今週にも共同親権(民法の改正案)が衆議院を通過する予定ですが、共同親権が何たるかを知って、今やっている朝ドラ「虎に翼」の「(戦前の)女性は結婚すると無能力者になるを思い出した。

 

「虎に翼」は日本初の女性弁護士・日本初の女性裁判官(女性裁判長)の三淵嘉子をモデルにした主人公のドラマです。

 

時は1931年(昭和6年)、主人公の寅子(ともこ。通称トラコ)は実家に下宿する書生にお弁当を届けに大学の夜間法学部に行ったら偶然、講義中の先生の「女性は結婚したら無能力者になる」という講義を聞いてしまいました。

 

教室の扉の前で「はぁ!?」と絶叫する寅子。

(私も『はぁ!?』でした)

 

ここで言う「無能力者」というのは「自分の意志では契約や離婚などができない人」という意味です。

戦前は既婚女性は夫の許可がないとそういうことができませんでした。

ただし、日常の家事や育児は(いちいち夫の許可を取っていられないので)妻の自己判断でやれました。

 

さてここで2024年の「共同親権」の話です。


【2024年4月17日追記:以下では新聞記事に基づいた説明がなされています。しかし、共同親権の問題点はこちらのラジオの報道番組のポッドキャスト(放送をそのまま掲載)に詳しいです。

https://open.spotify.com/episode/5i07AfAI9NeQAXIpXVaQNz?si=tl-sV9u7RcqekvqCJr-MSg


ブログには「DVや虐待で離婚したら単独親権」って書いちゃったけど(あえてそのままにしてます)、新聞の説明が不正確だったのでこんな書き方になってしまいました。

(ラジオの報道だってもしかしたら不正確かもしれないですけど、そこは各自のご判断で)


「離婚後は(別居親が)DVも虐待もしなさそうなら共同親権認める」ってどういうことだよ?!


そりゃほとんどのケースは「しなさそう」だろ?!

別居してるんだから。


(詳しくは上のポッドキャストで聴いて下さい)】



この改正案が可決成立すると、離婚する夫婦は子どもの親権を「単独親権(父または母のみが親権を持つ)」か「共同親権(父母ともに親権を持つ)」を選ぶことができるようになります。現行法では単独親権のみです。

 

私は共同親権にも離婚の事例にも詳しくないのですが、共同親権が導入されると「子供と同居する親(ほとんどの場合母親なので母親と仮定します)」の判断だけでは特定のことができなくなる可能性があります。というのも、「子供と同居してない親(ほとんどの場合父親なので父親と仮定)」の同意も必要になるからです。


一方で「日常の行為」と「急迫(緊急の場合)」は同居親だけの同意だけで以下のような事柄を実行できます。


「日常の行為」の例(2024年4月13日 東京新聞より)

  1. 子供の習い事や塾の契約(始める、辞める)
  2. 子供のワクチン接種

緊急の場合できることは、以下の通りです(2024年4月13日東京新聞より)。

  • 緊急手術
  • 子供の入試の合格発表後の入学手続き

といった場合は同居親の同意だけでOKだそうです。


しかし「日常の行為」の具体例がよく分かりません。


「共同親権になると別居親の同意もないと子供の携帯電話が契約できなくなる、子供のパスポートが取れなくなる」とX(旧Twitter)で言ってる匿名のユーザーもいますが、本当にそうなるのか私には判断がつきません。


そもそも誰が何を「日常の行為」あるいは「緊迫」だと決めるのでしょうか?


母親が「日常の行為」だと思って、子供の高校入学祝いにスマホを契約したとしても

後から父親にバレたら「俺の同意無しでそんなもの契約するな?!」ってなるかもしれない。


しかし今時スマホがないと友達も作れないかもしれない、学校の連絡網(死語。今はグルーブLINEでしょうか?)も回ってこないかもしれない 。


だから中3の3月や高1の4月にスマホ契約するなら「緊迫」に当たるんじゃないかと私は思うのですが、本当に誰の判断で「緊迫」に当たるのかどうか決めるのでしょうか?


また、離婚原因が児童虐待やDVの場合は被害者の単独親権が認められるそうです。

 

(以上、2024年4月13日の読売新聞朝刊、東京新聞朝刊の記事を参考にしました)

 

とはいえ、DVの中には暴力を使わないものもあります。暴言を吐く、物に当たるなど「精神的DV」がそうですが、そのような場合は証拠を残しにくいうえ、裁判でもDVだと認めてくれない可能性もあります。

 

そもそも「離婚」って多くの場合、DVや児童虐待がなくても「もうこの人(の家族)とは一緒にやっていけない、縁を切りたい」と我慢の限界が来てするものです。

 

関係を修復できなくて離婚に至ったのですから、母親(同居親)が父親(別居親)と連絡を取って事情を説明して同意を得るとか


・・・ストレスだわ、無理だわ、法律によるいじめじゃないですか!?

 


父親からの嫌がらせで子どもの受験(本人が希望している)をさせないというのも起こりえます。

 (大学受験幼稚園〜高校受験の願書にも親権者のサインが必要だとしたら。 大学受験はほとんどの場合18歳以上が受験するから親権者のサインは恐らく要らないはず)


元配偶者の同意を得なければ子どもの何かを決められないという事態は次々に襲ってくることでしょう。

 

こういうのを知って

「共同親権って、女性を戦前同様の無能力者にする法律だな」

って思いました。

 

だってほとんどの場合、離婚して子どもを引き取るのは母親です。

 

(共同親権が導入されれば養育費の不払いが減るという意見もあるそうですが、信じられません。

共同親権ではなく養育費の強制天引き(税金・社会保険同様)を導入しないと、養育費なんて適切に支払われません)

 

共同親権は先進国の多くで導入されているそうですが、オーストラリアでは見直しの動きもあります(2023年2月のクローズアップ現代より)

2023年2月28日(火) 「どうなる離婚後の子育て 子どもの幸せのために」

 

一口に「先進国」といってもその国の養育費の支払い率とか、離婚した両親の意見が割れたときに第三者機関が仲裁して子どもの利益に適った選択ができるようになる制度があるかどうかとか、国によって事情が違います。

 

日本で共同親権が導入されても上のような制度も導入されるのか?


されたとしても建前だけで、本当に子ども本人や親が使いやすい制度になるのか? 不信感しかありません。

 

日本の共同親権推進派って、女性の人権を制限したい宗教右派、アンチフェミ、ネット右翼が多いんじゃないかと思う今日この頃です(これはあくまで個人の意見です)

 

参考:宗教右派とフェミニズム ポリタスTV・山口智美・斎藤正美・著

(以下、引用)

2022年7月8日に発生した安倍晋三元首相の銃撃事件。

これを受けて企画・配信された『ポリタスTV』の「宗教右派と自民党の関係――ジェンダーと宗教」(前篇・後篇)は、5日間限定の無料公開で10万回以上再生され、大きな反響を巻き起こした。

この配信コンテンツをもとに、全編書き下ろしでジェンダーやセクシュアリティ、家族をめぐる政治、それと宗教右派との関わりをまとめるのが本書である。

1990年代から2000年代初頭のバックラッシュから、安倍政権以後の家族や女性やLGBTをめぐる政策と右派・宗教との関係までを、具体的な政策や運動、テーマにフォーカスして解説し、フェミニズムの立場・視点から問題点を検証する。

知られざる宗教右派の実像と1990年代から現在まで続く苛烈なバックラッシュの実態を明らかにする問題提起の書。

以下、アマゾンのレビューより引用(私の方で太字にしました)

違和感に対して「後引き」ができるようになる本 (amazon.co.jp)

☆5にしましたが、正確には☆4.5くらいだと思います。それはこの本が今までにないだけ宗教右派が如何に日本社会におけるマイノリティと呼ばれる属性を有する人々を攻撃してきているのか詳細を記しているだけではなく、その原因に「宗教右派があるんだよ」と初学者のためにわかりやすくまとめた一冊であることが先ず、「大事!」だと感じたからです。

☆0.5マイナスとしたのは「それでもまだまだ点が点である部分がある」という問題が生じていると感じ、それを継続して補足する何か(本かもしれないし、それこそポリタスTV(ネットメディア)かもしれないし、ニュース番組かもしれない)が必要だと思います。

日本政治が打ち出す様々な政策の後ろ側に宗教右派的考えが潜んでいて、それがマイノリティのためになっていないどころか、日本社会そのものをめちゃくちゃ後退させていることは肌身で感じる自明の理なのだけれど、「なんでそんな方向にいっちゃうの?!」という時にこそ、この本が傍にあって、もしかして「宗教右派的考え?」と自分でも気づき、闘うための一冊だと思います。

個人としては購入した後、先ず92ページから始まる一章と画像を味わって欲しい。

小さな項目がまとまっている一冊のため、商品ページの詳細にある「目次」で、気になる言葉があったのなら読んでみる、というのも良いと思います。なんども言いますが「宗教右派」に関する問題について、「よくわからない人」にこそ良い一冊だと思います。


追記


さらに、最近の共同親権問題と絡め、政治批判につなげる人もいる。SNSでのこうした動きは一部少数とはいえ、そういう盛り上がりがドラマの見られ方のバランスを崩したりもするのだ。社会的なテーマを持ってくる場合の朝ドラの難しさだろう。出典:異例の“殺伐系”朝ドラ「虎に翼」。だからこそ、伊藤沙莉の「可愛げ」に注目せよ!



・・・なんでこんなこと言われないといけないんだろう?


私は「虎に翼」を第2週まで観てから共同親権の事を知ったのですが、その時に「共同親権って『虎に翼』の無能力者みたいだな」って思ったんですよ。


共同親権に絡めてこのドラマを語るのはそんなにいけないことなのか?


「政治の話はタブー」が過度になってないか?