HERVE MESCHINET / NIGHT IN TOKYO | 晴れ時々ジャズ

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日々の雑感とともに、フランスを中心に最新の欧州ジャズについて書いています。

サックスやトランペットなどに比べると、フルートはジャズ界の花形とは言い難い楽器なのかもしれません。フルート奏者のリーダー作というのも少ないような気がしています。
本作のリーダーHERVE MESCHINETは、NICOLAS FOLMER(tp)とPIERRE BERTRAND(sax, fl)率いるPARIS JAZZ BIG BANDの主要メンバーの一人でもありますが、本作はそのPARIS JAZZ BIG BANDのピアニストでもあるALFIO ORIGLIOが参加するジャズフルート作品ということで入手してみました。ALFIO ORIGLIOも、私のお気に入りドラマーANDRE CECCARELLI参加のリーダー作など数枚をリリースしているなかなか素晴らしいピアニストなんですよ。つい最近、ASCENDANCES(Cristal Records)という新作も出しています。

さて、HERVE MESCHINETはフランスのサックス、フルート奏者。リーダー作CANNONBLUESで1998年度のDJANGO D'ORを受賞しておりますが、そうすると本作はおよそ8年振りのリーダー作ということになるようです。全10曲のうちHERVE MESCHINET作曲が2曲、ALFIO ORIGLIO作曲が2曲、NICOLAS FOLMER作曲が1曲、その他スタンダード1曲などで、とてもスマートなジャズフルート作品になっています。

1曲目のIL EST 5 HEURES, PARIS S'EVEILLE.は軽快な4ビート曲で、ROGER BOURDIN(フルート奏者らしい)に捧げられています。リズム感抜群でノリが良いのはピアノのALFIO ORIGLIOをはじめとするバッキングが素晴らしいからなんですね。ピアノソロに入ってトリオだけの演奏になるところなんかもエエ感じです。ドラムスのCHRISTOPHE BRASは名前聞くのも初めてですが、この人、他の曲でもなかなかいい演奏しています。
お気に入りは2曲目、NICOLAS FOLMER作曲のTANGO。もちろんタンゴなんですけれど泥臭さがなく洗練されていて、ラテンの明るさと哀愁が交錯する美しいタンゴになっており、聴き応えのある1曲。ドラムスのほか、カホン(ペルー発祥の箱型打楽器)などのパーカッション類やハンドクラッピングによるリズムが耳に心地よく響き、全体のアンサンブルも素晴らしいです。
3曲目はTABLEAUX DE DANIEL HUMAIRというタイトルですが、DANIEL HUMAIR(ds)の肖像画なんていうのは、お顔がちょっと怖くないですか?(笑)ムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」に出てくる例の有名なフレーズをテーマに借り、モーダルにキメています。ALFIO ORIGLIOのピアノもかっくいー!
4曲目はHERVE MESCHINETが書いたタイトル曲で、ドラムス、エレクトリックベース、フェンダーローズがファンキーで強烈なリズムを繰り出しているNIGHT IN TOKYO。都会的で洗練されたHERVE MESCHINETのフルートときたら、めっちゃクールで最高のかっこよさなのです!
もうひとつのお気に入りはGILLES RENNE作曲の9曲目、雷鳴を思わせるドラムを合図に始まるLE DERNIER PYGMEE(英語ですとTHE LAST PIGMYです)。バラフォン(木琴やマリンバの祖先)というアフリカの楽器を用いているのが特徴の変わった趣の曲で、耳慣れない不思議な音階を使っているせいか、聴いているうちに部屋がアフリカのジャングルになって湿度が一気に上昇し、逆に室温は下がるような気がします。低いフルートの音色はおそらくアルトフルートなのでしょう。歌いながらフルートを吹くことによって、ヴォイスの混じったダーティーな音色を出しているのが面白い。豊かな表現力で聴き手のイマジネーションを刺激してくれるこういう曲は大好きです。
*ピグミーって何?というかたは↓こちら、ウィキペディアのページをご覧くださいね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%82%B0%E3%83%9F%E3%83%BC

最後に苦言を。
10曲目、DJ CHEERSによるEARLY MORNING IN TOKYO REMIXは、打ち込みによるサウンドで好きではありません。作品をトータルとして見た場合、むしろこの曲は無いほうが良かったのではないでしょうか。
それから!
本作は2006年リリースだと思うのですが、録音年月日やスタジオ名などが記載されておらず、プロデューサーらしき名前も見当たりません。CDの盤面にいたってはタイトルはおろかアーティスト名さえもないノッペラボウで、何かのロゴがぽつんとあるだけという有様。せめてもの救いはコンパクトディスクの表示がちゃんとあること。う~む、これはちょっと、困るのですよ。CRISTAL RECORDSは優良盤をたくさん出しているフランスのレーベルなのですが、もう少し気を配って欲しいなと思いました。

いかがでしょう、これからの季節、暑苦しいテナーサックスをしばらくお預けにして、クールで洗練されたジャズフルート作品で涼むってのは。
御用とお急ぎでないかたはHERVE MESCHINETの↓HPへどうぞ。
                  http://www.rv-meschinet.com/

■HERVE MESCHINET / NIGHT IN TOKYO (Cristal Records CD06-01)
HERVE MESCHINET DE RICHEMOND (piccolo, soprano & alt flutes)
ALFIO ORIGLIO (p, Fender Rhodes)
CHRISTOPHE LEVAN (b, el-b)
CHRISTOPHE BRAS (ds)

XAVIER SANCHEZ (cajon, hand clapping) (2, 7)
CARL SCHLOSSSER (soprano flute) (8)
GILLES RENNE (key, g) (9)
OLIVIER RENNE (ds) (9)
ALY KEITA (balafon) (9)
CHRISTOPH GAUSSENT (g) (10)
DJ CHEERS (programming, drum machines) (10)

入手先:キャットフィッシュレコード(通販)