今年4月から「あまちゃん」が再放送されているので、毎回ではないけど観ています。
今回初めて観るのですが面白いですね。あまちゃん、好きですよ。
だから「私はアンチではない」ことを最初に断っておきます。
面白いしヒロインの天野アキも好きなんだけど、疑問に思うことや批判したいこともあるのも事実です。
批判的なことを書いているからと言ってアンチではありません。そこを理解して下さる方のみに読んでいただきたいです。
最大の疑問は、東京で暮らしていたときには「地味で暗くて協調性も華も向上心もない子」で、高校でいじめっぽいこと(小馬鹿にされたり、無視されたり)をされていたアキが、なぜ春子の故郷・岩手県北三陸市(北三陸市は架空の土地)に移住しただけで人気者になれるのか?ということ。
アキがご当地アイドル活動を始める前から、海女のおばちゃん達や駅長の大吉さんらに可愛がられていました。
大吉さんは春子に片想いしているから春子の娘だということで可愛がっていたのかもしれません。
夏は初めて会う孫だから可愛がり、海女さんたちも海女クラブ会長の孫だから可愛がっていたのか?
それとも単純に、おばちゃん達から見れば少女はみんな可愛かったからなのか?
まあ、女子高生が大人たちに可愛がられるというのはまだ分かる。
しかし東京で友達のいなかったアキが、地元民のユイとすぐ仲良くなってやがて一緒にご当地アイドルを始めるのは少々出来すぎではないか?
ユイは東京に憧れが強いから、アキ自体ではなく「東京出身者」とお近づきになりたくて友達になったんだろうけど、やがて親友になり一緒にご当地アイドルになって、東京のアイドルグループに一緒に入ろうとするまでになる。
(ユイは家庭の事情で叶わなかったけど)
ご当地アイドル以降のくだりは出来過ぎ、ご都合主義的な展開ではないかと思う。
だってアキは上京してCDデビュー前のアイドルグループのオリジナルメンバーになりましたが、最初こそ苦戦したけどやがてメンバーに慕われマネージャーの水口に守られるような存在になるんですよ。
アキが上京するとき、母親の春子から「地味で暗くて向上心も協調性も華もない娘なのは変わらないけど、周りのみんながアキを好きになってくれた。これってすごいことだよ」と言われた。
これ聞いたとき「んなことあるか?!」って思いましたよ。
そもそも北三陸に移住してからのアキは明るい子だったから、というのもありましたが。
『自分は変わってないのに環境を変えただけで周りの人たちが自分を好きになってくれる』なんて、そんな都合の良い話あるか?!
って思いましたよ。
そこに来て東京のアイドルグループでも。
アキは正月に帰省したら色々あって落ち込んで水口からの留守電を無視して北三陸に居続け、東京に戻らなかったのですが
見かねた水口が北三陸に来てアキを訪ねるんですよ。
留守電では、「アキはいかにGMT(グループ名)に必要とされているか」を水口が力説し、他のメンバーもアキへのメッセージを吹き込んでいました。
悪い意味で「ドラマだな」「朝ドラだな」って思いましたよ。
これ、小中高生が観たら勘違いしますよ。
「仮に自分が同じことしても、明るく頑張っていればこんなふうにみんな心配して追いかけてくれるんだ」って。
そんなことはない。
あんなふうに心配されて慕われる子なんてほとんどいない。
高校生だと特にそう。
語れるほど朝ドラやドラマをたくさん観ている訳ではないけど、アキがこんないい扱いを受けているのはドラマの主人公だからです。
現実には、自分の居場所を作りたければ仕事で失敗しても叩かれても、それでもめげずに頭下げたりアピールしたり真面目に働いたりしないと、自分の居場所はないんですよ。
学校だってそう。
いじめは加害者が100%悪いけど、友達なんて自分からクラスメイトに声かけて話を続ける努力しないとできないんですよ。
現実にあんな扱いを受けられるのは好かれる才能の持ち主ですね。天性のアイドルと言ってもいいかな。
その他大勢の一般庶民は上に書いたような努力をしなければならない。
努力しても報われないことだって多々ある。
親や恋人や親友だけなら、落ち込んで泣いてる自分を見て励ましてくれるだろうけど
ただの同級生とか仕事関係者にはほっとかれますよ。
現実なら、アキが東京に戻ってこなかったら予告なく解雇されますよ。
だって正月休み明けても戻らない方が悪い、マネージャーからの連絡を無視する方が悪いんですから。
私が会社で同じ事しようものなら、口には出さずとも「やっぱり発達障害者は常識がない」と見下され(やってることが非常識なので言い返せません)、法律に基づいて解雇されてます。
だって会社に来ない、電話にも出ないんだから雇ってる意味ないじゃないですか。
アキがどんなにいい子でも、他のメンバーにとっては友達ではなくライバルです(仲間でもあるけど)。
どんなにいい子でもライバルが一人フェードアウトしたらラッキーなんですよね。
口に出さなくても思ってますよ。
そもそもアキ(とユイ)がアイドルグループにスカウトされるところ自体がもう、運任せ。
本気でアイドル志望で夕方のローカル番組にも出ていたユイはともかく
特に芸能界入りに向けて努力していたわけでもないアキまでスカウトされてアイドルグループに入れるところ自体がご都合主義。
現実にもスカウトされて芸能界入る人もいますが、自分から努力してアピールしていかないと芸能界にも一般企業にも入れないんですよ。
まあ大人はその辺わかってるから、分かってる人がドラマだと思って楽しむのはいいですよ。
でも、小中高生はこういう解説がないと勘違いしかねない。
思い込みかもしれないけど、朝ドラのヒロインって「なんだかんだ言っても結局周りが助けてくれるお嬢さん」が多いですよね。
ドラマの人物にひがんでも意味ないけど、だから嫉妬はしてないけど。
中高生のときに朝ドラを観たせいで(夏休み、冬休み、春休みのみですが。あと毎回ではない)、人生を勘違いしていたかもしれません。
今思い返せば『ちゅらさん』のヒロインって、かなり我が強くて大人たちそれぞれの価値観に土足で踏み込んでました。
(下宿先の独居老人が死にたい気持ちを口にしたら『死にたいなんて言わないで下さい。おばぁが「命ど宝」って言ってました』と説教していたと思います)
言ってることは正しいけど、死にたい人に命の尊さを説いたり「生きたくても生きられない人がいる」とか説教しても響きません。
私がかつて死にたい人だったのですが、本当に響かなくてウザイ説教でしかありませんでした。
嫌な言い方すれば『ウザイ』ヒロインだった、そういう一面もあったと思います。
それでも『ちゅらさん』のヒロインは下宿先でも勤務先の病院でも受け入れられて、みんなに好かれていくんですよね。
話を『あまちゃん』に戻します。
アキも例外ではなく「なんだかんだ言っても結局周りが助けてくれるお嬢さん」でした。
前述の春子のセリフもですが、「アキが天性のアイドルである」ことを説明するセリフが登場人物の口からどんどん出てきます。
水口の留守電もそうですが、ユイの兄・ヒロシも「アキちゃんのいるところは周りのみんなが笑ってて温度が温かい」と言ってました。
考えてみればヒロシはアキに片想いしている。
振られてもまだ諦め切れてない。
水口もアキに片想いしている可能性がある。
アキは結局、初恋の相手の種市先輩と付き合えた。
いや、モテすぎだろアキ?!
モテすぎなだけでなく本命と付き合えたんだからすごすぎ、出来過ぎ。
北三陸に移住前は彼氏も好きな人もいなかったのに。
やっぱりご都合主義じゃないか?!
仮に中高生の私がこれを観ていたら「田舎に移住したら、ご当地アイドルにはなれなくても友達に恵まれた学校生活を送れるんじゃないか?いじめられなくなるんじゃ?」って勘違いしていました。
いや、いじめを理由に転校や移住をするのはいいんですよ。
移住していじめられなくなった実話も知ってます。
でも、移住していじめられなくなっても友達ができるとは限らない。
キラキラした青春を送れる保証もありません。
大人は「あまちゃん」の中にあるフィクション要素や夢の要素を見抜けるからいいけど、未成年にはまだ難しい。
冷静に考えたら「あまちゃん」は夢物語が過ぎる。
「地味で暗くて向上心も協調性も華もない東京の女子高生が、田舎に移住しただけで近所の大人たちに可愛いがられ、美少女の親友もできて、ご当地アイドル&東京のアイドルグループを経て東京でタレントになって売れる話」だし(長っ)
あまちゃんが面白いのは分かるけど、本放送のときになぜこれがウケたんだろう?
「ご都合主義的」とかTwitterで批判されたり、反省会が盛り上がってもおかしくないように思える。
もしかしたら、アキが「地味で暗くて向上心も協調性も華もない子」だったのは学校でいじめにあっていたからだけでなく、春子の影響かもしれない。
春子は元スケバンで、激怒するとアキに手を上げる。
今だったら虐待で通報されててもおかしくなさそうだ。
春子は毒親なのではないかとも思う。
想像だが、春子もアキも東京では近所付き合いはなさそうだった。
北三陸では祖母もいるし、海女仲間や近所の大人たちとの関わりもあるから、「母親の恐怖支配」からそこそこ解放されたのかもしれない。
と、考えてもやっぱりご都合主義だが。
あまちゃん、面白いけど私が面白いと思うドラマが必ずヒットするとは限りません。
一体なぜ本放送のときに国民的ヒットや社会現象になったんだろう?
アイドルを目指して上京して努力したけど叶わなかった春子の人生も描いたから、アキの人生のご都合主義的な感じがやや薄まって、それでウケたのかな?