前回に引き続き
ドイツでの生活とは異なる"病気"がテーマ。
 
この記録がどなたかのお役に立ちますように。

 

1日目:発症日「聴こえない」恐怖

14時半。一時帰国中の平日の午後。洗濯ものを干した後に、縁側にて横になっていた。
 
ガバっと起き上がったら左耳にピーーーーという、普段より大きな耳鳴り。
しばらく続き、嫌だなぁと思っていたら音は遠のいていった。しかし・・・
 
「え?何これ。さっきまで耳鳴りがしていた方の左耳だけ聞こえにくい。」
 
全く聞こえないということではないけれど、明らかに耳がおかしい。
 この症状には心当たりが。それは"突発性難聴"
 
突然片耳の聴力が低下するのが特徴で、難治性とされている原因不明の病気。
48時間以内(早期治療)が肝とされ、発症後時間が経てば経つほど治りにくいとされる。
自分は48時間と記憶していたが、後ほど医師に確認すると1週間とのこと。
この病気は友人も罹ったことがあり、彼女の場合は完璧に片耳の聴力を失ったはず。恐ろしいことに「これだ!」と思った。
 
 早速調べると「まずは耳の近くで指を擦ってみよう!」とのことだったので試してみる。
これが始まりでした。
 
●耳鼻科にすぐにかかろうと思うも、この日は外出しにくい状況にあり一日様子を見ることに。
 
●耳鳴りが鳴ったり鳴らなかったり。
 
●人の声が聞き取りづらい。例えば台所で水仕事をしている時に話しかけられると、何かを言っているのはわかるのだが内容が理解できない。聞こえていない。

 

2日目:地元の耳鼻科クリニックへ

朝起きると、耳の聞こえは改善しているようにも思えた・・・けれど、それが改善なのか、この聞こえ方に慣れてしまったのかはわからない。
 
その後、家族との会話を通して、自分の耳のこもった感じと詰まったような聞こえにくさが明確となり「これはまずい」と受診を決意。
耳鼻科と義実家間はやや距離があり、夫に車で送って貰う必要があるゆえ腰が重いが、午後(発症からちょうど24時間経過)耳鼻科へ。
 
思えばこの症状の前に、ドイツで激しい左耳の痒みを覚え、ちょうど一時帰国中にドラッグストアで耳の痒みの薬を買おうと思っていたところだったので、この機会に相談。
 
耳の中のチェックをしてもらったら、右耳は綺麗なのに左は炎症になっているとのこと。外耳炎でした。
処方されたのは「ロコイド」。長女が赤ちゃんの頃によく処方されてた肌の薬だったから何だか意外!
 
医師に一連の症状を説明して、聴力の検査へ。
 
昔の公衆電話ボックスのような小さな小部屋に入り、聴力検査を受ける。
その時ふと、ボンのベートーヴェンハウスで見た大きな補聴器を思い出した。
 
当時こんな設備があったら、どんなだったのだろうと。彼の時代に今の治療が受けられたら、どうだったのだろう?
検査の結果は
 
右耳は正常だが、左耳は若干聴力が落ち込み、その中でも日常会話の聞こえに関してだけが、二度聞きが必要なほどに落ち込んでいる。
突発性難聴によくみられる症状としては珍しく、今度左耳のその他の聴力についてもこのレベルまで落ち込む可能性がある。
 
原因はわからないが、医師としては突発性難聴を疑い、投薬治療を開始することをお勧めする。
 
ただしステロイド薬を用いるため、ある程度の副反応がみられる可能性があり、それを受け入れられるのであればとのことだった。
 
投薬日数は八日間。迷わずお願いし、この日の夕食後から投薬が開始された。

 

3日目:大きな耳鳴りが始まる

聴力には変わり無し。が、この日から左耳に終始ざーーーーという耳障りなノイズが聞こえるように。

処方されたのは、アデホスコーワ、メチコバール、レパミド、そしてステロイドのプレドニン錠。

 

4日目:更なる聴力低下!

朝起きたら、左耳の生活音の聞こえがとても悪くなっていることに気がつく。
 
医師の言う通りだった。あの後ガクンと聞こえる数値が下がったんだ。すごく落ち込む。というか怖くなってきた。
投薬中でも「後日聴力が落ちたらすぐに耳鼻科を受診するように」言われていたが、不幸にもこの日は一昨日お世話になったクリニックは休み。
 
東京行きの新幹線の予約は、明後日に家族全員でとっていたが、ドイツへ戻るまで、残された時間はあと1週間と3日。
東京で継続治療するために、自分だけ実家に戻る。
 
何とか昔のかかりつけの耳鼻科(といっても、娘たちもたまにお世話になっている)の午後診療に滑り込む。
先生にこれまでの経緯を説明、投薬中の薬の書類、そして義実家近くのクリニックでもらった聴力検査の診断書(東京の耳鼻科に引き継ぎができるよう渡してくれた)を渡し、検査を行う。
 
思ったとおり、ほとんどの音が聞こえないどころか、骨導の検査では(恐らく普通の)雑音ですら、ものすごく不快な大きな騒音に聞こえる状態。
 
出てきた検査は2倍の悪化。
初めにかかった医師からは「これから聴力がガクンと下がる可能性がある」と言われていたが、その通りだった。
 
東京(実家近くの耳鼻科)の医師から、これからどうしたいか二つの選択肢を提示される。
 
一つ目は、現在飲んでいる薬(プレドニンというステロイド剤)を追加で増やし、治療を仕切り直すこと。二つ目は、点滴治療を行うこと。
 
現代医学では、この病の原因や効果的な治療法はハッキリとはわかっていないものの、一般的にステロイドの服薬が効果あるとされ、行われている。
ステロイド投薬と点滴治療、この二つに大差はないと思われるが、点滴治療の方が若干予後は良いとの話もある。
この話を後にお世話になった大病院の医師に話してみたが「そんなことは聞いたことがない」と仰っていた。難治性と言われるように、専門家でも意見や認識が異なるまだわからないことの多い病気なのだと実感。
 
また、今は突発的に聴力を失ったことで、突発性難聴として治療を開始しているものの、ゆっくり経過をみて調べてゆくうちに、他の病が潜んでいることもある。
しかしながら、治療を急いでいる(ドイツに飛ぶまでに治したい)状況からすると、悔いなく治療をすることが望ましいだろう。どちらか好きな方を選んでくれ!と言われる。
 
結果、私が選んだのは点滴治療。
その設備はこの病院にはなかったので、大病院の紹介を受ける。
 
ただし、この時点で木曜日。大病院は土日の診察はないので「もし金曜日に予約が埋まっていて診てもらえないとのことだったら、連絡をください。」とのこと。
因みに先生から直接聞いたが、突発性難聴を自覚してから病院にかからなければならない期限は48時間というわけではなく、1週間程度だそう。
 
しかし、早く治療を開始すればするほど予後が期待できる病気とのことだった。

 

ネットには色々書かれているが、私が直接先生に聞いたのは1週間。
耳鳴りがする、耳がつまる、すぐに病院へ!
 
お会計時に窓口の方が、紹介状の入った太った封筒を渡してくれたが、この時点で夕方。
 
金曜日に診てもらうためには、今日かけ合う必要があるはずだが、5時までだ!急げ!
残念ながら、海外一時帰国者のわたしには携帯電話での通話はできない。ので、直接大病院へ。
これでネットだけは自由にできたのだけど。
 
押しかけてもだめかな?と思ったけど、ちゃんと紹介状を持っていく専用の窓口があるのね。
氏名や生年月日を書いた紙と、以前にかかった時の診察カードがたぶんある旨を伝えて、紹介状の封筒を渡して待つこと数分。
 
受付の女性がもってこられたスケジュールには、金曜日は診察が埋まっているとのこと。
 
「実は来週ドイツに戻らなければならないため治療を早く進める必要があるので、それなら大丈夫です。どうもありがとうございました」と伝えると、その女性が「それなら直接耳鼻科の看護師さんに聞いてみますよ。」と。なんて親切なの?もう涙がでそう。どうもありがとう。彼女のお陰で、翌日の大病院の診察を勝ち取る。
 
その夜、いつものようにエアコンをつけて寝たのだが、ものすごい酷い爆音がする。
 
こんなのは初めて。ただ、耳が悪くなってから初めてこの部屋で寝るので、故障なのか耳のせいなのかはわからず。家族に聞いてみようかと思ったが、みな就寝しており聞けず。エアコンを消して寝る。
 
翌朝は4時に目が覚めた時に、熱中症になってはいけないとエアコンをオンにした。
その時には昨晩のような爆音はなかったのと同時に、静かに布団に横たわっていると耳鳴りも昨晩よりは和らいだように感じた。
 
しかし起床後朝の支度をすると、耳鳴りも復活。耳は相変わらず。
 

5日目:紹介いただいた大病院へ

9時半の診察予定で、最初は聴力検査。
 
今までの二つのクリニックと同じく聞こえの検査、骨導の検査の他に、今日の大病院では耳鳴りの聞こえ方の検査があった。ヘッドホンをつけて技師さんに色々なパターンの音を鳴らしてもらい、自分の耳に聞こえている耳鳴りの種類や音量に近いものを特定していく。技師さんの仰る通り、ピッタリ合うものを見つけ出すことはとても難しい。少しでも正しいものを伝えられたのだろうか。
 
検査後は問診待ち。番号が呼ばれ私の番が来た。
医師にこれまでの経緯を伝える。更にできればドイツの帰国までに治したいという特殊事情も。
 
先生曰く、ステロイドも点滴も大差がないとのこと。
 
突発性難聴は目眩を伴うことが多く、私はこの症状を恐れていたために、これから先目眩が起こることはあるのか念のために聞いてみた。
先生曰く、月曜日から今日で木曜日。可能性は低い。
またステロイド治療服用の予後としては、効果を実感するのが1週間から1ヶ月。
1ヶ月経つと、そこから急激に治るということはあまりなく、そのまま症状が残る人も何割かいるとのこと。
そして、若ければ若いほど良いのと、初期に目眩を伴っていない場合ほど治りやすいとのこと。
 
アラフォーは若くない。大丈夫だろうか。採血を行い、再び診察室の前で待つ。
 
番号が呼ばれ、七日間点滴に通い、その翌日は聴力検査と診察とのスケジュールを伝えられる。
採血には異常がなかったそうだ。
この病気は人によっては入院らしいが、どうやら通いで済んだらしい。良かった。
 
この日の夜は、またエアコンの音がうるさくて今度は家族に確認してもらう。モードは静かモード。家族曰く、普通に静からしい。
 

6日目:薬のキツさに改めて気付く

明け方4時ごろ、お腹がゴロゴロする感じがして目を覚ます。エアコンの音は静か。
 
そういえば昨日「寝る前に飲んでください」と言われた胃の薬を飲んでなかった。
二度寝して朝を迎えると、いつもよりも耳鳴りの音量が少ない気がしたが、普通に生活をすると元通りに。これはいつもと一緒。
 
ほんの少しだけ家族の話す声や周りの音が聞きやすくなった気がしたけれど、左耳の耳元で手を擦り合わせると相変わらず聴こえないので、それは気のせいだと気がつく。
今思うと、本当にこの時良くなってきていたのだと思う。
 
午前中、点滴へ。
土日は救急外来に行くのだが、カーテン越しに聴こえてくる運び込まれた患者さんと看護師さんの話がドラマのよう・・・
 
ところで点滴中、一瞬だけいつもの大音量の耳鳴りがふーっと消えた時間があった。一瞬だけ。耳鳴りとはほんの数日の付き合いだが、いつもする音がしないことに違和感と喜びと驚きと。
 
そう思ったのも束の間、すぐにノイズが戻ってくる。けれども、小さな希望を信じたい。

 

7日目:更に大きな耳鳴りと寝違え

今朝は首の激しい痛みで目が覚めた。
 
首がまわらないところからして、寝違えたらしい。
そして耳鳴りがいつもに増して酷い。
大きいザーーーーという音に気が滅入って、なかなか布団から出る気持ちになれない。
 
首の凝りは、2時間後にはほとんど気にならないくらいになくなっていた。今朝も点滴に。
 

8日目:声が二重に聞こえるように

今朝は耳鳴りはするものの、ボリュームはやや下がる。代わりに音の響き(特に自分の声が割れて聞こえない。ポワンとする)や籠りが酷い。
 
そんな午後に、次女の勉強の癇癪で耳元で大声。その時から聞こえる声が二重になってしまった。
自分の声も壊れた機械の音声みたいで気持ち悪い。
 
ステロイドも減らす時期になったので、これからはまた悪くなるのだろうかという不安が先立つ。

 

9日目:人混みが「怖い場所」に

昨日の一件から、聞こえがおかしなことに(泣)
夕方地元駅の大きな駅改札の前を通ったが、音がゴオンゴオン響き、くらくらする。
 
聴こえがこのままの可能性はあるし、ドイツへの帰国も近づいてきたから、どの場所に行くとどうなるか試す必要があると感じた。
 
カフェに入るとどうだろう・・・周りの声がするが、前に座っている夫の声はちゃんと聞こえるし、改札前を通る時とは違い快適に過ごせた。

実家滞在中2回は行ったゴンチャ。美味しい♡

 
今までは、夫には聞こえる耳の方に立ってもらって話してもらっていたが、今日は聞こえない方の耳から話しかけられても、そういえば聞こえている。
 
耳鳴りの音量も減ってきたように思うが、気のせいなのか慣れたためなのかはわからない。

これも慣れでは無く良くなっていたのだと思う。

 

11日目:ステロイド点滴投与の最終日

今日でついに点滴も最後になってしまった。
 
今まで点滴室みたいな診療室にお世話になっていたのだが、最終日は偶然にもよく私のことを担当してくれた看護師さんだったので(この部屋で働く看護師さんは何人もいる)最後にありがとうとご挨拶できて良かった。耳鳴りも減ったようには思うけど相変わらずだし、耳元のカサカサ音も聴こえない。
 
明日の検査が少し怖い。この先治るのだろうか。期待ももちろんあるけれども。

 

12日目:1週間後の診察(通院最終日)

今日は最後の診察日。
聴力検査はドキドキだった。が、不思議と右耳はもっと聴こえがよくなり、聞こえない左の音も拾えるようになってきた気がする。
 
感覚は的中。診察室に入ると先生が「前回よりもかなり聴力が改善しましたね。」と。
よし!!!めちゃくちゃ嬉しい。
まるで模試の結果がかなり伸びて、喜んでいる子供のようだ。
 
因みにわたしは明日にはドイツに戻らなくてはならない=継続治療ができない患者であるのだが、もしずっと日本に居ることができる場合は、どんな治療に進むのだろうか?担当医に質問してみた。
すると、現在飲んでいる薬(耳の血流を良くする薬)を続けて、定期的に診察に行くことになるのだそう。
薬は3週間分と、多めに処方もしてもらった。

 

13日目:羽田空港へ

昨日の検査をするまで確信が持てなかったけれども、やはり耳がだんだんと良くなってきているようだ。

しかし、この快方の兆しのなかに待ち受けるのは、恐怖のロングフライト。
ヨーロッパだし12時間以上だよ。気圧の変化もあるし良いはずがない。
夜の便に乗るために空港へ。手荷物検査をして、そこから出国へ。
 
あれ?出国の手続きが済んでゲートに向かう途中で、急に耳に気圧の変化を感じる。なぜ??まだ飛行機にも乗っていないのに(泣)
良くなってきた気がするのに、また左耳に閉塞感のような気圧の変化??こんなことってあるの?
 
フライトについては別記事にしようと思います。

 

15日目:あれ?聞こえる!!!

あれっ!カサカサ音がする。
右よりは聞こえてないけど、する!
 
エアコンもないドイツの家は静かなので、耳鳴りの音を東京にいる時よりも感じる。
それでもカサカサ音がすることに驚きと、以前は普通だったこんなことに物凄く喜びを感じる。
 

日記のまとめと補足

このあと、徐々にあの大きな耳鳴りもしなくなって、気がついたら完璧に治っていました。

こうして日記を改めて振り返ると、私が突発性難聴を発症してからさまざまな治療を行った結果、完治までは2週間要したことがわかります。
 
私については、こうして運良く治すことができたけれども、しばらくは「また聴こえなくなっているのでは?」なんて気になって、度々耳元で指を擦り合わせて聞こえるかチェックしてました。
 
あとは日記には書き漏れましたが、この病気にかかると携帯電話の呼び出し音が酷い不協和音に聞こえるので、ちゃんと聴こえるか?目の前に座っている夫にお願いして電話をかけて左耳でその呼び出し音を聴いてチェックしてみたり。
 
因みにこの病気の再発はないそうなので、もう安心しても良いはずなのだけど、それをさせてしまう、不安感や恐怖心がしばらくはありました。
 
さて、この次は突発性難聴と長距離フライトについて書こうと思います。
 

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