今年のトレンドカラーはグリーン。あなたも、お店でグリーンの服や小物を目にしたかもしれません。

 

ところで、あなたはエメラルドグリーンにまつわる、こんな話を知ってますか?

 

19世期、産業革命が起こると、化学の発達で、それまでになかったたくさんの色が作られるようになりました。
女性たちのドレスや手袋、子ども服などが流行色で染められるようになったのです。

その中でも、大流行したのが緑色です。
それまでの天然染料で染められた緑色は、鮮やかな色が出ずに、褪色することも多かったようです。ですが、化学合成の緑はこれまでになく鮮やかで、しかも、安く大量に作ることができたのです。

 

 

鮮やかな緑色は、ドレスだけでなく、壁紙や、子供のおもちゃ、キャンディの包紙などに、広く使われたそうです。

 

 

しかし、この緑色は、たくさんの健康被害や死者を生み出しました。
緑の花冠をかぶったり、緑の手袋を嵌めた人は、皮膚に発疹ができました。

製造元である、緑色に染めた造花の花冠を作る工場では、労働者の少女が、全身を緑色に染めた姿で亡くなりました。

この緑色の成分には、ヒ素が含まれていたのです。

一説によると、ナポレオンの死因もヒ素ではないかとされています。彼が亡くなるまで幽閉されていた島の家の壁には、緑色が使われていました。そして、彼の頭髪サンプルからは大量のヒ素が検出されています。

 

今、私たちが手に取るものにヒ素が含まれていたら大事件ですよね。
でも、当時は、生活の中のあらゆるものに、危険な成分が含まれていました。例えば、女性がメイクに使う白粉には、水銀や白鉛が、紳士のフェルト帽の製造過程には水銀が使われていました。そして、製造に関わる労働者は深刻な職業病に悩まされていました。

それらが危険だと、みんな知っていました。でも、国が規制したりはしなかったんですよね。

貧しい庶民は仕事を選べないし、危険な成分が含まれているそれらを使うかどうかは、自己責任でした。

当時は今よりも、安全性に対する意識が低かったんですね。

 

日本では、緑色に対する悪いイメージはありません。でも、欧米では緑には、自然や癒しのポジティブなイメージのほか、毒、怪物といったネガティブなイメージがあります。それには、この緑色の歴史が関わっているのかもしれませんね。

 

ヒ素グリーンの流行は30年以上続き、やがて危険性がメディアに取り上げられ、人々に避けられるようになり、ようやく姿を消したそうです。

ちなみに、ヒ素グリーンは、自然の鉱物から取った、毒性の低いビリジアンという色に置き換えられました。ビリジアンは、今も絵具に入っています。

 

 

あなたも、カラーの勉強しませんか?