■夢日記「ちょっと気味の悪い話」 | 銀のマント

「ちょっと気味の悪い話」



ブログでしりあった愛犬家のMさんの話。



犬に運動をさせるため、日課になっている近所の散歩に出かけた。
いつも立ち寄る公園にやってきた。ここが散歩の折り返しで、しばらくベンチで休んでから、家に戻るというのが、日課になっていた。
公園に入ると、犬の様子がおかしくなった。
前に進もうとするのだが、なぜか及び腰なのである。
何かその先に恐ろしいものでもあるかのように、身構えながら、少しずつ進んでいく。
その様子がふつうではない。
「アズキ、どうしたの」
声をかけると、犬はようやく自分をふるいたたせるかのように頭をあげ、小走りに駆け出した。
そしてある場所にくると、私の方を向いて、いきなり吠え始めた。
まわりの親子連れがびっくりして、いっせいに注目した。
私は恥ずかしくなって、犬の名を呼びながら、首輪につないだロープを引っ張った。
だが犬は、珍しく私の意志を無視して吠え続けた。
そのうち足元の地面を掘り始めた。こんなこと、初めてである。
公園にいた人たちが、犬のまわりに集まり始めた。
私は無理やりロープを引っ張って犬を引き摺りよせた。
「何か埋まってるんじゃないかな。そのまま掘らせてみれば」
誰かが言った。
「そうよ、確かめたほうがいいわ」
賛成する声があがり、わたしは面倒なことになったなと思いながら、犬の自由にさせた。
それから五分近く犬は穴を掘り続けた。
不意に犬の動きが止まり、ウー、ウーと唸りはじめた。
恐る恐る穴をのぞいてみると、茶筒のようなものが半分頭を覗かせていた。
実は私は、何か恐ろしいものが出てくるんじゃないかと思って気が気じゃなかった。
それが茶筒だったので、内心ホッとした。
だが茶筒をそのままにしておくわけにはいかない。
行きがかり上、私が取り出さなければいけないような雰囲気があった。
直接さわるのは気持ち悪いので、ハンカチをかけ、そのうえから掴んだ。
引っ張るといとも簡単に抜けた。
振るとカタカタと音がした。何か入っているようだ。
ふたたびイヤな想像が頭をかけめぐった。
勇気をふるいたたせて、蓋の部分をあけた。
中は空っぽだった。
たしかにカタカタという音がしたのに、何も入っていなかった。
どうなっているんだろう。
だが一応はなんでもなかったので、茶筒を元の場所に戻して、運動靴の足で泥を穴の中に戻し始めた。
まわりにいた人たちも協力してくれたので、穴はすぐに埋められた。
私は犬を連れて公園を出た。
しばらくあの公園には近づかない方がいいような気がした。
その晩、私は家の中でつまずいて、倒れた時に鋳物の置物の尖った部分で頭を切り、三針縫うケガをした。

頭だったので、思った以上に血が出て、タオルで傷を押さえて、救急車を呼ぼうかどうしようか迷っていると、カタカタと、茶筒を振った時の音がどこかで聞こえた。