どんなに腕のいい歯医者でも、その患者さんが無理せずに通うことができなければ、その患者さんにとっては「良い先生」ではないのだと、入蔵は思います。
例えば、先日も書いたように、「症状がでている時に診せていただかなければ正しい判断ができないこともあるから」です。
遠くから患者さんが来てくださるのは、本当に嬉しいことですが、入蔵は上記の理由で、自分が良い先生になれない可能性があることについて危惧せざるを得ない事があります。
それほど遠くないところにお住まいの方であっても、最寄りの診療所でなく、入蔵の診療所に苦労して通ってくださる方の様子を見て、お気の毒に感じることがよくあるのです。
そういう場合、入蔵はその患者さんが通いやすい、普通の(大学病院や、病院歯科でないという意味です)診療所をご紹介することが、よくあります。
「患者さんが幸せになれば良い」と考えてのことです。
しかし、喜んで引き受けてくださる先生もいれば、引き受けていただけない先生もいます。
患者さんのお住いのすぐ近くの、引き受けてくださる診療所にご紹介しても、混んでいて、数週間後の予約しか取れないこともあり、別の診療所を紹介し直したり、結局、入蔵がそのまま診ることになる患者さんもいます。
なかなか難しいです。
今日(正確には昨日になりました)も、久しぶりにお見えになった患者さんがいました。
「仕事が忙しくて、悪くなっているのはわかっていましたが、来られませんでした。近所の歯医者に行こうとはおもったのですが。」とおっしゃいました。
入蔵は、すかさず「そうしてください」と申し上げました。
すると、患者さんは「そう思ったのですが、どうしても、ここにしか来られませんでした。」と仰ったのです。
なかなか難しいです。
責任重大です。
通いにくい患者さん相手に、なんとかお役に立たなければなりません。
患者さんが、他には行けないと仰っているのですから。
今まで何度も書いてきたように、患者さんは病気で、困っているのです。
その患者さんを前に、嬉しがったりするのは慎まなければなりません、でも、自分の仕事に対して、やりがいを強く感じたり、ちょっと嬉しく思う気持ちが湧いてくるのを、入蔵はどうしても否定できませんでした。多分、歯科医師としてはまずいと思うのですが。
この患者さんは、「今日の主訴」についての入蔵の治療には、満足していただけたようです。
ご両親の口腔内状況も考えて、受診間隔が、長くなりすぎていることについて、入蔵が危惧している由お話しますと、それについては、ご本人も気になっていたということでした。
「口の病気」、特に硬組織の疾患は自然治癒がほとんど無い(最近話題の初期う蝕でも、自然治癒が見込めるのは表層下脱灰という段階、すなわち、外見上は白斑、褐色斑と言われる状態までと考えていいと思います)ことを考えると、今のような受診状況は望ましくないということも、過去に入蔵が何度もご説明していることもあり、ご自分で承知されていました。そこで、患者さんは、「続けてきちんと通います」と言ってくださり、今後、継続的に来院していただくことになりました。
とにかく入蔵は、自分の持てる力を全部出していくしかありません。
それしかできないです。
さて、入蔵は、明日(もう今日になりましたが)に備えて寝なければなりません。
ではまた(^^)/