私はある派!
何も起こらないという、凄い一作
アメーバ様のお題は「暑中見舞い」ですが、
この映画、全く会ったことのない者どうしの、文通が20年に及ぶという話。
そして、特に本好きの方には、「解る!」の連続かもしれない、の連続です。
冒頭、英国に向かう飛行機でAnne Bancroft(アン・バンクロフト)様演じる作家が、
本屋さんで、「あんなに有名な本でも手に入らないの!?
アメリカ人は本を読まないの!?」とブチ切れられた過去の記憶に立ち戻る。
↓ 何だか、引退した後のグレタ・ガルボ様みたいなアン・バンクロフト様。
あれ?これって、ここ数年、激化した、日本の本屋さんの、
「新刊書以外、置いてません」化にそっくりじゃない?と思いました。
で、彼女は、雑誌に広告が載っていたロンドンの古本屋さんに手紙を送る。
すると、想像を超えた、装丁に温かみがある、本好きには堪らない古書が、
驚くべき、安価な請求と、返事の手紙と共に届く。
そこから、注文と文通が始まり、お互い顔を見たことも会ったこともない同士の、
20年に及ぶ交流が始まる。
作家なだけに、ウィットに富んだ手紙なんだけど、ちゃんと、
言うべきことははっきり。私にはお金はありません、とか、
請求書はドルに換算して送れよ、とか、本の紙を包装紙に使うとは!とか。
返って来る手紙は、端麗な文章に、英国のユーモアを含んだ一筆。
次第に、書店の従業員皆が、アメリカの一顧客と、
手紙を通じて、親近感を覚えてゆく。この関係、解るわあ。
戦時下では物資のプレゼントが送られ、お礼は勿論古書。そして、「親しみ」。
あらら、これって、本屋さん問題と同じく、ブログで知り合った同志の、
共通の嗜好から始まる、仲間意識?とか、それをきっかけに始る交流と似てる?
こういう、人の心の関わりって、媒体は変化しても、変わらないものですねえ。
普通に暮らしているだけでは、絶対に接点がないもの同士に生まれる親しさ。
英国側の店主にAnthony Hopkins(アンソニー・ホプキンス)様。
奥さん役にJudi Dench(ジュディ・デンチ)様。
夫婦二人の食卓で、料理を一口二口食べた後、「おいしいね」と言う、ホプキンス様が素敵です。デンチ奥さん、それ聞いて、嬉しい!って顔もしないのね。
これって、旦那の礼儀というか、口癖みたいなもので、
食事の度に言ってるんだと思う。
デンチ奥さんから、バンクロフト作家さんへの一通の手紙の中、
「あなたに嫉妬する気持ちもありました」って。
デンチ奥さんは、真面目一徹で、ユーモア感覚がないのね。
で、旦那と楽しい文通してる作家さんに、複雑な気持ちを感じるの。
自分にも、そういうセンスがあって、そんな会話が出来たらなって思うんでしょう。
映画全編、本当に、ある意味、何も起こらない。
生活も友達も、全く交わらない。
作家の友人の女優さんが、黙ってお店を訪れて、ちょっと悪戯するくらい。
流石、女優さん。この時は、ディオールのモデルのような装い。
最後に、チャーリング・クロス街84番地に遂に作家が訪れる時、
そこには、引き払った後、本なんて一冊もない。それもまた、よかったです。
そうやって、色々な事が移ろっていくのでしょう。
淡々と流れる時間。映画でそういう日常を描くと、それでもやっぱり、
親子の葛藤とか、夫婦の諍いとかあると思うけど、マジ何もないです。
でも、何か「好きなもの」がある人には、たまらない映画だと思いました。
(「好きなもの」が「本」なら尚更)
そかし、そんな「何も起こらない」映画だからこそ、名優さんじゃないと寝ますよ。
そしてエンドロール。
画面が中央で二分されて、英国側、アメリカ側のスタッフが並べて写される粋。
アン・バンクロフト様の旦那様、Mel Brooks(メル・ブルックス)様が、
制作に参加してらっしゃるのも嬉しい作品でした。
それにしても、パソコン生活になってから、すっかり筆不精に。
一筆箋がいいところ。いけないですねえ。
来年は暑中見舞い、書いてみましょうか・・・って、
その前に、年賀状ですよね。
こんなナマケモノみどりですが、
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