「我輩は小心者である、名前はまだ無い。」
この世に生まれ落ちた瞬間から、
沢山の敵に囲まれていた。
我輩の力では到底倒せない敵ばかりだ。
我輩の頬に触れる僅かな温もりさえ、
すぐに消えていくので味方は一人もいない。
いつまでも顔を上げない我輩に、誰かが声をかけた。
その声は我輩のことを「うつけ者」と呼んでいた。
我輩はうつけ者である、生まれて初めて貰った名前がこれだ。
顔を上げて味方の顔を見ることさえできない大うつけである。
誰の時間も止まることは無く、
ひたすら進んでいた。
下を向いたままの我輩でさえ、
実は敵の軍勢と戦うだけの力を蓄えて
確実に前へ進んでいたのだ。
「我輩はうつけ者である、その事に今気がついた。」
そして顔を上げ、目の前まで歩み進めた敵の軍勢を睨む。
「今まさに、戦う覚悟ができたところだ。」