ハッピーエンド
パオロ・ヴィルズィ監督作、イタリア/フランス、112分
ヘレン・ミレン様、ドナルド・サザーランド様、ジャネル・モロニー様、
ディック・グレゴリー様、クリスチャン・マッケイ様、ダナ・アイヴィ様他
或る日、息子が実家を訪れると両親の姿とキャンピングカーが消えている。
父のジョンは元文学教師でアルツハイマーが進行中。
母のエラは癌末期。半世紀連れ添った二人の、最後の旅。
二人別々に姉弟の子供ふたりの元に引き取られる予定だった日の出発。
ジョン、相当病状が進んでます。しかし、運転する~っ!!!
目的地は、大学で文学を教えていた彼の、言ってみたかった土地、
ヘミングウェイハウス。突然、正気に戻るけれど、悪化が早まっているジョン。
妻を残したまま、車を発射させてしまったり、
子供の名前を忘れながら、生徒の名前を覚えていたり。
適度なユーモアを、大御所というか、重鎮というか・・・の、破格なカップルが、
現実を見据えた視線を保ったまま、阿吽の呼吸の夫婦を飄々?と演じられる。
毎晩、スライドで、家族の歴史の写真を見続ける二人。
遠くの人陰で、あ~、見てる人が居るという場面や、
直接、一緒に見てもいいですか?と言って来る若者達や。
排泄が上手くできなくなった夫の世話も、
置いて行かれて、若者(というよりバイカー?)のバイクで追っかけても、
めげない妻が、夫がかつての愛人の名で自分を呼び、
誘導されるがままに、二年付き合ったことを知った時には、
施設にポイ捨てしちゃったりする。
強盗にだって立ち向かうよ。
夫も大昔の妻の初恋の相手に、未だに嫉妬している。
夫婦の形は年齢と共に変わると、主演お二人がインタビューで語っておられました。
そうは言っても、この夫婦は、深みを増してはいても、情熱的?でもある。
インタビュアーの終焉に向かう旅、発言に、前向きな旅だ、とお二人共仰ってた。
自分に、共に時間を重ねていくパートナーが存在しないせいか、
夫婦の細やかな場面に、理想のパートナーと思いました。
自分が完全に過去を忘れてしまったら、自殺させてくれと妻に頼む夫。
でも、正気の時、妻の望みは解っていて仰ったた気がします。
監督が、アメリカからのひっきりなしのラブコールに、
どーせ無理だろうと、ミレン様&父・サザーランド様でなら・・・と、
アメリカからの打診に返答したら、快諾で通ってしまったという、本作。
なんてったって、このお二人なんで、お年寄りっても、かっこよすぎる。
ヘレン・ミレン様に至っては、医療用かつらを脱いだ、
病気で髪が抜けた姿の方がかっこいいのってもう、人間離れ!
いつもひねりにひねった作調で魅せて下さる、パオロ・ヴィルズィ監督の、
びっくり、ストレートで、暖かく完璧なハッピーエンド(に、みどりには思える)。
昔、『黒い瞳』をおすぎ様が評して、心の引き出しに大事にしまっておきたい映画、
と仰った印象的な解説がありましたが、本作も、そんな気持ちになる、
考えられないコンビの?南へ南へ走るロード・ムービーでありました。
残念なのは、アメリカなんで、スズキさんにお会い出来なかったくらい?
それにしても、原題と全然違うのに、そんな長丁場でもない旅に、
英語で軽~いタイトルを・・・つけるなっ!?