子どもたちを描く、率直な筆致。

 

 

 

江國香織先生というと、甘やかな恋愛小説というイメージもありますが、大人の物差しではかれない少年少女たちの物語も多く書かれています。

 

こう、ふわふわとした血肉のない感じのイメージを抱かれているような気がしますが、甘いお菓子がどっしりとしたバターと重いカロリーの砂糖が惜しみなく使われて厳密な化学反応をもとにつくられているように、実はしっかりとした骨があり切れば肉が裂け血が流れるような小説を書かれるかただと思っています。

 

子どもたちを描く作品でも、大人からしたら眉を顰めやめてと叫びたくなるようなことも子どもたちの倫理で淡々と行っている様子が描かれているような。

 

この、「彼女たちの場合は」では、家族でアメリカはNYに住んでいる14歳の礼那とその従姉妹で礼那の家に暮らしながらアメリカの大学に通う準備をしている17歳の逸佳がふたりきりでアメリカを見る旅に出ます。

 

西部を目指して、ぐんぐんと進んでいくふたり。

 

残された家族たちの様子も合間合間に描かれます。

 

わたしはアメリカというと西海岸とハワイしか行ったことがなく、土地勘がないので地図を横に置きながら読んだらよかったかなと読んだ後で思いました。

 

しかし、14歳と17歳の少女がふたりきりで、大人の庇護なしにアメリカを旅してゆく……保護者からしたら「やめて!!」となりますよね。

 

だけど成人する前の年頃って、危ないってことも多少はわかっていても自分たちは大丈夫だと信じているようなひやひやすることを平気でやってのける年頃でもありますよね。

 

大人の目のないところで、そういうことをして自分にとって本当に危険なことや相手はどういうものか見分ける能力を身につけることも必要なのかもしれません。

 

礼那と逸佳のふたりも、げーっという危ない目にもあいます。でも気のいい人や、親切な人にも出会って、西部までの旅を続けていきます。

 

その様子がとても楽しそうで、わたしも旅に出たくなりました。