昨日も、大学で実習の手伝いでした。

 

数種類の課題について、学生が半を組んで、場所を変えながらがローテーションで、実習をこなしていきます。

 

入蔵は初期う蝕(皆さんの知っているようなむし歯になりたて、なりかけの歯)の状態を視診(目で診る)に頼らずに調べることの出来る機械の説明をする係でした。

 

しかし、機械の使い方はマニュアルを読めばわかるのです。五分もあればマスターできます。実習をするまでもありません。

使い方を説明するだけなら、機械の紹介のようになってしまいます。

大事なのは出た数値をどう解釈して、どう利用するかなのです。

 

文献に示された診断基準に盲目的に従うと、例えば数値が1違うだけで、歯を削るか、削らずに観察するかの大きな違いが生じます。

 

「歯を削って、樹脂、金属、セラミックに変えることが治療と言えるのか? 歯を削ったところが歯に戻って初めて治したことになるのではないか?」と入蔵は毎日、悩みながら治療をしています。

 

ですから、入蔵にとっては、なるべく歯を削らない、むし歯はなるべく白斑(歯の表面は白く見えるが、歯の表面に穴は空いていない状態)程度の状態に留め大きくならないようにすることが大事なのです。

 

この頃テレビで、「初期う蝕は健康な状態に戻る」というような宣伝、番組をやっています。

皆さんも目にしたことがあると思います。

 

こういった機械はそもそも、治さなければならないむし歯を見つけるために開発されたのではなく、まだ、歯を削って治さなくても良い状態のむし歯を見つけるために開発されたのです。

もっといえば、「白斑にもなっていないむし歯をみつけたいというのが、開発者の真の願い」といえるでしょう。

 

開発者に直接聞いたわけではないので、本当はわかりません。

 

しかし、入蔵は、今までに何度も書いてきたように、初期う蝕の研究を長らく続けてきました。

こういった機器が開発されるようになった研究の経緯、研究の道筋を、いわばライブで見続けてきました。

 

今、大学の授業は極論すれば、国家試験の合格のみを目指すものになってしまいました。

 

ですから、入蔵が上述したような、根本的な考え方を教える必要はありません。

学校に残っている先生方からすれば、先程書いたような「バックグラウンドに流れる心」について、貴重な授業時間を使って語るロートルは邪魔なのかもしれません。

 

でも、歯科医師になって、この機械を使うことになった時に、入蔵の書いたことを知らなかったら、患者さんのう蝕感受性(むし歯になりやすさの人による違い)や、食事、フッ化物の使用状況等の生活情報を考慮せずに、数値を文献に当てはめるだけで観察、予防処置、治療の必要度の判定をしてしまわないでしょうか?

 

入蔵はこの点を強く危惧しています。

 

こういった危惧を入蔵は授業に参加する度にいだきます。

 

こういう教育を受けた歯科医が臨床をし、また、学生たちを教育するのです。

 

と、このように考えるのが、入蔵が古臭く、ポンコツになった証拠なのでしょうね。

 

でも、この頃は教科書も、国家試験むきのエッセンスの羅列風になっていると思うのです。

 

この間、シーラントという、歯を削らないで(通常は。この頃ちょっと違う使い方をする先生方もいるようですので)、歯の表面の凹みに、樹脂やセメント(建物や道路に使うものでなく、歯科医が使う)を埋め込む予防法のことについて「今度書く」と書いたので、ほんのちょっと言及します。

 

例えば、学生に入蔵が「シーラントってどういう歯にするの?」と聞くと、ほぼ全員、「萠出後、五年以内の歯です」といいます。

入蔵がびっくりして、教科書を見ると、そう書いてあるので国家試験的には「正解!」です。

 

ロートルの入蔵が「本当?」とか言っているのを聞いている若い教員の先生は「また、あの爺さんが余計なことを言う・・・」と思っているかもしれません。

 

でも、入蔵は「もしかしたら、この子達、歯科医師になったら、『予防に力を入れています』とか言って、歯の溝という溝を埋めまくったりしないだろうな」と心配になってしまうのです。

 

皆さんは、むし歯にならないなら良いじゃないですか?」と思いかもしれませんが、入蔵は「それは間違っている!」と考えています。

なぜかは、また今度書きますね。

 

で、今日は結局、何が言いたいかというと、実習に出ると、学生の相手をするだけでも疲れるのに、上に書いたようなことを

「絶対にこういうことを教えておくべきだ」「いや、他の教員からみたら、入蔵は時代遅れなんだろうな、あんな風に説明しているんだから」

「あれでいいわけない」「いや、入蔵こだわり過ぎかも」

等々、鬱々と考えて、疲労度を高めているのです。

 

入蔵は、大学からの帰り道、近所の八百屋に寄って900円の買い物をして「はい、100万円のお釣り!」と言われ、食料品店で、手作りのおからの煮付けと、きんぴらごぼうの量り売りを「200グラムだとどのくらいあります?」「このくらいですね、お宅は3人だからこれくらいで十分でしょう」などという会話をしながら購入しました。

 

今時、東京ではあまりないギャグと会話で入蔵は癒やされるのでした。

ロートル万歳だと思います。

 

この食料品店で入蔵が買い物をしている時、地元ではあまり見かけないような素敵な格好(m(_ _)m)をしたご婦人がお店に入ってきました。

そのご婦人は、品◯からわざわざこのお店に来たのだそうです。

「こういうお店この頃本当にないのよね。来てよかった」とおっしゃって、煮干しの大袋をびっくりするくらいたくさん買っていました。

「こんなにいい煮干しおいてある所、本当にないのよ。だから、ここまで来たの」だそうです。

 

「やっぱり、古くたって良い。古いのが良い」とちょっぴり、入蔵は嬉しくなりました。

 

ではまた(^^)/