こんにちは、
共感覚セラピスト希里葉です♪
…私は、旅に出ました。
名残惜しそうに、
なかば恨めしそうに、
寂しそうに、
私のことを見送った、
あの人を、ふりかえりながら。
到着地は賑やかでした。
ただ、そこは、暗闇のなかでした。
周りに、自分と
同じような境遇の子もいたけど、
あまりにも慌ただしく、
出たり、入ったりを繰り返す、
その騒々しい場所の中で、
私は全然、落ち着けませんでした。
もう、私は、このまま、
ここに居続けるしかないのだろうか。
なかば、あきらめていた時、
頭上に、光が差しました。
大きな手が差し出され、
私はその手に乗って上昇し、
明るい場所に、出たのです。
やっと、また、動き出した！
そう、思いました。
しかし、それもほんの一瞬。
私を救いだした手の主は、
私を一瞬、見たあと、
そのまま、別の人に、
私を、差し出したのです。
…私は、ショックでした。
しかも、差し出された側の人も、
私のことなんか、見向きもしないで、
早々に、また、
私を暗闇のなかへと、
押し込めたのです。
暗く、埃っぽい部屋でした。
辺りには、何だか得たいの知れない、
ぐちゃぐちゃに丸めた紙が散らばり、
古びた金属臭が漂っています。
窓もなく、換気もされない部屋でした。
そのくせ、たてつけが悪いのか、
やたらと揺れるのです。
ここだったら、
さっきの、賑やかな…
私と似た子達が、いっぱいいた、
あの暗闇の方が、まだましだったかも。
そう、思いました。
もう、旅は疲れます。
皆の、私を見る目に、疲れるんです。
あんなに名残惜しそうに
見つめてくれる人もいれば、
さっきのように、雑に扱われて、
私のことなんか、
見向きもせずに、さっさと、
暗闇に押し込める人もいます。
皆、私のことが好きだと、
言ってくれます。
でも、私、それを感じることが、
あんまりできません。
皆、私のことが、大切だっていいます。
だけど、
こんな環境に押し込められて、
私が大切だ、なんて言われても、
やっぱり、意味不明です。
たまに、そうですね。たまに。
私のことを、
とても喜んで、
抱き締めてくれる人がいます。
ニコニコの笑顔で、
嬉しそうに、ありがとう、
ありがとうって、
そんな時は、私も…。
少しは、自分が、誇らしくなります。
でも…。
私って、いったい、
何なんでしょうね。
私がいないと困るって言うけど、
皆、私から去っていくじゃないですか。
まあ、私は、同じところに
居続けることは苦しいから、
旅は好きですけど、ね？
…。ねえ、
私って、愛されているのでしょうか。
どう思います？
「…。もうすぐ、あなた、出番だから」
え？
「もうすぐ、あなた、
めっちゃ喜ばれたり、
笑顔で迎えられたり、するから」
え、え？
あなた、あなた、預言者さんですか？
「いや。多分誰でも、これは解ると…」
ほんとですか？
だったら、嬉しいなあ。
私を見て、笑顔になって、
喜んでくれる人に、会えるんですね！
「うん。まあ、運が良ければだけどね。
確率的には、ナイスシーズンよ。
多分…そうね、５日後には。」
そうなんですね！！
…じゃあ、少しは希望を持って、
生きてみます！！！
ありがとうございました！
良いお年を！！
「良いお年を」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
そうして私は、また、
旅を続ける千円札さんとの会話を終え、
お見送りしたのでありました。