前ブログ探訪で知った名古屋市南区の道徳公園にある「クジラ池噴水」がどうにも気になって、後追いで詳細調査してきました。

△絵葉書 道徳公園
△道徳公園(名古屋市南区道徳新町5丁目)
△道徳公園のクジラのクーちゃん(勝手に命名しました)
 
名古屋市南区にある道徳地区は、江戸時代後期まで「あゆち潟」と呼ばれる海でしたが、文化14年(1817)に鷲尾善吉が干拓を始めて、文政4年(1821)に「道徳前新田」として完成。尾張徳川家の小納戸所領となりました。
明治維新を経て、大正14年、東邦電力系の「名古屋桟橋倉庫」という不動産開発会社が尾張徳川家から、この「道徳前新田」一帯を購入。すぐに土地開発に取りかかります。
近くには愛知電気鉄道(現名鉄)の道徳駅ができて、雅趣にとんだ文化住宅や、25,600㎡に及ぶ都市公園、劇場、娯楽施設、温泉施設、料理屋、日用品市場を備えた新しい住宅街が完成していきました。近隣には、三菱重工、大同特殊鋼、日清紡などの工場が建ち並び、各地から工場地帯に職を求めて若い人たちが集まりました。
△道徳公園の入り口
△遊具を揃えた道徳公園の様子
 
なかでも「道徳公園」は、大正15年から豊田土地区画整理組合により整備が開始されて昭和2年に完成。先のブログに掲載した知多の「タコのターちゃん」と同じコンクリート造形家の後藤鍬五郎氏の手により「クジラ池噴水」が公園のシンボルとして設置されます。このクジラ像はなんと、令和3年に国の「登録有形文化財」に登録されたとのこと。知らんかったわ。驚きです。
 
文化庁の「文化遺産オンライン」によると、選考理由は以下の通りだそうです。
■あゆち潟と呼ばれた伊勢湾の一部で、新田開発を経て昭和初期の土地区画整理で開かれた道徳地区にある公園施設。
造形家・後藤鍬五郎制作の鯨の噴水設備を中心にして石と擬木で池の護岸を巡らし、石製欄干付コンクリート橋を架ける。戦前から永く地域で愛される。
△有形登録文化財となったクジラのクーちゃん(勝手に命名)
 
また同公園25,600㎡のうち10,000㎡は、昭和2年に京都の映画会社であったマキノ・プロダクションの中部撮影所に貸し出されました。撮影所が置かれていたのは現在の道徳小学校、大江中学校、道徳公園の一部で、同撮影所では『忠魂義烈 実録忠臣蔵』などが撮影されたそうです。これも驚きです。
△忠魂義烈 実録忠臣蔵の赤穂城シーン
△道徳小学校(右)と道徳公園の池(この池に赤穂城のオープンセットが組まれたらしい)
 
 
さらにさらに、昭和7年には撮影所の南側に、コンクリートで造った上に土を被せた人工の山が築かれて、山頂に高さ約2メートルの観音像が置かれ「道徳観音山」と命名されます。これは展望台にもなっており、伊勢湾を眺望する事が出来たため、春と秋には子供たちの遠足で賑わったそうです。
△観音公園
△観音公園に掲げられた看板
 
「道徳観音山」は、昭和39年に所有者であった名古屋桟橋倉庫が解散する際に解体・撤去。跡地は住宅地として売り出され、山腹に置かれていた観音像は近隣の東昌寺に移されて、「道徳観音」として現在も大切に祀られていました。
△豊川山 東昌寺(名古屋市南区観音町2丁目)
△道徳観音
 
 
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