「ツィゴイネルワイゼン」映像と音、文学だった映画 | 時は止まる君は美しい

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巡りあった美しい人達の記憶を重ねます・・・
B面ブログ「扉・鎧戸・宵の口」も始めました。

 

内田百閒の夢か現かの世界

 

前に記事にさせて頂いた時、シナリオから台詞を抜粋させて頂きました。

 

 

 

 

 

今も、お写真を拝見していて、セリフが口から出てきます。

かように、音楽的な役者さんの台詞回しでした。

 
 
 
 

 

旅先で出会った芸者、大谷直子様と結婚する原田芳雄様。

出会いの日は、弟を自殺で亡くした日。葬儀の帰りの芸者

「弟の骨が赤いんです」「あんたの骨もきれいだよ」

三味線をつま弾く原田芳雄様。

 

 

鰻を釣る樹木希林様。「肝をね、寝たきりの旦那さんに食べさせるんですよ」

女中の佐々木すみ江様が語る。

 
 
 

大楠道代様演じる、藤田甚八様の妻が、夫の同僚で友人の原田芳雄様の、

目に入ったごみを、で舐め取る。死の病で入院している、妹の病室で。

 
 

 

夫との見舞い帰りに「あなた、それ、頂いていい?」と夫の食べない品にお箸を伸ばす妻。

 

 

次には、前は嫌いだった筈の桃を「腐りかけが美味しいんです」と、

夫の前で、薄皮をすうっと舐める。

自分より先に死んだら「骨をくれ」と、藤田甚八様に言う原田芳雄様の色気。

命を落とした大谷直子様の後妻は、前妻と瓜二つ。

旅先、スペイン風邪で命を落とす原田芳雄様。

 

 

「あなたあ、中砂さんが亡くなっちゃったんですう」散り、舞う

夫が貸したものを、前妻が遺した娘が夢で父から聞いて、

返してもらいに来る。その中にあるのが、サラサーテが自ら弾いた「ツィゴイネルワイゼン」

 
 

 

原田芳雄様演じる中砂と密通していた大楠道代様の「だって欲しかったんですもの」。

艶然とした莞爾

 

 

 

娘の後を追いかける、藤田甚八様。

「おじさんは勘違いしてるんだわ、お父さんは生きているのよ」

死んだ人が生きていて、生きている人が死んでいる・・・

 

 

1980年作品「ツィゴイネルワイゼン」。18歳の私には強烈でした。

当時まだまだ若く、感動を周囲に伝えようと「語り」をする度に、

私の「語り」だと、コメディ?になってしまう。

特に、大谷直子様が、ちぎり蒟蒻を、延々造られる下りなど、映画ではぞっとするのに。

 

 

 

 

因みに、すき焼きにちぎり蒟蒻を入れるのは、この映画で初めて知りました。

その後、我が家のすき焼きを、私に作らせると、糸蒟蒻ではなくちぎり蒟蒻に。

演奏しながら、何かつぶやくサラサーテ。何を言ったのかはわからない。

 

 

旅芸人は、三角関係の末、男二人が殺し合ったと大谷直子様が語る。

夜更けに屋根に落ちて来る石の音。

かーんっ、と鳴る拍子木。

 

 

目くるめく世界が、記憶だけでよみがえる作品です。

そして、本当に美しいカラー作品は、モノクロにしても美しい。