夢小説「小人」 | 銀のマント

夢小説「小人」




図書館でルネサンス美術史の本を探していた。
美術書のコーナーにいくと、ぼくの腰のあたりまでしかない小人が、手の届かない棚の上にある本を取ろうとしてジャンプしている。
それでも手がとどかない。
取ろうとしているのは「ルネサンス美術館」という分厚い画集のようだ。以前借りたことがあった。
「この本ですか」
本を取ってやると、小人は礼を言い、喜んだ。
分厚く重い本なので運んでやることにした。
借りたいというので、貸し出しカウンターに行く。
手続きをして、小人はその画集を借りることができた。
ついでなので、途中まで持ってやることにした。
図書館は、街でいちばん大きな公園のなかにあり、外に出て、小人と公園の中を歩いた。
ベンチがあったので、小人とすわった。
膝の上に乗せたルネサンス美術の画集をなんとなくパラパラとやっていると、あるページに目がとまった。
中世の街頭の風景なのだが、群集の中に道化役者の格好をした小人がいて、それが目の前にいる小人にソックリだった。衣装は違うが、顔や体の雰囲気がそっくりだった。
まるで絵の中から抜け出してきたようだ・・・。
そんなぼくの内心を読んだかのように、小人はベンチから飛びおりると、
「親切にしてもらったお礼に、芸をお見せします」
といって、いきなりトンボ返りをしてみせた。
それから、実にかるい身のこなしで、空中で何度も回転してみせたり、ベンチの背の部分につかまって逆立ちをしてみせたりした。
逆立ちの姿勢から、ポンと、空中に大きく飛ぶと、そのまま消えてしまった。
「消えた・・・・」
ぼくはキツネに化かされたような気持ちで、小人が消えたあたりの空間をぼんやりと眺めた。
「何だったのだろう・・・・」
それから、膝の上にのっている「ルネサンス美術館」を図書館に戻すために立ち上がった。