手紙 | 色塾BLOG-

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日々のビジネス・社会に対する思いや、起業に向けた考え、読書に対する感想など様々な話題を、海外で働くマーケターとしての第3者の視点から展開。

中国で汗水流して、日本の大企業の中国への進出に対してコンサルティングをされている会社の社長さんから、以下のようなメールを頂きました。

前回の記事が誤解なく伝えられるように、その際のやり取りを記事にすることが良い手段だと考え、公開することにします。

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私は色塾さんのいろいろな考え方に強く共感する事が多いのですが、一点だけ、腑におちないところがあり、まえまえから聞いてみたいと思っていました。

それは伏見さんの考え方の基軸がつねに日本におかれている事です。お正月の色塾さんのブログを読み、1兆円企業を創造する事や教育事業に携わりたいという事は、素晴らしいと思うのですが、なぜそこに「日本」という足かせがかけられるのかが不思議です。

1兆円事業を作るにしても、教育事業を立ち上げるにしても、出発点や、貢献対象を「日本」という事にしてしまうととたんにスケールが委縮してしまい、現実味が薄れてしまいます。サーゲイ・ブリンが母国であるロシアや、ルーツであるユダヤ人にこだわっていたら、今日のようなグーグルを作る事は出来なかったと思います。カルロスゴーンの企業家としての価値も、レバノンやブラジル、フランスとは関係がないものだと思われます。

「国歌」というものが世界を動かす中核思想であった帝国主義の時代、明治維新の時代とは違い、今後は国歌単位での思考はますます薄れていくだろう、というのが僕の考え方の根底にあるものです。

それにつれて「日本」という概念は、今後は国力としては衰退していき、10年後、20年後くらいにはコミュニティとしての「日本」と、オリジナリティあふれるニーズを持つが、規模としては小さい「日本市場」とが残るのだと予測しています。

そうなった時に、国歌としての日本とその国力にこだわる考え方は、むしろビジネスをやっていくにあたっての邪魔になるのではないか。もちろん、日本人としてのアイデンティティやプライドは持つべきですが、起業家、事業家としてはどうなんだろう、という疑問を僕は持っています。

色塾さんが本気で1兆円を超す事業を作り上げ、日本政府をも動かす実力をつけたいのなら、逆説的ですが、「日本」という観点をいったん忘れたほうがいいかもしれません。グーグルの目的が「中国政府と戦う」であれば、グーグルの事業は、今よりもはるかにスケールの小さいものになっていたはずです。(この対極にあるのがディズニーや三菱商事かもしれません。これらの企業は徹頭徹尾、愛国者という立場から国歌に貢献する為に設立され、成長したというルーツを持っています。しかしそのスタンスがこれからの時代にあうかどうかは微妙です。)
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>大変お忙しい中、丁重なメールをいただきましてありがとうございます。
「日本」という観点に縛られているのではないかというご指摘ですが、私の中では「日本」という観点に縛られているという意識は実はありませんでした。でも無意識の中でやはりそこから抜け切れていないという危機感を感じているものと思います。であるからこそ、中途半端で終わった1年の海外での仕事をもう一度したいと強く思っているのだと感じます。

僕の極限の野望は、正確に伝えようとするならば、100兆以上の売り上げを持つ、全世界70億人の顧客に対して、グローバルサービスを提供する、全193国籍の社員が働くコミュニティであり、事業です。

ただ、私の現在の小さな力量ではどうしても「バカの壁」に塞がれ、1兆・2億人までしか想像ができないということです。それを引き継いだ経営者が2兆・4兆・8兆・16兆と、倍々になっていくような企業を創りたい。そのためには、ストック型のビジネスでなく、プラットフォームとしてビジネスが蓄積していくうような業態をしたいのだと選択しています。であるからこそ、

①規模の大きさ・接する顧客数の大きさ
②グローバル性
③プラットフォーム型

であることを選択したいと考えています。

そういう意味で、私は国境には囚われる意図は全く持ち合わせておりませんし、むしろ国境をなくすことのほうが私の意図です。国境という横軸に対して、事業=新しい形でのコミュニティという縦軸を通すことが目的になります。

そのうえで、日本という言葉がでてくるのは、愛国心であり、日本が世界を席巻する力を持っていると盲目的に信じるからです。

メールを頂いて感じたことは、僕自身「売上」という指標にはもしかしたら関心がないかもしれません。政府=国家というものに対抗できるパワーを備えることが課題であり、もしかしたら日本ではビジネスを行ってさえいない2ちゃんのようなサービスがグローバルに展開されるならば、2ちゃんの言葉が世界語になり、2ちゃんの文化が世界の文化になる。そういうことも自分のビジョンの範囲内として考えられるかもしれません。そこに売上があるという概念は本質的には自分が求めるところではないかもしれません。

以上が、考え方といった意味での答えになるかと思いますが、御理解いただけましたでしょうか。私のようなもののために、時間を取ってチャレンジをしていただきまして感謝しております。今後とも是非どうぞよろしくお願い致します。
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という返答をしました。

以上。おわり。笑