DANIEL MILLEの名前は知っていたのですが、リーダー作を聴くのは初めてです。購入の動機はSTEPHANE BELMONDO、REMI VIGNOLO、ERIC LEGNINIの凄腕が参加していることから。
最初に申し上げますが、この作品は実に素晴らしい!哀愁路線の一言で片付けてしまえるような底の浅い音楽とは訳が違います。
全10曲のうちDANIEL MILLE作曲のオリジナルは7曲。他にASTOR PIAZZOLLA(accor)作曲のOBLIVION、ブラジル・ポピュラーミュージックの巨匠、CARTOLA作曲のAS ROSAS NAO FALAMなどを取り上げていて、どの曲もそれぞれに素晴らしい出来です。突き抜けた明るさやスピード感、ダイナミズムといったものはほとんどありませんが、詩情豊かで、慈愛と優しさに満ちたDANIEL MILLEの独自の音楽世界は、現代人が遠くへ忘れ去ってしまった大切な何かを思い出させるような、繊細で美しいユートピアを表現しているかのようで心を打たれます。
DANIEL MILLEはもちろんのこと各人の素晴らしいソロが聴けますが、一貫した美意識に貫かれたそれぞれの演奏は必要以上の自己主張や技巧に走っていません。また、全体を通してアンサンブルを大切にしているという印象もあり、曲によって弦楽四重奏を効果的に配するなど、音作りへの並々ならぬこだわりが感じられる作品です。
クレジットにあるaccordinaという楽器はボタン式の鍵盤ハーモニカ(ピアニカみたいな)のことだそうで、ハーモニカに似た郷愁を誘う音色がなんともいえない雰囲気を醸し出しています。またvoix (vo)とありますが、歌っているわけではなくて、繊細で透き通った感じのヴォイスをアコーディオンの音に溶け込ませるような感じで部分的にシンクロさせています。
1(前奏)、2曲目のタイトルナンバー、APRES LA PLUIEは、哀愁を帯びたメロディーを持つゆったりとしたテンポのタンゴ調。部分的にアコーディオンとユニゾンでかぶせている悲しげなヴォイスは、時にはオオカミの遠吠えのようでもあり、時には猫の甘えた鳴き声のようでもある、なんとも奇妙で不思議な響きなのですが、これがまた良いのです。弦楽四重奏の入る素晴らしいアンサンブルが、DANIEL MILLEワールドへぐんぐんと引き込んでいってくれます。
3曲目はJEAN-PIERRE MAS作曲のJUSTE AVANT。この曲の聴きどころは大きくフィーチャーされたREMI VIGNOLOのベースソロ。彼のラインの取り方やタイム感が素晴らしいのはもちろんですが、アドリヴの歌いっぷりも実に見事なREMI VIGNOLOには今回もまた聴き惚れてしまいます。やはりこの人は只者ではありません。DANIEL MILLEの鍵盤ハーモニカの音色がなんともいえず、胸を締め付けられそうな感じです。
5曲目のLA VALSE DES ADIEUXはDANIEL MILLEのオリジナルで、彼のアコーディオンソロが堪能出来ます。素晴らしくコントロールが効いていて、アコーディオンそのものがまるで人間のように歌っている感じがします。アコーディオンひとつでこれほどまでに繊細で美しい音楽が表現出来るというのは驚異的なのではないでしょうか。ここでもまた、あの不思議で透き通るようなヴォイスを聴かせています。
6曲目、DANIEL GOYONE(p)作曲のOURO PRETOは美しいメロディラインが印象に残る曲。後半はヴォイスも加わり、アンサンブルの妙で聴かせていて素晴らしいです。
8(前奏)、9曲目、DANIEL MILLEのオリジナル、LES SOIRES DE PLEINE LUNEはゆったりした5拍子のタンゴ。STEPHANE BELMONDOの極渋なトランペットソロと、そのアドリヴに絶妙に絡みつくERIC LEGNINIのバッキングが作り出す苦みばしったジャズフィーリングがなんともいえず素晴らしい!この作品でSTEPHANE BELMONDOとERIC LEGNINIの相性が抜群だということが良ーく分かりました。この2人には今後また違うアルバムで、ぜひとも共演してほしいものです。後半は弦楽四重奏も加わり、美しいカデンツァが余韻を残します。
DANIEL MILLEは、その卓越した演奏技巧もさることながら、唯一無二の音楽世界を実に繊細に美しく表現しているという点でも、稀に見る才能を持ったアーティストなのではないでしょうか。その優しく、憂いをたたえたサウンドに身を任せ、感動とともにアルバム一枚を聴き終わる頃には、タイトルのAPRES LA PLUIE(雨上がり)のように心洗われて清々しく穏やかな気持ちになれること請け合いです。
ああ...それにしてもDANIEL MILLEは、なんちゅう素晴らしいアーティストなんでしょうか!もっと早くに知っておくべきでした。
御用とお急ぎでないかたはDANIEL MILLEの↓ホームページへどうぞ。
http://www.daniel-mille.com/
■DANIEL MILLE / APRES LA PLUIE (abacaba/Universal Music France 983 321-1)
DANIEL MILLE (accordion, vo, accordina)
STEPHANE BELMONDO (flh, cor, tp)
REMI VIGNOLO (b)
SYLVAIN ROMANO (b)
ERIC LEGNINI (p)
PASCAL REY (ds, perc)
String Quartet
MARC AIDINIAN (vn)
VERONIQUE RAGU (vn)
CATHERINE PACHEU (va)
ISABELLE CORDIER (vc)
入手先:キャットフィッシュレコード(通販)
最初に申し上げますが、この作品は実に素晴らしい!哀愁路線の一言で片付けてしまえるような底の浅い音楽とは訳が違います。
全10曲のうちDANIEL MILLE作曲のオリジナルは7曲。他にASTOR PIAZZOLLA(accor)作曲のOBLIVION、ブラジル・ポピュラーミュージックの巨匠、CARTOLA作曲のAS ROSAS NAO FALAMなどを取り上げていて、どの曲もそれぞれに素晴らしい出来です。突き抜けた明るさやスピード感、ダイナミズムといったものはほとんどありませんが、詩情豊かで、慈愛と優しさに満ちたDANIEL MILLEの独自の音楽世界は、現代人が遠くへ忘れ去ってしまった大切な何かを思い出させるような、繊細で美しいユートピアを表現しているかのようで心を打たれます。
DANIEL MILLEはもちろんのこと各人の素晴らしいソロが聴けますが、一貫した美意識に貫かれたそれぞれの演奏は必要以上の自己主張や技巧に走っていません。また、全体を通してアンサンブルを大切にしているという印象もあり、曲によって弦楽四重奏を効果的に配するなど、音作りへの並々ならぬこだわりが感じられる作品です。
クレジットにあるaccordinaという楽器はボタン式の鍵盤ハーモニカ(ピアニカみたいな)のことだそうで、ハーモニカに似た郷愁を誘う音色がなんともいえない雰囲気を醸し出しています。またvoix (vo)とありますが、歌っているわけではなくて、繊細で透き通った感じのヴォイスをアコーディオンの音に溶け込ませるような感じで部分的にシンクロさせています。
1(前奏)、2曲目のタイトルナンバー、APRES LA PLUIEは、哀愁を帯びたメロディーを持つゆったりとしたテンポのタンゴ調。部分的にアコーディオンとユニゾンでかぶせている悲しげなヴォイスは、時にはオオカミの遠吠えのようでもあり、時には猫の甘えた鳴き声のようでもある、なんとも奇妙で不思議な響きなのですが、これがまた良いのです。弦楽四重奏の入る素晴らしいアンサンブルが、DANIEL MILLEワールドへぐんぐんと引き込んでいってくれます。
3曲目はJEAN-PIERRE MAS作曲のJUSTE AVANT。この曲の聴きどころは大きくフィーチャーされたREMI VIGNOLOのベースソロ。彼のラインの取り方やタイム感が素晴らしいのはもちろんですが、アドリヴの歌いっぷりも実に見事なREMI VIGNOLOには今回もまた聴き惚れてしまいます。やはりこの人は只者ではありません。DANIEL MILLEの鍵盤ハーモニカの音色がなんともいえず、胸を締め付けられそうな感じです。
5曲目のLA VALSE DES ADIEUXはDANIEL MILLEのオリジナルで、彼のアコーディオンソロが堪能出来ます。素晴らしくコントロールが効いていて、アコーディオンそのものがまるで人間のように歌っている感じがします。アコーディオンひとつでこれほどまでに繊細で美しい音楽が表現出来るというのは驚異的なのではないでしょうか。ここでもまた、あの不思議で透き通るようなヴォイスを聴かせています。
6曲目、DANIEL GOYONE(p)作曲のOURO PRETOは美しいメロディラインが印象に残る曲。後半はヴォイスも加わり、アンサンブルの妙で聴かせていて素晴らしいです。
8(前奏)、9曲目、DANIEL MILLEのオリジナル、LES SOIRES DE PLEINE LUNEはゆったりした5拍子のタンゴ。STEPHANE BELMONDOの極渋なトランペットソロと、そのアドリヴに絶妙に絡みつくERIC LEGNINIのバッキングが作り出す苦みばしったジャズフィーリングがなんともいえず素晴らしい!この作品でSTEPHANE BELMONDOとERIC LEGNINIの相性が抜群だということが良ーく分かりました。この2人には今後また違うアルバムで、ぜひとも共演してほしいものです。後半は弦楽四重奏も加わり、美しいカデンツァが余韻を残します。
DANIEL MILLEは、その卓越した演奏技巧もさることながら、唯一無二の音楽世界を実に繊細に美しく表現しているという点でも、稀に見る才能を持ったアーティストなのではないでしょうか。その優しく、憂いをたたえたサウンドに身を任せ、感動とともにアルバム一枚を聴き終わる頃には、タイトルのAPRES LA PLUIE(雨上がり)のように心洗われて清々しく穏やかな気持ちになれること請け合いです。
ああ...それにしてもDANIEL MILLEは、なんちゅう素晴らしいアーティストなんでしょうか!もっと早くに知っておくべきでした。
御用とお急ぎでないかたはDANIEL MILLEの↓ホームページへどうぞ。
http://www.daniel-mille.com/
■DANIEL MILLE / APRES LA PLUIE (abacaba/Universal Music France 983 321-1)
DANIEL MILLE (accordion, vo, accordina)
STEPHANE BELMONDO (flh, cor, tp)
REMI VIGNOLO (b)
SYLVAIN ROMANO (b)
ERIC LEGNINI (p)
PASCAL REY (ds, perc)
String Quartet
MARC AIDINIAN (vn)
VERONIQUE RAGU (vn)
CATHERINE PACHEU (va)
ISABELLE CORDIER (vc)
入手先:キャットフィッシュレコード(通販)