Aki Takase / Alexander Von Schlippenbach | 晴れ時々ジャズ

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日々の雑感とともに、フランスを中心に最新の欧州ジャズについて書いています。

10日もたってしまったし、たいしたことは書けないけれど、ライヴリポート書いとこかな。


長いことライヴに行ってないので生の演奏に飢えてました。年明けてからのんびりし過ぎた能天気な自分に「喝!」を入れてくれそうな「即興演奏」が聴きたくなり、ミュージシャンに関する予備知識がほぼゼロのまま、Aki Takase(高瀬アキ) / Alexander Von Schlippenbach(アレキサンダー・フォン・シュリペンバッハ)を聴きに出かけました。


未知の音楽に触れる時は、いつもわくわくします。それがライヴであればなおさら。定員30名のところ当日参加もあったそうで、小さなホールはちょうど満席状態でした。会場には若い女性も多くて、これはいいことだと思いました。ジャズは決しておっちゃんだけのモンやないということですわ。


デュオによる完全即興で開幕したライヴは、その後、Thelonious MonkのPannonicaやEric DolphyのOut Thereなどのほか、現代的和声で料理されたスタンダードナンバー、ツィマーマン(て誰?)の曲、またそれぞれのソロもオリジナル曲で披露されました。


一曲目の完全即興を除くと、オリジナルも含め全て作曲されていてテーマもあったりするのですが、不協和音に最も近いと感じるような和声が用いられ、跳躍した音使いも多く、十二音技法で作曲されていたり...と、分かりやすい音楽ではないので記憶に残りにくい演奏がほとんど。そんな中で、Aki TakaseのソロによるDr. Beatというオリジナル曲が最も分かりやすくかっこよかったなー。←ちゃんと記憶に残ってるのがこれだけで、あとはどんなんやったか忘れてるかも(笑)


こういう音楽って展開に予想がつきにくいのと、その時その時の音を追いながら聴くので集中力が要りますが、何だか自分の記憶力を試されてるみたいで(笑)それはそれで面白い。シリアスな演奏にドライなユーモアが込められていたり、テンションは高いが良い意味でユルさも混じっていたり、ピアノを弾きながら手拍子を入れたりなどのパフォーマンスもあったりと、なかなかに楽しめて1時間があっというまに過ぎてしまいました。


演奏のあと短い休憩を挟んで行われた質疑応答では、ご主人のフォン・シュリペンバッハさんが「即興とは何か」を説明するのにジャズの歴史から延々と語り始め、奥様の高瀬さんが途中で話を遮りながら通訳し、するとご主人が「まだ途中なんだよ」と文句を言うと、奥様が「だって長いと内容忘れてしまうやないの」と反論し、「遠方からみえてるお客さんの帰宅に間に合うようにお願いします」と、主催者側から注意が入ったり...と、なかなか面白いやりとりがありながらも興味深いお話が聞けて、もっと時間があればよかったのにと思いました。


質疑応答で特に印象に残った高瀬アキのお話。


即興演奏に必要不可欠なのは「楽器を使って自分が出したいと思う音を自在に出せるテクニック」である。
自分の演奏で大切にしていることは「何を表現したいか」であり、そのためには「人の真似ではない独創性(自分らしさを見極めたうえで)」が必要。
大好きなピアニストのマルタ・アルゲリッチがそうだったように、私も若い頃はエネルギッシュに演奏したが、これからはもっと「深い音や美しい音をピアノで追及」してゆきたい。



自宅から会場までは自動車で片道1時間半かかりますが、思い切って行って良かったです。
高瀬アキのこと、もっと早く知っておけばよかったな。


あっ、そうそう!
会場でこんなんもろてきた。





Nils Wogram (tb)が一緒なんよ(嬉)
ケストナーの『飛ぶ教室』は子どもの時に読んだな。もっぺん読んでみよ。





会場で購入した楽譜に、ライヴで演奏されたDr. Beatが入ってました。譜面は単音のユニゾンばっかりで簡単そうに見えますが臨時記号が多く、指示されたテンポが♪=232とかなり速く、中間部には指定されたコードによる即興が入ります。「楽器を使って自分が出したいと思う音を自在に出せるテクニック」なんか持ってない私にできるのは、せいぜい頭の体操のつもりでたどたどしく音を拾って遊んでみることくらい。遊んだあとCD聴いてみよっと。


御用とお急ぎでないかたは、Aki Takaseのホームページへどうぞ。


http://www.akitakase.com/



出演:Aki Takase (p)
    Alexander Von Schlippenbach (p)
日時:2015年1月20日(火)午後7時開演
会場:好文園コミュニティーホール(神戸市東灘区岡本)