THOMAS SAVY / ARCHIPEL | 晴れ時々ジャズ

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日々の雑感とともに、フランスを中心に最新の欧州ジャズについて書いています。

PIERRE DE BETHMANN(1965年、フランスのボローニュ・ビランクー生まれ)がピアノで参加するバスクラリネット奏者の初リーダー作ということで入手してみました。サイドメンは他にSTEPHANE KERECKI(b)(1970年9月2日パリ生まれ)(←どっかで名前見たたことあるな~と思ったら、PARIS JAZZ BIG BANDのベーシストでした)、KARL JANNUSKA(ds)(1975年12月31日、カナダ生まれ。パリ在住)、MICHAEL FELBERBAUM(el-g)(生年不詳、イタリア生まれ、アメリカ育ち。フランス在住)という面々。それぞれがリーダー作を出して活躍中のジャズメンばかりとあって、アンサンブルも素晴らしいです。

THOMAS SAVYをご存知の方はほとんどいらっしゃらないのではないかと思います。私もそうでした。で、少しググッてみましたら、THOMAS SAVYは、バスクラリネット以外にクラリネット、テナーサックス、バリトンサックス、フルートをマルチにこなすプレイヤーだということです。以下にTHOMAS SAVYのプロフィールを簡単に。

THOMAS SAVY(1972年、パリ生まれ)はパリの国立地方音楽院でクラリネットのクラシック奏法を学び、そこで1993年に受賞もしています。1994年からパリ国立高等音楽院のDEPARTMENT JAZZ ET MUSIQUES IMPROVISEESで、FRANCOIS JEANNEAU、HERVE SELLIN、JEAN-FRANCOIS JENNY-CLARK、DANIEL HUMAIR等の指導を受けて腕を磨き、そこで1997年に受賞。ジャズを学ぶことと平行して、リーダー、サイドメンとしてジャズクラブに精力的に出演。 -中略- ジャズのスモールコンボ、ビッグバンドはもちろんエレクトロまで、ライヴとレコーディングの両方で幅広く活動。ここ数年では、VINCENT ARTAUD / ARTAUD(B-Flat Recordings)、PIERRICK PEDRON / CLASSICAL FACES (Nocturne)、CHRISTOPHE DALSASSO / EXPLORATION (Nocturne)(←あ、コレ持ってるやん。ピンと来んかったけど(;^_^A)といったアルバムに参加しています。

さて、本作は2004年11月と2005年6月に録音、2006年にリリースされたフランス人マルチリード奏者THOMAS SAVYの初リーダー作。10曲全て彼のオリジナルで、彼が本作で演奏するのはバスクラリネット一本だけです。4ビートジャズから、8ビートロック、現代音楽的あるいはクラシック的な趣の即興ソロ、ごくゆったりとしたテンポの静かな楽曲まで様々な表情を見せていますが、散漫な印象は受けませんでした。
ではお気に入りの曲を中心に印象を書きましょう。
1曲目のVALSE EN T'ATTENDANTは、軽快なワルツ。中間部からしだいに盛り上がってエキサイティングに。
2曲目のROCK ONは、ハードで厳つい8ビートロック。悲鳴に似た超高音から肋骨を震わせる重低音までの縦横無尽なバスクラのソロがド迫力で迫ります。あ、それからギターの人、ソロのときは遠慮せんと思いっ切りブチ切れてくれたらええのよん(笑)
3曲目のPOUR PIERREは、バスクラの中~高音域を生かした素朴な美しさのある優しいメロディがルバートで軽やかに流れる曲。
一番のお気に入りは4曲目のSINGLE TRACK ROAD。7拍子を主体に変拍子と4ビートを組み込んだスピード感と都会的雰囲気がかっこええのなんのって。エネルギッシュでタイトな演奏が素晴らしく、特にKARL JANNUSKAのドラミングが光る。
これもお気に入り、6曲目の《ARCHIPEL, ARCHIPEL...》は、美しく、哀愁を帯びた叙情がステキ。優雅さと気品のあるバスクラ、少々翳のあるピアノソロがいいです。
8曲目のTHE DREAM OF THE KINGは、メルヘンチックなメロディかと思いきや、転調を繰り返しながら複雑怪奇で実にややこしい展開になって行くところが面白い。
10曲目のSOME OF THE THINGS WE AREは、バスクラとベースのデュオで、古きよき時代の雰囲気が漂う気楽な感じの4ビートジャズ。遊び心も見せるウォーキングベースと暖かな音色のバスクラがいい感じ。
THOMAS SAVYのバスクラはコントロールが効いており、不安定なところは微塵もありません。滑らかな運指で高音域から低音域まで綺麗でまろやかな音が出ていますし、ジャズには欠かせない(?)ヘンな音だって任せとけ!なのです。バスクラ一本をフロントに据えたジャズ作品を聴いたのは初めてだったのですが、なかなか素晴らしいのではないかなと思いました。作曲の腕も確かで、聴き応えのある楽曲が揃っています。
それから、サイドメンの中で初めて演奏を聴いて注目したのがドラマーのKARL JANNUSKA。この人上手いですね。少々手数が多くセンスの良い凝ったドラミングで聴き応えがあり、しかも出しゃばらない。曲の変化に合わせてムードを創っていくのが上手いし、オカズの入れ方も私好み。今度KARL JANNUSKAの新作(とか気になる参加作)が出たら是非聴いてみよっと。
御用とお急ぎでないかたはPIERRE DE BETHMANNのHPをご覧ください。
            http://www.pierredebethmann.com/
こちらはTHOMAS SAVYが所属するTHE PEPPER PILLS BIG BAND(←ヘンな名前)のHP。どんな音なんでしょう。
            http://www.penelope04.com/PPBB/Bienvenue%20.html
MICHAEL FELBERBAUMのHPもありました。
            http://www.michaelfelberbaum.com/

■THOMAS SAVY / ARCHIPEL (Nocturne NTCD 382)
THOMAS SAVY (bcl)
MICHAEL FELBERBAUM (el-g)
PIERRE DE BETHMANN (p)
STEPHANE KERECKI (b)
KARL JANNUSKA (ds)

VINCENT ARTAUD (artistic director)
入手先:キャットフィッシュレコード(通販)