入蔵はつい先日、「有害な業務に係る歯科健康診断(以下、歯科特殊健診と略)」をしに某企業に行きました。

 

企業の規模が大きく作業環境管理、作業管理が良くなされている作業場ほど、きちんと健診をしてくださる傾向があります。

 

それでも、この健診は従業員50人以上の事業所でみても60%以下、50人未満では20%少しの受診率です(基安労発1225 第1号 令和2年12月25日)。

 

罰金付きの法定健診なのですが。

 

入蔵は年よりですから、経験を積んでいた抱くために、なるべく若手の先生にやっていただきたいのですが、腰が重い先生が多いです。

 

「よくわからない」「仕事が忙しい」等とおっしゃる先生もいらっしゃいます。

 

よくわからなければ勉強すればいいだけです。

 

けれど「仕事が忙しい」と言われてしまうと、入蔵も諸般の事情に心当たりがありますから、若い先生に無理強いもできません。

 

仕事に余裕のある年配の先生にお願いするのが良いのかなと思ったりもします。

 

今は健診を専門にする業者もいます。

 

健診でお金を頂戴するのですから、よほどきちんとした健診をしていただかないと困るのですが、健診料金によって内容が異なったり、精度がかわったり(!)するのでしょうか? 患者さんが入蔵の診療所にお持ちになる健診票を見てびっくりすることがあります。

 

今回、この企業の健診を入蔵がお引き受けしたのは、つい最近も、大きな会社に旦那さんがお勤めのあるご婦人が、「家族も夫の会社の歯科健診が受けられるんです」と言って、健診の結果票をお持ちになって入蔵の診療所にお見えになったからです。

 

大きな会社です。健診は健診専門の業者に頼んでいるようです。

 

結果票を拝見すると歯科特殊健診の結果欄があります。

 

見ると、「歯の酸蝕症」という枠の「無」の欄にレ点が打ってあります。

 

(ちなみに歯科特殊健診=酸蝕症健診ではありません。このブログで内容を細かく書いても仕方ありませんからこの稿では書きません。)

 

「○○さんはご主人のお勤めの会社でお仕事なさっているのですか?」

 

「いいえ」「そうですよね。お家でしている(特殊なスキルの必要な)自営のお仕事ですものね」

 

歯科特殊健診は歯科特殊健診をしなければならない、業務上の取り扱い物質が定められており、それを取り扱う従業員が受けなければならない健診なのです。

 

同じ工場の勤務であってもその物質を取り扱っていなければこの健診はしません。

 

まして、その会社に勤めていない従業員の家族が受ける健診ではありません。

 

プロが間違えて、この健診欄にマークすることはありません。

 

ここにマークをするのは、適切な歯科特殊健診を行った歯科医師か、この健診の意味が分かっていない検査者(歯科医師)だけです。

 

入蔵は「これはいけない」と思いました。

 

そこで、お話のあった会社(上記のご婦人の旦那さんの会社ではありません)の健診をお引き受けすることにしました。

 

この健診の場合は「巡視」と言って、実際にどのような環境の中で、どのような方法(取扱い方)で対象の物質を取り扱っているかを実際に見せていただく過程が必須です。

 

この点も、(面倒だと感じて?)この健診を敬遠する先生がいらっしゃる一因になっているかもしれません。

 

この会社では、対象の物質を取り扱っている部門が多く、棟も複数にわたっているので、健診日とは別日に巡視に行きました。

 

人事課の係の方(うち御一方は看護師さん)にはとても御丁寧なご対応をいただきました。

 

各部門の従業員の方も、入蔵は仕事の邪魔になるでしょうに、皆さん本当に真摯なご対応をいただきました。

 

ですから、実際の健診時には職歴、作業の実際に関する問診時間が短くて済み、作業、作業環境に関するより詳細な問診の時間を長めにとることができました。

 

健診の度に感じることですが、本当に入蔵自身の勉強になります。

 

巡視に際しては前述の人事課の方に各部門にご案内いただきました。

 

工場内には階段が多く、階段には急峻なものもあります。

 

案内の方は始終入蔵の足元を気にかけてくださいました。

 

そうされると入蔵は(年寄に見られたくなくて(^^))階段の上り下りをいつもより早足にしたりして、かえって危ない感じになってしまいました。

 

本年4月に労働安全衛生規則の省令の一部改正があり10月1日から事業場の労働者の人数にかかわらず、所轄の労働基準監督署長に歯科特殊健康診断の健診結果報告を行わなければいけないことになりました。報告書の様式も変わります。

 

このブログをご覧の方の中には、労働安全衛生に様様な立場で関係をおもちの方がいらっしゃると思います。

 

事業所の労使がともに健康で、業績の向上と、社員の幸福、永続的な社会貢献等を目指して、日々の業務に邁進していくための一助になることを目指して、入蔵(そして歯科医師)は微力を尽くしていきたいと思います。

 

そのためには皆様方のご支持、ご協力が不可欠です。

 

是非、お力をお貸しくださいますようお願い申し上げます。

 

では、また(^O^)/

 

上記の内容を「枕」にして最近の入蔵の日常を記事にしようと思ったのですが、書いているうちに全く予期せぬ内容の記事になってしまいました。

ご興味を持てない方が多数いらっしゃることと思いますが、関係者の方には多少お役に立つと思い、アップさせていただきました。

ご寛恕いただけると幸甚です。