キキ・ド・モンパルナス
Kiki de Montparnasse
「キキこそモンパルナスのエスプリだった。
彼女を除けば、モンパルナスもただありきたりの
俗な街に過ぎなかった」
(ヴォルダー・メーリング「呪われた絵画」野村太郎訳
美術出版社 以下、「」内文章は、同書より引用)
Alice Prin(アリス・プラン)様。1901年10月2日~1953年4月29日
「モンパルナスのキキ」、エコール・ド・パリのモンパルナスの女神。
Moïse Kisling(モイズ・キスリング)様、ポーランド出身。
キスリング様のキャンバスに、画家とモデルのどちらが欠けても、
成立することは不能の、命がそのまま描き出されているような作品群。
「彼女の身体の線には、いわば独特のアクセントがあった。
肩、腕、手先、首、胸もとをキャンバスの白にたとえるなら、
その純白は、強い黒でふち取りされている。
そこに浮かびあがるのは、生命のない写真の映像ではなく、
くっきりとした、黒白二色の版画の強烈さだ。
首からうなじへまつわる縮れ毛、碧い瞳、剣のある眦(まなじり)、
高い反り鼻、口紅を刷いた魅惑的な唇に、凝縮された生気がみなぎり、
Man Ray(マン・レイ)様。
あまりに有名な作品群。1930年まで、10年近い愛人関係。
以下にも、マン・レイ様のお写真は拝見させて頂きますが、
姿形だけでなく、心の中までえぐり出し、露出させて、
プリントに焼き付けるたような写真の数々。
そんな風に、画家にも写真家にも彫刻家にも、自分をさらけ出す力。
バンド・デシネで描かれているんですね。 ↑ にもご登場、
Léonard Foujita(藤田 嗣治)様。
こっそり、いらっしゃいますねえ。どんなに隅っこに映っても、
強烈に創り上げられたルックスは、見つけることが出来る、フジタ様。
筆致・その人自身の存在感を創り出し、当時のモンパルナスの、
貧乏、短命が多かった画家達の中で、
「Nu couché à la toile de Jouy(寝室の裸婦キキ)」
1922年のサロン・ドートンヌでセンセーションを巻き起こし、
8000フラン以上の値が付いたという作品。
フジタの「乳白色の肌」で描かれたキキ様の裸体。
近年になっての化学分析で、初めて、絵具・絵筆等の謎が解けた
「彼女は全身が楽器だった。その肢体からは、女のもつありとあらゆる
魅惑が、魔性が、悪徳が、罪が、甘美な楽の音となってこぼれてくる」
「おそらくモジリアニといえども、彼女の顔を単純な線に還元するのは
不可能だろうし、マチスにしても、彼女の肢体、双の乳房、胸、
腰、膝の裸体を惜しみなく描きつくすことはできないだろう。
実際、キキこそ自然の手によって、意地悪く、大胆不敵に
描きそこなわれた作品だった。作品?そうだ、しかし、
これがなお芸術か?・・・と人びとから非難を浴びなければならないほど
厚顔無恥な・・・・・・・・・。」
Amedeo Clemente Modigliani
(アメデオ・クレメンテ・モディリアニ)様
Maurice utrillo(モーリス・ユトリロ)様
1883年12月26日~1955年11月5日
Julian Mandel様。1872~1935
大岡 信様がなるほどという例えで、語っておられます。
<グレタ・ガルボの神秘的魅力もまた同じ時代の産物だった。
つまり、比ゆ的にいえば、映画が「スター」という輝かしい虚像を
生み出しえた時代こそ、キキという一人のモデルが
モンパルナスのスタートして君臨しえた時代でもあったのだ。
こういうスターはテレビの時代には生きられない。
テレビは謎や神秘を破壊する機能によってこそ
テレビの時代を築きつつあるようにみえるから。>
Hundred Faces作品。
マン・レイ作品。
Kees Van Dongen作品
pablo gargallo(パブロ・ガルガーリョ)様『'Kiki de Montparnasse'』
Gustaw Gwozdecki様
Moïse Kisling(キスリング)様。1891年1月22日~1953年4月29日
マン・レイ様。1890年8月27日~1976年11月18日
セルフ・ポートレイト。
モジリアニ様。1884年7月12日~1920年1月24日
フジタ様。1886年11月27日~1968年1月29日
第二次世界大戦は、エコール・ド・パリの終焉でもあり、
「モンパルナスのキキ」という神話の終わりでもあった。
反ナチスの運動後、ゲシュタポからの逮捕を逃れるため、
故郷ブルゴーニュへ帰り、戦後、パリにもどったキキ様。
その帰還は、最後の死出の旅。
水腫による内出血により、陸軍病院の簡易ベッドで、
息をひきとられたと伝えられます。
「彼女の棺にしたがったのは、数ある彼女の肖像画家のなかで、
誠実な日本人フジタただ一人だった」
日本画壇から、戦争責任を一人、かぶせられる形で追放され、
フランスに戻り、フランス国籍を取得、日本国籍を離脱された、
フジタ様。エコール・ド・パリを失って、旅立つキキ様の魂を、
故郷をなくした痛みを知るフジタ様が見送られたことは、
せめてもの痛みを知る者同士の、優しさに包まれた
マン・レイ作品。薔薇の精のよう。
モンパルナス。芸術家たちの時間が刻まれた場所。