とてもいい短編集でした。……が、個人的に複雑なところもあり。
本屋大賞も受賞の町田そのこさんのデビュー作を含めた短編集です。
町田そのこさんがデビューされた新潮社のR-18文学賞、こちらからデビューされた作家さんには個人的に面白い! (自分に)あう! と感じる作家さんが多く受賞者すべてではないけれどよく読んでいます。
短編の賞なので、デビュー作とリンクしたような短編いくつかと一緒に本になることが多いですね。
さて、こちら読んでいて、ぽろぽろ泣いてしまいました。
どうもわたしの涙腺に詰まっていた栓が抜けてしまった様子![]()
一番、ぽろぽろ泣いたのは、表題作「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」です。
主人公の同級生の女の子を、ぎゅっと大事に守っていたおばあちゃん。社会から見ると「おかしい」「変わった」愛しかただったかもしれない。だけどそのおばあちゃんの愛情で女の子は育まれてきた。
そこで泣けて泣けて、もしかしたらうちのばあちゃんもばあちゃんのやりかたで家族を、わたしを愛していたのかもしれない。それをわたしたちは受けいれられなかったのかもしれない、だからこんなに泣けるのでは? などと思いました。
他のお話も、どれも面白くて、こころの繊細なところ、深いところに触れているんだけれど、ひりひりと痛むような手つきではなく、丁寧にすくいあげるようなお話で傷を知って癒やされるのを待つような読後感です。
この作家さんは、面白い!! と感じました。
ここからは個人的に複雑に感じた事情です。作品とは無関係なので、そこも読むかただけ*****の下にどうぞ。
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こちらの短編集のなかにひとつ、とてもおぼえのある話がありました。
友人がオリジナル作品としてネットに公開した小説が、こちらの短編集の一話と酷似しているのです。
発表はもちろん町田そのこさんのこちらの本が刊行されたのが先ですし、友人自身から「町田そのこさんの小説が好きだ」という話を聞いています。
酷似というのは、話の筋から印象的なエピソード、描写までが、同じだったり似通っていたりするレベルです。
作品のジャンルとしてそぐわない部分だけが抜かされたり変えられたりしている、あとはほぼ同じといった調子。
気づいてから友人が発表したものを読み返しましたが、本を横に置いて書いているか、でなければかなり記憶力がいいか、という印象です。
この場合どう書き添えれば適切なのかわかりませんが、「参考にしました」と町田さんの作品名を明記するということもなく。
……複雑です。
これが商業出版であれば本は出版できなくて作家生命も絶たれるであろうし、アマチュア同人誌であっても返金対応などが迫られると思います。
けれど、規約のある投稿サイトでもなく、個人のページで公開されているアマチュア小説です。練習として他人の作品を模写した習作のひとつと考えると、……どうなんでしょう?
そういった一般的な意識としてどうかということはわたしが判断するところではないので置いておきます。
個人的に複雑でした。
元となったであろう町田さんの作品のなかで、おそらくジャンルにそぐわないであろうから削除改変された部分。そこにもこの作品の意味というのはあったと元作品を読んで感じました。
それらを消して変えて、作品として出すという行為は、元の作品への愛を疑ってしまいます。
好きで、素敵だなと思ったから、真似をした。そういうことだとは思うのですが、であれば改変はできないのではないかと。
もうひとつは友人の作品にも感想を寄せてくださる方々がいます。
そういったひとたちの言葉を、どう受けとめていたのかな? という疑問があります。
わたし個人としては、創作を嗜むものとしてはちょっとどうかなと思うくらい盗作・パクりといったことに鈍いです。
もちろん著作権侵害は許されないことですが、SNS上で告発されているのを見て、「えっ、似てるかな……?」となることもあります。
創作の際に、いままで見てきたものに影響されるというのは必ず起きることだと思っています。
なんですけど、今回のことには自分でもびっくりするぐらい「えっ? えっ?」と動揺してしまって、大変複雑であります![]()
う~ん……、う~ん……、町田さんのこちらの本、読んだと友だちに伝えるべきか……![]()