行動することのリスクを過大評価するということ | 筋肉ドクターの気まぐれ日記

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Killing Timeに日記を書き候

 

 

今まであった話で、人間の「行動することのリスクを過大評価する」という性向を感じる話をしましょう。

 

まず、高齢女性が多いわけですが、膝が痛くて歩行も困難になってきたと来院されます。

腫れて水が溜まっている時もあれば無い時もあります。

で、レントゲンで変形が強ければ、他院で手術を勧められたとおっしゃいます。

 

で、下肢の筋力訓練をしてもらいます。

もちろん、最初なので全然軽重量でしかできません。

すると、その場で(これは何故が知りませんが)「楽になった」とおっしゃいます。

通常、筋トレをしてもらうと終わった瞬間に、脚がヘロヘロになりました、パンパンですなどと、疲労感を訴える場合が多いのですが、何故か膝の痛い方は楽になられます。

 

そして、次週に来られます。

数日間は楽だったのですが、また痛くなってきたと1週間経つと概ねの方はおっしゃいます。

で、前回よりは運動強度を上げた運動がしてもらえます。

すると、「また楽になりました」とおっしゃいます。

 

で、このまま強くなって、どんどん楽になる方がほとんどです。

 

しかし、ここで筋力増強の伸びがそれほどではなく、数回後でもまだ片脚で体重も蹴られないくらいの筋力の方がおられます。

毎回、運動強度を上げていけているのはもちろんですが。

 

すると、「運動してから痛くなってきた」とか言い出されます。

 

もともと、何もしなくても痛くて歩けないと来られていたわけです。

しかも、当初よりも数十キロくらいは蹴る力が強くなっていて、現在も向上中だったりします。

なのに、「運動してから痛くなってきた」とおっしゃるのです。

 

こういう方って、当初から「変な動きして膝が痛くなった」と来院されます。「運動不足が過ぎて脚が弱って痛くなってきました」と来院される方はまずいません。要するに痛くなるのは行動したせいだと決める人間特有の性向に頭が支配されているんですよね。

どんな変な動きしたんですか?と聞くと、普通にあるいていて急にクリッてなって痛くなったとか、全然変な動きしてないんですよね。運動習慣も無く動いてなかっただけで。

 

で、筋力がしっかり上がって楽に動けるようになる前にドロップアウトされます。

 

こういう方、多くは無いですが、まあまあおられます。

もう、人間の性向に脳みそが支配されていて、自分の経験の記憶でさえ、その支配に勝てないんだなと。

 

もともと、運動不足、筋力不足で関節痛が起こっていても、痛くなったのは変な動きしたからだ、で、運動して改善していてもやっぱり運動したら痛くなったと。

いやいや前からですやんってことなんですが、行動するリスクを過大評価する性向に脳みそが支配されているので、記憶もそれに合わせて変わっちゃうわけですね。

 

人間の記憶は、ビデオカメラで撮ったように記憶されるわけじゃないんですよね。記憶する時と保存する時と引き出す時の気持ちや環境の影響を受けて変わっちゃうんですが、好例ですね。