彼女が追い求めた「夢」
それは、永遠の「幻」・・・
男たちも、彼女に幻想を求めたのだから。
別れた女、既に亡き女について語り、
「マリリン・モンローと寝てみたかった」と、
口に出して言う事が出来るような男に、
安らぎを与えてもらえるわけがない。
お互いが、一瞬の夢をみただけ?
あっという間に冷めてしまった恋情だったけれど、
この時の彼女の視線は、本当にメロメロでした。
『太陽がいっぱい』に、ロミー・シュナイダー様が、
一瞬ご出演になられた時、アラン・ドロン様を見る目が、
同じ瞳だった。終わりを知っているから辛い。
でも、お二人とも、その一瞬は、
幸福にあふれていらしたのですね。
「マリリン・モンロ-と寝る」
「マリリン・モンローの愛情を自分が独り占めする」
「マリリン・モンローに頼られ、助ける」
アーサー・ミラー様のような「アメリカの頭脳」でも、
単純にその栄光に酔うのか。
でも、その楽しさ、愉快さは現の幻。
代償は妻にばかり向けられる注目。
元々、自意識が強い者が、「妻」に集まる人々の目を喜ぶ筈はない。
瞳の奥に、「煩わしさ」の影が見える。
「彼も所詮ただの男」と、「妻」の心もあちこちに移ろい始める。
新婚旅行を兼ねた英国での新作撮影の滞在。
夫に愛されていないという絶望。
妻の限りなく続く不安は、もはや生活となった夫には負担。
心は既に離れた夫婦が「彼女と結婚していた間、私は何も書けなかった」、
そう語る夫が唯一書いた脚本で演じる映画での「マリリン・モンロー」。
皮肉にも、彼女が望んだ、「演技派」としての姿がスクリーンに焼付く。
幸福な再婚をし、婿はダニエル・デイ=ルイス様、89歳の大往生。
三人目の奥方は、マグナム・フォトのカメラマン。
愛の冷めた結婚生活の中での映画撮影で、
次の妻が、ちゃんと見つけられてよろしかったですこと。
今度は、自分に合う「知識人」ですし。
元妻の分まで長生きされて、過去のことをよくおしゃべりになられた「知識人」。
こういうタイプ、信用出来んが、
(見た目、ビル・エヴァンス様もだけど、ミラー様、亡父に似てるんです。
骨格と眼鏡ですね、ポイント。)
お二人の結婚が上手くいっていて、
アーサー・ミラー様が、もっと、妻に脚本を書きおろしていらしたら、
マリリン様は、映画界で、望んでいたポジションを得られていらしたかも。
『荒馬と女』は、現場がどう揉めたと言っても、名作だ。
大原麗子様の葬儀には、元夫お二人が参列していらしたけれど、
ご離婚されても、繋がりをお持ちになり続けられたのは、
渡瀬恒彦様だけで、もうお一人とは、お会いになることもなかったとか。
アーサー・ミラー様は、お別れになられた翌年、
元妻が亡くなられても、葬儀に出席せず。
(ディマジオ様が参列者を選び、規制し、仕切られましたからね。
それに、速攻ご再婚のお幸せに、面倒な元妻との繋がりは不要。)
マリリン様、もし、ディマジオ様と、今一度家庭を持たれてらしたら、
心の平安に至ることがお出来だったでしょうか。
言ってみても詮無いこと。
ディマジオ様が亡くなられる時、「やっと彼女に会える」と仰ったとか。
それが、愛されず、愛し方を知らずに育って、
愛を求め続けた、一人の女性への、哀しい、最高の贈り物・・・