HELGE SUNDE ENSEMBLE DENADA / FINDING NYMO | 晴れ時々ジャズ

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日々の雑感とともに、フランスを中心に最新の欧州ジャズについて書いています。

なんだかディズニーアニメのタイトルをもじったようなアルバムタイトルですが、NYMOとは、本作に参加しているATLE NYMOFRODE NYMOの兄弟を差します。NYMO兄弟以外は全然知らない人たちだったのですが、ビッグバンドなどのラージアンサンブルが好き(コンテンポラリーに限る)なので、試聴してみて気になる作品があれば、未知の分野もどんどんと開拓することにしています。


本作は、全10曲がHelge Sundeの作曲で、2008年10月17日と18日にオスロのRainbow Studioで録音され、2009年にリリースされています。

リーダーのHELGE SUNDE(1965年、ノルウェイ生まれ)は、自身の音楽活動に加え、幾多のビッグバンドやオーケストラに指揮者や作曲家としてかかわり、また室内楽や映画音楽等の作曲、後進の指導育成にもあたるなど、その活動は実に多岐多方面にわたっています。

編成はビッグバンドで、総勢18人。バンドリーダーのHELGE SUNDEは指揮とトロンボーン担当で、1曲でソロも披露しています。

さ、今日も脱線せんとちゃっちゃと書いてしまお。


本作は、どの曲も非常によく出来ており、アレンジは洗練を極めています。作風は現代感覚に溢れ、全編に都会的ムードが漂っていてかっこいいですし、よくスウィングし、曲と曲のつなげ方も巧みです。エレクトロニクスやサンプリングを控えめながら効果的かつセンスよく配することによって楽曲をドラマティックに演出することにも成功しています。

繊細かつダイナミックであると同時にソリッドで溌剌としたバンドサウンド。リズム隊&パーカッション奏者による強烈なリズム感。美しく決まる各人のソロも非常にレベルが高く、メンバーはかなりの精鋭揃い。多彩な表情を見せながら静動・明暗を鮮やかに描き分け、コミカルなユーモアも効かせるなど表現も豊かで生き生きとした演奏になっているためイマジネーションが刺激されますし、どの曲も聴きごたえ満点で繰り返し聴いてもぜんぜん飽きません。


1曲目のボコーダーを使った短いヴォーカル曲は???ですが、2曲目のObstlerからが本領発揮。「いいぞいいぞ!」と思いつつ、めくるめくといった感じのサウンドにぐんぐん引き込まれていく。

3曲目のWhen In Romeのかっこよくスウィングしてることといったら!粋で洗練された演奏は、ビッグバンドの鑑ですな。

5曲目のMolto Algheroは、コミカルで賑やかに突っ走る。激しく吹きまくるAtle Nymoのアルトソロが◎。Marilyn Mazurのパーカッションも大活躍で素晴らしい。

本作のハイライトは、アルバムタイトルにもなっている6曲目のFinding Nymo。ハイテンションでアブストラクトな出だしもスリリング。あちこちから飛んでくる鋭い音や激しいアクセントも快感でまさにド迫力といった感じの躍動感いっぱいのビッグバンドサウンドに酔いしれる。で、主役であるNymo兄弟の熱いソロが「どりゃーっ!」という感じで暴れ咆哮するのが凄いんですが、Frode Nymoのソプラノサックス、Olga Konkovaのピアノ、Per Mathisenのベース、Hakon Mjaset Johansenのドラムが四つ巴になるところでは火花散るてな感じでえらいコトになっとります。

9曲目のBrykは、にぎやかでカラフル。凝った音づくりでしかも迫力満点。Per Mathiseのベースソロ、Olga Konkovaのピアノソロも聴き応え満点。

ラストのLullaby Of Broltesiaは、典型的な「おやすみなさいの音楽」になってます。ゆーったり静かーに素朴なメロディが奏でられますが、なぜか主役はでっかい音のするバスサックスというのがユーモラス。バスサックスが最後の一音を吹かずに演奏を終えると聞こえてくるちょっと鼻が詰まった感じの安らかないびきの主は、Helge Sundeの幼い息子かな?アルバムクレジットにもちゃーんと名前が載ってます。こうして「あ~、面白かった!」と、しゃーわせな気持ちで本作を聴き終えると、何故かまたもう一度最初から聴きたくなってしまう。

最長の曲でも07:52、トータルで53:10と聴きやすく、全体を通してストーリー性のある流れのようなものが感じられてアルバム構成もよく考えられており、統一感もあって、作品としての完成度は高いです。


最後にこれだけは書いとこ。本作は録音も素晴らしく優秀なんです。ひとつひとつの楽器の音がクリアで分離が良く音場に立体感と広がりがあるため、リスニングルームがひとまわり大きくなったような錯覚になるほど。いつもより少し音量を上げ、音楽に気持ち良く身を委ねていると「あー、極楽、極楽♪」となります。

これは、HELGE SUNDEが作曲家、編曲家、指揮者としての才能をいかんなく発揮した極上のビッグバンド作品ですね。今年聴いたアルバムのベスト10入りに決定!


御用とお急ぎでない方は、Helge Sundeのホームページへどうぞ。

http://www.helgesunde.com/


HELGE SUNDE ENSEMBLE DENADA / FINDING NYMO (ACT MusicVision 9492-2)

Ensemble Denada:


Frode Nymo (ss)

Borge Are Halvorsen (as, fl, afl)

Atle Nymo (ts, bcl)

Nils Jansen (bass saxophone, tubax, fl, contra alto clarinet)


Frank Brodahl (tp

Marius Haltli (tp

Anders Eriksson (tp, flh


Even Kruse Skatrud (tb)

Erik Johannessen (tb)

Arild Hillestad (tb)

Helge Sunde (tb)


Olga Konkova (p)

Jens Thoresen (el-g)

Per Mathisen (b)

Hakon Mjaset Johansen (ds)

Marilyn Mazur (perc)


Peter Baden & Helge Sunde (electronics)

Ida (Pida) Sunde (vocoder & vocals)

Henrik Rinde Sunde (snoring)


Conducted by Helge Sunde

入手先:キャットフィッシュレコード(通販)