藤の花を撮影に行くためバスに乗ると
前にいたお母さんと手をつないだ3歳くらいの女の子が
首をふにゃっと曲げて、青空と私を見上げた。
人の暗部を探るかのような澄んだ視線と目が合う。
一生懸命大人の表情を読み取ろうとする視線である。
街にはマスク星人だらけ。
素顔のホモサピエンスが珍しいのであろう。
バスの乗客は、もれなくマスクをつけて表情が見えない。
フツーに鼻と口を出しているのは私くらいだが、
その子もお母さんも表情を隠してはいない。
女性のホモサピエンスは珍しい。
人々がホモサピエンスに戻るのはいつの日か。
権力に従順であるのは一つの処世術であるが、
建前だけにしろ、自由にしろと言っている。
3年前まで
病気を患った人や医療関係者以外で顔を隠すのは、
お天道様に顔向けできない人くらいだった。
子供に顔を見せられる世界が良い。
私が珍しい人でいられるのは、あと少しだろうか。