります。その後、昭和初期に天皇がいらっしゃったこともあり、観光地化が進められ、浄蓮の滝も今では日本名滝100選の一つになっています。

雲水・ISAのブログ-河津一の滝

ここからさらに下田方面へ下ると、河津七滝があります。天城峠を境として、水系が異なります。浄蓮の滝は修善寺方面へ流れる狩野川で、反対側の河津方面へ流れるのが、河津川です。

一の滝は晴れていたので滝壺の青色が綺麗でした。大滝は浄蓮の滝と同規模の美しく迫力のある滝です。個人的には浄蓮の滝よりこちらの方が好きです。

当時は海外旅行など夢の話で、新婚旅行が伊豆だったと言う話をよく聞きます。この天城峠を越える際に通るのが「伊豆の踊子」にも登場する天城トンネルです。石造りの重要文化財です。

雲水・ISAのブログ-旧天城トンネル河津出口

トンネル内部は車がすれ違えるほどの幅は無いので、観光客は出口付近の駐車場に車を停めて歩きます。周辺は未舗装なので、悪天候やバイクでの通行は要注意です。

内部には明るい照明も無く、風が吹き抜けるために、歩いている途中で身の危険を感じるほどの凄い寒さでした。
入口に凍結や氷柱に関する警告がありましたが、納得です。

雲水・ISAのブログ-天城トンネル河津外

全長は400m以上ありますが、余りの寒さに、途中で引き返しました。手や顔が寒さで麻痺して来るほどで、驚きました。
昔はボンネットバスが通行していたそうです。

修善寺から河津に向かう峠道はくねくねと曲がった山道が続きます。伊豆の踊子の旅芸人一行と19歳の川端康成が出会ったのも、その道の途中にあった休憩茶屋でした。今は道の駅やお土産屋さんがあります。駐車場には河津桜が満開でした。

雲水・ISAのブログ-峠の河津桜

峠を下ると河津川沿いに湯ケ野温泉があります。「伊豆の踊子」によると、川端康成はランクが上の福田屋旅館に泊まり、旅芸人一行はランクが下の旅館に泊まりました。

雲水・ISAのブログ-福田屋1

当時からの雰囲気を残している旅館で、映画の撮影に登場する風景や部屋、風呂もそのままです。

これは、川端康成と旅芸人の座長が一緒に入った風呂です。
100年以上前のものです。地下へ階段を下りて入浴します。
泉質はナトリウム・カルシウム硫酸塩泉。お湯の温度は高め、透明で、匂いは薄目でした。

$雲水・ISAのブログ-萱風呂

川端康成が旅芸人を招待したので、福田屋で入浴できましたが、当時の社会では彼らのような職業は蔑まされていたため、高級旅館には営業以外では出入りができなかったようです。

小説では細かく言及していませんが、旅芸人とは現在の温泉芸者やコンパニオンみたいな存在で、あちこちの湯治場に出稼ぎに回っていたのです。時には春を売る営業もあったため、下級の職業だと言われていました。

性病などの心配があるので、一般人は一緒に入浴することを嫌いました。映画の中でも梅毒で死んでいく同郷の少女が登場します。その少女のためにお守りをお土産に買って来た踊り子が健気でした。

そういう彼女たちは、誰でも入れる共同浴場を使いました。

中央の三階建ての日本家屋の一階部分が現在の公衆浴場です。昔は露天風呂だったそうです。現在は地元民と湯ケ野温泉の宿泊客以外は入れません。

雲水・ISAのブログ-公衆浴場

「伊豆の踊子」の中の有名なシーンに、天真爛漫な踊り子が川向こうの福田屋にいる川端康成に全裸のままで手を振る場面があります。

「彼に指ざされて、私は川向うの共同湯の方を見た。湯気の中に七八人の裸体がぼんやり浮んでいた。
 仄暗い湯殿の奥から、突然裸の女が走り出して来たかと思うと、脱衣場の突鼻に川岸へ飛び下りそうな恰好で立ち、両手を一ぱいに伸ばして何か叫んでいる。手拭いもない真裸だ。それが踊り子だった。若桐のように足のよく伸びた白い裸身を眺めて、私は心に清水を感じ、ほうっと深い息を吐いてから、ことこと笑った。子供なんだ。私達を見つけた喜びで真裸のまま日の光の中に飛び出し、爪先で背一ぱいに伸び上がる程に子供なんだ。私は朗らかな喜びでことことと笑い続けた。頭が拭われたように澄んで来た。微笑がいつまでもとまらなかった。」

そこで、共同浴場前から踊り子の視線になって福田屋を見てみました。踊り子から見た福田屋はこう見えていたはずです。庭に咲いている河津桜が綺麗です。
19歳の川端康成が泊まった部屋は川に突き出している二階部分です。

雲水・ISAのブログ-公衆浴場からの福田屋

現在の女将さんは当時の女将のお嬢様だそうです。ご高齢ですがお元気で、当時のお話をして下さいます。ご本人は当時から店を手伝っていたそうですが、川端康成という認識は無く、学生客の一人だと思っていたそうです。

直筆の原稿
雲水・ISAのブログ-川端康成原稿

当時人気があった女性を主役に何度か映画化されています。歴代の主演女優達のパネル(修善寺湯本館)以外は福田屋さんの展示資料です。関係者のサイン入り色紙と写真が貴重です。

雲水・ISAのブログ-踊り子・歴代女優達

恋の花咲く 伊豆の踊子(1933年、松竹、五所平之助監督、田中絹代・大日方傳主演、白黒・サイレント映画)…初の映画化作品。
雲水・ISAのブログ-恋の花咲く

伊豆の踊子(1954年、松竹、野村芳太郎監督、美空ひばり・石濱朗主演、白黒映画)
雲水・ISAのブログ-美空ひばりさん

伊豆の踊子(1960年、松竹、川頭義郎監督、鰐淵晴子・津川雅彦主演、カラー映画)
雲水・ISAのブログ-鰐淵春子さん

伊豆の踊子(1963年、日活、西河克己監督、吉永小百合・高橋英樹主演、カラー映画)
雲水・ISAのブログ-吉永小百合さん

伊豆の踊子(1967年、東宝、恩地日出夫監督、内藤洋子・黒沢年男主演、カラー映画)
$雲水・ISAのブログ-内藤洋子さん2

伊豆の踊子(1974年、東宝、西河克己監督、山口百恵・三浦友和主演、カラー映画)
雲水・ISAのブログ-山口百恵さん

テレビドラマとしてはあのキムタクも主演していたようです。しかし、私のキャスティングならクサナギさんか稲垣さんにしますね。書生役は二枚目よりも、ちょっと陰気な感じがする人の方が合うと思うのです。

TVドラマ伊豆の踊子(1993年、TX、早勢美里・木村拓哉主演)
$雲水・ISAのブログ-キムタク

私が想像する天真爛漫な踊り子のイメージとしては内藤さん、吉永さん、山口さんかなあ。

伊豆の踊子にちなんだ記念碑や銅像は吉永さんの時代に多く作られたようで、川端康成さんとの記念写真も多かったような気がします。知的な可愛らしさがありますね。

$雲水・ISAのブログ-吉永さん&川端さん

福田屋さんの庭にも踊子像がありましたが、誰をイメージして作ったのでしょうかね?

雲水・ISAのブログ-庭の踊子像