
これは貸本漫画版の「墓場鬼太郎」なんですが、なんだか、ビミョーに雰囲気がちがいます。作者名を見ると水木しげるセンセイではなく、竹内寛行という人になっています。
コスチュームは鬼太郎だし、目玉おやじだってちゃんといます。
これは一体どういうことだ!?
中国で発行された偽の鬼太郎なんでしょうか?
いえいえこれも立派な「墓場鬼太郎」なんです。
この「墓場の鬼太郎」は実は、水木センセイの後をうけて、竹内寛行という漫画家が出版社に依頼されて描いた鬼太郎なのです。そういう意味では、べつに贋作でもなんでもなくて、立派な公式の鬼太郎であったわけです。
当時の貸本の世界では、今では信じられないけど、水木センセイの人気がなく、売れないという理由で、鬼太郎を数冊描いたところで、クビになってしまったのだそうです。そのあとを受け継いだ竹内版鬼太郎は水木センセイよりも人気がでて、なんと19巻まで刊行されたそうです。
ぼくは19巻まで全巻揃っているのをデパートの古本市で見つけて買ったのですが、表紙だけはなかなか味のある仕上がりになっています。
でも中味はひどい。水木センセイとは、比較にならないくらいガサツで下手な絵です。こんなものがなんで、水木センセイより人気があったのか、まあ、ろくでもないものほど人気を呼ぶってよくありますから…悪貨が良貨を駆逐するってやつかもしれません。
ただ、おもしろいのは、当時の水木センセイの鬼太郎は、ダーティなキャラクターで、人間の敵であったりするのですが、この竹内版の鬼太郎は人間のために悪い妖怪と戦ったりするのです。そんなところが、人気の明暗を分けてしまったのかも知れませんね。
水木センセイも、そのへんを痛感したのか、雑誌に描くようになると、ダーティキャラをやめて、ミョーに品行方正な鬼太郎にしてしまったのでした。