■夢日記「見世物小屋」
大学を卒業して勤めていたころの会社の社員旅行らしい。
どこかの温泉街。
同僚や上役5,6人で通りをブラブラしている。
みやげ物屋や射的や輪投げといった店が続いている。
細い路地があり、小さな飲み屋やスナックがひしめいている。
まだ昼間なので、どの店も閉まっていて、ひっそりとしている。
同僚の一人が路地に入っていき、他のものもゾロゾロとついていく。
あいている店は一軒もなく、路地が終わって広い場所に出た。
周りを大きな旅館の塀に囲まれた空白のような場所。
そこに隠れるように見世物小屋が建っている。
蛇娘や人間ポンプやシャム双生児といったおどろおどろしい看板が並んでいる。
入口のところで赤ら顔の、髪の毛と眉毛がまっ白の小さな男が呼び込みをやっている。
近くに人はいないので、客が入っているとも思えなかった。
夜になると酔客で賑わうのだろうか。
ぼくは初めて目にする見世物小屋に入ってみたかった。
だが、
「やめようぜ、気味がわるい」
「ああ、悪趣味だ、こんなの」
同僚がいい、自然に引き返す形になってしまった。
夜、宴会になり、誰もが酔いはじめると、
ぼくは席を抜け出し、旅館を出た。
どうしても見世物小屋を覗いてみたかったのだ。
どうにか記憶に残っている路地をみつけ、
見世物小屋の建つ不思議な空間をめざした。
あちこちに立っている客引きの女をかわしながら、
ようやく路地をぬけた。
だがそこは真っ暗な空間で、見世物小屋などどこにもなかった。
路地に並ぶ店のひとつに入り、ビールを注文してから、
「そこの広場にあった見世物小屋、どうしたのかな」
と、店の女性に聞いてみた。
「見世物小屋ア?! 何よそれ」
そこの広場には何かができたことなどなかったし、見世物小屋など聞いた事もないと言う。
ぼくは苦いビールをひと口飲んだだけで店を出て、まだ宴会が続いている筈の旅館に戻った。